歯科コラム 一覧

高度先進歯科医療を学ぶ

医療法人社団育進会 水口歯科クリニック ・水口インプラントセンター新宿 水口 稔之 理事長

「槌打をしない新ソケット・リフト法」 (下) 2009.5.15

“高度先進歯科医療を学ぶ”のコ-ナ-では、厚生労働省の先進医療各技術の概要に沿わせて、現場でご活躍の先生方のお役に立つ情報を各分野の先生から発信して頂きます。
第1回は、リスクヘッジとして「サイナスリフト」はしないとお考えの先生にも、ご検討いただける内容と確信しています。
水口稔之先生は、低侵襲で簡便な「オステオプッシング法」による『オステオプッシャー(新ソケットリフト)』を発明し、2007年7月の講演後より、セミナー活動を通し、臨床家にとって患者のダメージをより少なく治療する方法として、多くの先生方への普及活動に力を入れています。〔オステオプッシャー 医療機器製造販売届出番号:20B1X00007000016 特願2006-177717 〕

医療法人社団育進会 水口歯科クリニック ・水口インプラントセンター新宿 水口稔之理事長

医療法人社団 育進会 水口歯科クリニック 水口インプラントセンター新宿 水口 稔之 理事長

プロフィール

  • 歯学博士
  • 国際インプラント学会認定医
  • MACSマグネット治療認定医
  • インプラント・アプリケーション・スタディグループ主宰
  • 日本インプラント学会会員
  • 日本歯周病学会会員
  • 日本審美歯科学会会員
  • グローバル・インプラント・アカデミー認定医
  • アジア・インプラント学会認定医
  • 日本カウンセリング学会 所属
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開業に至るまで

前回はオステオトームを用いるソケット・リフト法は、ラテラル・アプローチに比べ、侵襲が少ないが、その槌打が患者の頭に響き、不快感が強いことと、上顎洞洞底骨を破る際、槌打の勢いによってシュナイダー膜を傷つけやすいという2つの欠点がある。そこで、槌打によって上顎洞洞底骨を破るのではなく、回転力を推進力に変えて押すことによって上顎洞洞底骨を押し破る方法を考案したことについて説明しました。

槌打をしない新ソケット・リフト法

今回は事前準備から症例を交えてお話ししましょう。

【事前準備】

槌打をしない新ソケット・リフト法CT撮影後、画像ソフト上にてバーチャルな術式シミュレーションを行う。
上顎洞洞底の1mm手前までガイドドリルによるドリリングを行い、さらに、同じ位置までオステオプレッシャー#0および#1にて、パイロットホールを拡大する。続いて、オステオプッシャー#2にて上顎洞洞底骨をプッシュして破るために、上顎洞洞底を0.5mm程度までオーバーさせる。
以上をコンピュータ上でシミュレートし、それを行うためのプッシャーガイドを付与したステントおよびドリルのストッパー、オステオプッシャーのストッパーを製作する。

槌打をしない新ソケット・リフト法


【臨床例】

患者は56歳の女性で、非喫煙者である。左上5番歯牙破折のため、抜歯を行う。最小限の侵襲のサイナスリフトによるインプラント治療を行った。
CT撮影用ステントには、石膏板が付いており、それにより効果的にアーチファクトを除去することができる。CT解析により、コンピュータソフト上でガイドドリルとオステオプッシャー#0~#2のシミュレーションを行い、オステオプッシャー用ステントとストッパーを作る。

槌打をしない新ソケット・リフト法

オペでは、まず、オステオプッシャー用ステントを頬側的にネジで強く締め付け、隣在歯に固定する。ステントは、ドリルの径に合わせたドリルガイドを取り付ける。

槌打をしない新ソケット・リフト法

その後、ストッパーを付けたドリルにて、上顎洞洞底を1mm手前まで切削する。

槌打をしない新ソケット・リフト法

その後、ドリルガイドをはずし、ストッパーを付与したオステオプッシャー#0と#1にてホールを拡げる。この時、ボーンコンデンスも同時に行われる。

槌打をしない新ソケット・リフト法

さらに、 #2にて、上顎洞洞底を0.5mmオーバーするところまで推し進め、上顎洞洞底骨を押し破る。

槌打をしない新ソケット・リフト法

その後、ボールエンド・デプスゲージにてシュナイダー膜を触知する。

槌打をしない新ソケット・リフト法

さらに、骨補填材をオステオプッシャー#2にて数回押し込み、シュナイダー膜を挙上し、その後、ステントを外す。

槌打をしない新ソケット・リフト法

オステオプッシャー#3と#4にてホールを拡大し、HAコーティング・インプラントを埋入する。

槌打をしない新ソケット・リフト法

3ヶ月後、上部構造をセットする。
槌打をしない新ソケット・リフト法


【結論】

槌打をしない新ソケット・リフト法

サイナスをリフトする方法は、表の様に、今までエンジンによる切削か、オステオトームとマレットによる槌打であった。それに対して、本法は、骨をプッシュするという新しい概念を持つ。これによってシュナイダー膜の損傷の危険性を低くし、且つ、手術の不快感を軽減できる。今まで、マレットの槌打によってバーティカルアプローチでのサイナスリフトを行っていた。術者はラチェットによる回転でサイナスリフトをすることに新鮮な感覚を覚えるはずである。

今回、隣在歯をベースにオステオプッシャーの推進力を得る方法を紹介したが、隣在歯を使わず対合歯でステントを安定させる方法もあり、遊離端症例やFD症例などにも適応可能である。対合歯で噛ませるタイプのステントは、事前の準備が不用で、且つ、適応症も広いが、対合歯があることが条件となる。

槌打をしない新ソケット・リフト法

CTを応用した歯牙固定型ステントは、事前の準備が必要であるもの、ステントによって埋入方向が正確に決められ、ドリルおよびオステオプッシャーにストッパーを付与することによって、オペは、非常に且つスピーディである。
オステオプッシング法は、その先端形状により、どの方法よりもシュナイダー膜に対して安全にサイナスをリフトできる方法である。


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■ネオボーン顆粒品(動画)
(1-0.5mm.DK03-001)

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PRPとの相性は非常に良く、GBRやサイナスリフトをネオボーンとPRPのみで行っているが、すべて良好な臨床結果を得ている。
自家骨採取の必要性は、ブロック骨の移植時以外は全く必要がなくなり、患者のみならず、術者の負担も軽減し、手術時間の短縮に大きく貢献している。
ネオボーンを補填した部位は、補填直後においてはその気孔率の高さからX線透過性を示す。しかし4~6週後あたりからX線透過性は徐々に低下して8週後には周囲骨とほぼ同様のX線透過性を示してくる。
これはまさにネオボーン顆粒の周囲だけでなく、顆粒内部にまで新生骨の形成を推進していると考えられる。
補填時よりX線不透過像を示す従来の高密度焼結体HAとは異なり、ネオボーンは空洞球を呈した気孔体の内外に線維性骨あるいは仮骨の形成を早期に達成しているのであろう。 
骨の欠損部にただスペースを埋めるために補填するという事ではなく、骨が早期に再生するための効率の良い足場(Scaffold)を提供しているという実感を得ている。
長期症例の経過をみると、経時的にX線透過性がほぼ同等となり、その後は周囲とほぼ同じX線透過像を示すことから、骨のリモデリングを阻害していないどころか、リモデリングのメカニズムに順応しているのではないかとも思われる。
歯科領域で使用する骨補填材は、整形外科領域などとは異なり、炎症部位や病変除去部に使用されることも多い。それだけに骨再生の基本的な条件を無視して安易に使用すると、良好な結果が得られないケースも増える可能性がある。そのような結果が、材料自体の信頼性に波及しないように、慎重で適切な使用が望まれる。
国内初の有用性の高い骨補填材の登場は朗報であり、今後はより安全で低侵襲の骨造成術を模索していきたい。

歯科口腔外科領域:要求事項

■歯科口腔外科領域における骨関連手術での特徴

口腔内は多種多様の細菌に曝されているため、常に感染の危険性が伴う
粘膜からの排出、補填材料が周囲骨と一体化せず剥離、脱落が懸念される
・通常の食生活において20~30kgの咀嚼圧、咬合圧が負荷される

■歯科口腔外科領域での人工骨補填材への要求事項

安全性に優れていること
骨補填材内部での骨形成が進み、周辺骨と一体化すること
・通常の食生活における咀嚼圧、咬合圧に耐えること

連通気孔を有するネオボーンは、生体組織がネオボーンの多孔体内部に速やかに侵入し、かつ多孔体内部で骨再生が進行し、周囲骨と一体化するため、粘膜からの排出や周囲骨からの剥離、脱落、感染の危険性が無く、歯科領域での有用性も極めて高い。