高度先進歯科医療を学ぶ

堤デンタルクリニック 堤 一純 院長

特別寄稿 「驚異の骨補填剤ネオボーン」

“高度先進歯科医療を学ぶ”のコ-ナ-では、厚生労働省の先進医療各技術の概要に沿わせて、現場でご活躍の先生方のお役に立つ情報を各分野の先生から発信して頂きます。
今回は、e-dentistリニューアル特別企画といたしまして、2010年1月、歯科医療用材料として厚生労働省から認可を受けた「ネオボーン」について、堤 一純先生にご寄稿をいただきました。

堤デンタルクリニック 堤 一純 院長

堤デンタルクリニック 堤 一純 院長

プロフィール

  • 1976年 大阪歯科大学歯学部卒業
  • 1977年 堤デンタルクリニック開設
  • 1995年 ヘブライ大学歯科医学部日本イスラエル科学技術、全国研究所医科学研究科修了 理学博士
  • 1996年~1997年 厚生省国立公衆衛生院 院外講師
  • 2001年~ 公設国際貢献大学校教授(国際保健医療学部)
  • 日本補綴歯科学会
  • 日本口腔インプラント学会
  • 日本歯科審美学会
  • 日本歯科東洋医学会
  • 日本歯科東洋医学会
  • 日本歯科医学会

  • インディアナ大学歯周学インプラント課 客員講師
  • 米国財団法人 野口医学研究所 歯科部会 インプラントプラクティス会 会長
  • 理学博士
  • 公設国際貢献大学教授
  • ICOI Japan 副会長
  • アルタテック社 インプラント公認インストラクター
  • ITIインプラント講師 歴任

  • 著書
  • 歯は蘇る(日経BP企画)
  • 成功のインプラント学(ゼニス出版)
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はじめに

インプラントに携わる歯科医師にとって、骨補填材の問題は避けては通れない。
欧州ではBio-Oss、米国では脱灰乾燥凍結骨等がよく使用されているが、本邦では薬事承認が得られていない。入手は個人輸入になり、数量も限られ、納期も価格も不安定である。

国内では牛骨由来のハイドロキシアパタイトのボーンジェクトやアパセラムAXが入手できるが、臨床家の評価はBio-Ossなどに比べて高くはない。βーTCPのオスフェリオンに関しては歯科の薬事承認は無くまた、吸収速度が速すぎて、十分な骨量が得られない。

筆者はBio-Ossを長年、インプラントに使用し、良好な結果を得てきたが、それ以上に素晴らしい骨補填材が入手可能になったので紹介したい。

ネオボーンは化学合成されたハイドロキシアパタイトである。
従来のHAの多くは高密度焼結体で内部空隙もほとんど存在しないことから、骨に置換することは無かった。臨床家にとって、化学合成されたHAの印象はすこぶる悪かった。

ところがネオボーンは独自の多孔体構造により人工骨内深にいたるまで生体組織の迅速な侵入を可能にし、良好な骨伝導能は優れた内部骨形成能を実現している。従来のHA骨補填材とは、臨床上、全く違った様態をしめす。

ネオボーンの特徴と特性

ネオボーンは骨組織の主成分であるハイドロキシアパタイトの単一成分で構成された骨補填材で整形外科領域に登場した2003年9月以降、その臨床現場で良好な成績をおさめている。HA自体の生体親和性や骨伝導能については周知のとおりなので割愛するが、従来のHA補填材と大きく異なる部分は、三次元連通気孔構造という形状にある。独自の成形技術である(起泡ゲル化技術)を応用することで、直径150μmの多数の気孔が連なり、さらに連なった気孔同士が平均直径40μmの気孔間連通部によって交通した多孔体構造を有している。

この多孔体構造によって、骨内への移植後はネオボーンの内部にまで組織細胞が侵入して新生骨の形成を促進する内部骨形成を実現している。
つまり、補填材の内外で骨伝導能を発揮することで、極めて強力な骨再生のメカニズムが働くと考えられる。
また、72%~78%という気孔率を持ちながらも、圧縮強さは12~18MPa(代表値)と海綿骨の数倍程度の適度な強度を有しており、取り扱いも容易である。
歯科用としては、1~2mmの球状タイプと0.5~1mmの顆粒タイプが発売されている。

■気孔構造の比較-多孔体部構造-

気孔構造の比較-多孔体部構造-

■気孔構造の比較-骨格部構造-

気孔構造の比較-骨格部構造-

■気孔構造の比較-連通部径-

気孔構造の比較-連通部径-

■気孔構造の比較-気孔体積-

気孔構造の比較-気孔体積-

ネオボーンは従来の骨補填材とは大きく異なる。
ネオボーンの三次元連通気孔が毛細管現象を引き起こし、多血漿板血漿PRPが素早く浸透していくのを見ると驚きすら覚えるほどである。

■ネオボーン球形タイプ顆粒品(動画)
(2-1mm.DK12-001)

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■ネオボーン顆粒品(動画)
(1-0.5mm.DK03-001)

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PRPとの相性は非常に良く、GBRやサイナスリフトをネオボーンとPRPのみで行っているが、すべて良好な臨床結果を得ている。
自家骨採取の必要性は、ブロック骨の移植時以外は全く必要がなくなり、患者のみならず、術者の負担も軽減し、手術時間の短縮に大きく貢献している。
ネオボーンを補填した部位は、補填直後においてはその気孔率の高さからX線透過性を示す。しかし4~6週後あたりからX線透過性は徐々に低下して8週後には周囲骨とほぼ同様のX線透過性を示してくる。
これはまさにネオボーン顆粒の周囲だけでなく、顆粒内部にまで新生骨の形成を推進していると考えられる。
補填時よりX線不透過像を示す従来の高密度焼結体HAとは異なり、ネオボーンは空洞球を呈した気孔体の内外に線維性骨あるいは仮骨の形成を早期に達成しているのであろう。 
骨の欠損部にただスペースを埋めるために補填するという事ではなく、骨が早期に再生するための効率の良い足場(Scaffold)を提供しているという実感を得ている。
長期症例の経過をみると、経時的にX線透過性がほぼ同等となり、その後は周囲とほぼ同じX線透過像を示すことから、骨のリモデリングを阻害していないどころか、リモデリングのメカニズムに順応しているのではないかとも思われる。
歯科領域で使用する骨補填材は、整形外科領域などとは異なり、炎症部位や病変除去部に使用されることも多い。それだけに骨再生の基本的な条件を無視して安易に使用すると、良好な結果が得られないケースも増える可能性がある。そのような結果が、材料自体の信頼性に波及しないように、慎重で適切な使用が望まれる。
国内初の有用性の高い骨補填材の登場は朗報であり、今後はより安全で低侵襲の骨造成術を模索していきたい。

歯科口腔外科領域:要求事項

■歯科口腔外科領域における骨関連手術での特徴

口腔内は多種多様の細菌に曝されているため、常に感染の危険性が伴う
粘膜からの排出、補填材料が周囲骨と一体化せず剥離、脱落が懸念される
・通常の食生活において20~30kgの咀嚼圧、咬合圧が負荷される

■歯科口腔外科領域での人工骨補填材への要求事項

安全性に優れていること
骨補填材内部での骨形成が進み、周辺骨と一体化すること
・通常の食生活における咀嚼圧、咬合圧に耐えること

連通気孔を有するネオボーンは、生体組織がネオボーンの多孔体内部に速やかに侵入し、かつ多孔体内部で骨再生が進行し、周囲骨と一体化するため、粘膜からの排出や周囲骨からの剥離、脱落、感染の危険性が無く、歯科領域での有用性も極めて高い。