歯科衛生士人生6つのステージ

【第3回】ママ衛生士向けの福利厚生―ママとして、衛生士として輝きたいと考えている皆さんへ―

坪野慶明 医療法人社団 桜実会 おおど歯科クリニック 理事長

医療法人福和会 別府歯科医院 院長
別府 謙次

オフィシャルホームページ
http://www.beppu.or.jp/
  • 1966年 北九州市で生まれ
  • 1990年 福岡県立九州歯科大学卒業
    京都の医療法人奨和会に4年間勤務し、その間スウェーデンのイエテボリ大学歯周病科でペリオ研修、ミシガン大学歯科でインプラント研修、チューリッヒ大学でデンチャー研修を行う。
  • 1995年7月 福岡市東区香椎で別府歯科医院を開業
  • 1998年 医療法人福和会を設立
  • 1999年 丸の内歯科医院(往診部)
  • 2000年 行橋グリーン歯科医院
  • 2002年 二島デンタルクリニック
  • 2003年 丸の内歯科医院(外来部)
  • 2004年 和泉歯科を開院する。
  • 2007年5月 本医院を千早駅前に移転、同年別府歯科 宮前診療所を開院

仕事と家事の両立。自分自身のスキルアップ。難しい、無理だと諦めていませんか。

☆ かわいい子どもを置いて仕事をしてもいいのかな、両親や周りの目が怖い。
☆ ブランクが空くのは怖いけど、不安があるので再就職も踏み出せない。
☆ 働いても子どもが病気のときはどうしよう、急に休んだら、かえって迷惑かけるかな。
☆ 自分自身のスキルアップまで考えるのは欲張りかな。

 歯科衛生士資格は就職や再就職に有利だと言われています。しかしながら、再就職しても、仕事を続けていくためには自分の努力だけではなかなか難しいようです。
 頑張って取得した国家資格を持っていても、ブランクが空いてしまうことで、働く自信がさらになくなる方も多いそうです。

 しかし、仕事と家事の両立をしている歯科衛生士さんもいらっしゃいます。今回は「ママ衛生士が仕事を続けられる5つのポイント」をお伝えします。

その1:ママ衛生士が多い歯科医院である

お子様に理解のある歯科医院の見分け方として分かりやすいのは実際に働いている「ママ衛生士」が多い医院です。働くうえでのアドバイスをもらえたり、理解が得られやすい傾向があります。

その2:ママに合わせた福利厚生が充実

実際に働くとなると、保育所にお子様を預けることが多くなります。そこで、ママ衛生士にとっての助けとなる福利厚生は保育料補助です。補助がある歯科医院はまだ少ないのですが、半額補助や提携保育園などがあるか、確認してみましょう。

その3:勤務時間に無理がない

お子様を預ける時間、迎えにいく時間を考えると朝9時から夕方6時の間に働けるところがベストです。しかし、夕方からは患者さんが増える時間です。歯科医院にとっては一番、必要な時間帯に歯科衛生士が帰るとなると、勤務が難しくなる場合がほとんどです。
そこで、注目されているのが「訪問診療」です。訪問診療はほとんど午後に行われていますので、働きたい時間帯と合わせやすいです。ただし、お仕事探しの際は仕事の内容が合っているかどうか、確認しましょう。

その4:ブランク対策

復職前後のギャップに悩むママ衛生士は多いそうです。しかし、医療現場でその悩みが出てしまうと、患者さんに迷惑がかかるかもしれません。
ブランクがあると、技術面での不安がつきものですから、自分がどのくらいできて、何を習得すべきか、分かりやすい目安が必要になります。歯科医院によっては、段階的なカリキュラム制度を設けて、歯科衛生士のスキルアップを促しているところもあります。

その5:働き方の相談がしやすい

子どもの手が離れれば「もう少し働く時間を増やそうかな」と思うことがあるかもしれません。そういったときにフレキシブルに勤務体系を考えてもらえることも重要です。

ママ衛生士からメッセージ

3歳のお子様がいらっしゃる福和会 別府歯科医院の歯科衛生士、戸髙美紀さんにお伺いしました。

 出産して1年後に復帰しました。時間の短い勤務体系で、準社員という形です。福和会は出産と育児休暇を経て戻る先輩が多く、私もその一人です。子どもが1歳の頃は、保育所から月3回は呼び出しがありました。そのたびに「皆さんに申し訳ないな」という思いもありましたが、皆さんから「子どもが小さいんだからそういうもんよ。大丈夫」と寛大に接していただきました。こういった環境があったから、今でも仕事ができているんだと感謝しています。
 今は仕事と家庭の両立に頑張っています。訪問診療をしていますので、余裕ができたら、ケアマネジャー資格を取得したいです。子育ての先輩たちが多くいる環境なので、「高校どうしよう」などの相談など、何でも聞けますから、精神的に前向きになりますね。
 出産、子育て中の皆さん、一人で抱え込まないでください。なかなか復職に踏み切れない衛生士さんは不安もあるのでしょうが、悩むよりも相談したり、行動したりした方がいいですよ。「とにかくやってみよう」と言いたいです。

総院長から最後に

皆の意見を取り入れながら、安心して働ける環境づくりをしてきました。保育園の半額補助や時短勤務の準社員制度(8割勤務)などの福利厚生だけでなく、ママさん衛生士が働きやすいチームワークづくりを続けています。ママさん衛生士さんは主に訪問歯科で活躍してもらっていますが、事務作業をする衛生士が医院にいることで、もし急な休みがあったとしてもカバーできるように人員体制をとっています。患者様にとっても迷惑が掛からないようにしているので、その分、働く衛生士さんも別の衛生士さんのカバーを積極的にしてくれて、非常にいいチームワークが出来ていると思います。
現在では出産された衛生士さんが6人帰って来てくれて、現在も3人育児休暇中です。まずは「出産があるから辞める」という流れが「出産したら休んで復帰する」という流れにできたことが衛生士の定着率に繋がっており、患者様の満足度にもつながっていると思います。
復職したときのギャップも大きいと思いますが、当院ではチーフDHが衛生士のスキルによってカリキュラムを段階的に教育する「リトルハイジプログラム」を独自に作っています。一度、自分のできること・できないことを整理して、目標設定して行動計画することによって、なにをやりたいか・やるべきかの確認ができます。スイスに研修に行く衛生士もいるんですよ。
ただ、働く環境や福利厚生が充実していても最後は本人のやる気次第です。「衛生士」というお仕事をライスワーク(食べるための仕事)にせず、自分らしいライフワーク(一生の仕事、生きがい)にもして欲しい。いくら時間が迫っていても、患者さんほったらかして「帰ります」は困ります。医療人として プロとして頑張ってほしい。きっとお子様にも頑張っているお母さんが輝いて見えると思いますよ。