歯科衛生士人生6つのステージ

【第6回】チーム医療としての歯科衛生士の役割―患者様からもクリニックからも必要とされ愛される衛生士さんに―

医療法人社団 日坂会 元町中華街歯科クリニック 院長
伊勢海 信宏 (Nobuhiro Isenoumi)

オフィシャルホームページ
http://www.mcdc.jp/
  • 1976年 神奈川県 生まれ
  • 2002年 日本大学 卒業
  • 2002年 東京医科歯科大学歯学部附属病院 勤務
  • 2003年 日坂歯科クリニック 勤務と兼務
  • 2005年 東京汐留歯科クリニック 院長就任
  • 2007年 元町中華街歯科クリニック 院長就任
  • 【学会 他】
  • 国際インプラント学会AIAI認定医
  • アストラテックインプラント認定医
  • POIインプラント認定医
  • 歯科臨床研修指導医
  • 日本人の歯の寿命をのばす会 会長
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元町中華街歯科クリニック

高齢化社会の医療の柱は病院から在宅へ。

歯科衛生士さんの一番の役割に歯周病治療や予防の取り組みがあげられます。
 また、ここで私が思うに、歯周病治療に関しては担当の歯科医師と同じぐらい、もしくはそれ以上のレベルで治療に対する知識や技術を持ってほしいと思います。
 歯科医師が歯科衛生士に歯周病治療を丸投げすると言う事ではないですが、患者様からすると実際に治療をしてくれている歯科衛生士さんが頼れる存在でいてほしいと思っているはずです。

歯科医師だけの計画のもとで、ただ治療を行うのでは患者様からの信頼も上がらないですし、何よりも歯科衛生士さん自身が仕事のやりがいを感じにくくなると思います。
 自ら患者様の現状をしっかり把握して、計画を立ててそれを歯科医師と一緒にコンセンサスをとって治療していく事が大切だと思います。

患者様は、自らの体を歯科衛生士さんに託してるので、ぜひそれにこたえられるように患者様ごとのお口の問題が何なのかと考えて仕事に取り組んでいくと良いのではないかと思います。その気持ちを患者様が感じる事で、患者様からの感謝の言葉が頂けるのではないかなと思います。

私たち日坂会のクリニックでは、患者様から「ぜひ次も〇〇さんにお願いします」と言っていただける歯科衛生士がたくさんいます。歯科衛生士も担当制にすることで、受け持ちの患者様の口腔内が良くなっていることを実感できますし、何よりも患者様にとっては、なくてはならないオンリーワンの存在になっていただけることでしょう。

患者様の気持ちのケア

歯科衛生士さんの役割で大切な事に、患者様の気持ちのケアがあります。
 患者様の中には、歯科に対する恐怖感や不安感を強く持っている方もいらっしゃいます。
 もちろん、歯科医師が出来る限り、その恐怖感や不安感を和らげる必要があるかと思います。ただ、歯科医師には、気軽に思っている事を言えなかったりすることもあります。

そんな時に、患者様の気持ちを和らげる事が出来るのが歯科衛生士さんです。先生には言えなかった事でも、歯科衛生士さんには言えたりもします。
そんな患者様の恐怖感や不安感などを敏感に察知して引き出してあげられるようになることで患者様のクリニックに対する満足度や信頼性が上がると思います。
なにより、そういった事を解消してあげることで歯科治療がスムーズにいくはずです。
ぜひ、患者様の気持ちにも目を向けてスキルアップして欲しいと思います。

歯科衛生士にとって、治療技術の向上と同じぐらい大切なのがコミュニケーション能力の向上です。とは言っても、私たち日坂会の歯科衛生士がみんな、最初から患者様と十分にお話ができていたわけではありません。
新卒やまだまだ経験が浅い段階で入職した人もたくさんいます。そういったキャリアの浅い方には、歯科医師や先輩衛生士から、患者様の気持ちを理解する方法や、お話の仕方といったコミュニケーション面もしっかりと育成しています。

院内の人間関係の円滑化

最後の役割は、対患者様ではなくクリニック内の人間関係の円滑化です。
多くの歯科医院が院長1人、歯科衛生士1人、助手・受付数名、という感じだと思います。

 その際に、院長の思っている事を一番分かってあげられるのが、同じ歯科医療の勉強をしてきた歯科衛生士さんだと思います。
 スタッフにとっては手間がかかり大変な事でも、歯科医療的にはしっかりやらないといけない事も多々あります。
 それら様々な部分で、院長とスタッフとの間に溝ができる時があったりましす。
 その時に歯科衛生士さんが、院長のやりたい事や思っている事を代弁してあげてサポートしてあげられると院内全体の方向性がしっかりしてきますし、何よりもスムーズな治療が出来ると思います。

 歯科衛生士さんの役割は、ただ単にスケーリングやSRPをすることに留まりません。クリニック内の人間関係を円滑にし、うまくクリニックが運営できるようにすることは、本当に患者様にも院内全体にとっても価値があることですし、歯科衛生士さんは影響力の高い立場だと思います。

 そのためには、院内に信頼関係の輪ができて、気持ち良く働ける職場環境が不可欠です。
 患者様にとって良いクリニックには、必ずそこで働く人同士の良い関係があります。

 日坂会のクリニックでは、どこも歯科医師と歯科衛生士などのスタッフがとても仲良く、旅行やいろいろなイベントを催したりしていますが、職場なので単なる友達ではありません。ともにお互いを尊重して、成長を喜び合う仲間としての関係をつくっています。

 皆さんもぜひ、患者様からもクリニックからも必要とされ愛される歯科衛生士さんになってほしいと思います。