やさしい心理学から学ぶコミュニケーション術

チーム医療!患者さんが信頼を寄せるクリニックづくり ~やさしい心理学から学ぶコミュニケーション術~【第10回】 こんな時どうする?!患者さんの対応を考えよう!――患者さんの世界を理解しよう!こちらの話を聞こうとしない患者さん

坪野慶明 医療法人社団 桜実会 おおど歯科クリニック 理事長

水木さとみ (Mizuki Satomi)

オフィシャルホームページ
http://www.mizuki-satomi.jp/
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患者さんとコミュケーションをしていくなかで、次のような患者さんに遭遇したことはありませんか?

  • ・こちらの話が終わってないにもかかわらず、勝手に話をし始めてしまう患者さん
  • ・一生懸命説明をしているにもかかわらず、もう飽きたとばかりため息をつく患者さん
  • ・一向に目を合わせようとせず、それどころか“聞いてないよ”オ―ラを発する患者さん
  • ・「うんうん・・・」と軽返事をするものの、こちらの話に耳を傾けてくれない患者さん
  • ・最後まで話し終えてないのに「・・・ということでしょ?!」と結論を急ぐ患者さん

こんな時、あなたならどのような対応をしますか? 今回は“話を聞こうとしない患者さん”に焦点を当てて、その効果的な対応をご紹介しましょう。

患者さんの行動の特徴から分析すると・・・
こうした患者さんの多くは「待つのが苦手」であり、「結論を急ぎたい」といった欲求をもっています。ですので、こちらが話している途中でも、話を割って入ってきたり、最後まで話し終えていないにもかかわらず、結論を急ぐのも、そうした理由からです。

また、周囲の体裁を気にせず、大胆な行動をとります。 苛立ちを「聞く耳持たず」という態度で示したり、ため息で表現することがあります。

こうした患者さんの嫌う対応は「回りくどい言い回し」です。 こちらとしては、患者さんのためにと丁寧に説明しようするのですが、患者さんにとっては長々と話をされている感覚になり、「だから・・・こういうことでしょ」と話を中断されることも少なくありません。 そうだからといって、「気難しい患者さん」「クレーマーの患者さん」と決めつけてしまうのは危険です。

言うならば、自らの気持ちや思いを包み隠さず、率直に表現してくれる患者さんでもあります。白黒はっきりとものを言うことができるので、ストレートで分かり易い患者さんとも言えるでしょう。

では、イメージを深めるために、患者さんの特徴をつかんだ事例をご紹介し、次に、効果的な対応を紹介しましょう。

◇事例:受付編

只今、待合室が混み合っています。
患者さんの治療が長引き、その上、急患が入ったこともあって、既に予約時間が30分ほど延びてしまっています。そんな中、待合室で待っている患者さん(50歳代・男性)が受付スタッフに話しかけにいきました。下記は、患者さんと受付スタッフとの会話です。
患者さん:(苛立った口調で)どうなってんの?!もう30分も待ってるよ!!
受 付 :申し訳ございません。本日は難しい外科的治療も入り、加えて、緊急の患者さんも来院されたものですから、少しお時間が(話の途中で・・・)
患者さん:そんなことはいいから! あとどのくらい待てばいいの?!
受 付 :ええっと・・・そうですね・・・あのぅ、すみません(PCで予約状況を確認する)
患者さん:(強い口調で)もういいいいから!診療室に行って、直接聞いてきて!!!
【解説】
いかがでしょうか? このような光景は珍しいことではありません。
受付スタッフは、予約時間を過ぎてしまった理由を説明しようとしたところ、患者さんの苛立ちが増強してしまいました。
通常なら、こうした受付対応は間違ってはいません。しかし、この患者さんにとっては「結論を急ぎたい」という欲求をもつため、受付スタッフの説明が回りくどく感じられ、「もういいから!診療室に行って、直接聞いて!」となってしまったのです。

これを踏まえて、次に効果的な対応をご紹介しましょう。
患者さん:(苛立った口調で)どうなってんの?!もう30分も待ってるよ!!
受 付 :申し訳ございません、あと5分お待ち頂けると診療室にご案内できるのですが、いかがでしょうか?
患者さん:5分か、なるべく早くしてよ!
受 付 :かしこまりました。直ぐにお入れできるよう準備して参ります。
【解説】
いかがでしたか?
「待つことが苦手」「結論を急ぎたい」患者さんにとっては、“今”を迅速に解決したいのです。
ですので、どのくらい待つのか(結果)を伝えることが先決です。
受付スタッフは「あと5分」と回答しました。さらに、直ぐに診療室に入れるように配慮することは、さらに時間の短縮となり、患者さんの気分はスッキリします。

患者さんのパーソナリティーに応じた適切な対応をご紹介しました。
このような患者さんが来院されましたら、是非、実践してみて下さい。
きっと、患者さんは信頼を寄せてくれるようになるでしょう。