歯科経営者に聴く - しばた歯科医院 柴田琢磨院長

歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

しばた歯科医院 柴田琢磨 院長

歯科医院のフランチャイズビジネスや、株式会社による歯科医院経営参入が注目される中、ある経営コンサルタントは「これからの歯科医院は2割が勝ち組、4割が負け組、4割がどちらつかずになる」と述べているが、今月ご紹介するしばた歯科医院の柴田院長は、その「勝ち組」となる条件は<心>であると言い切る。
患者さんの希望やクレームを謙虚な気持ちで聞くことのできるのも心、スタッフのミスを許すことができるのも心であるというわけだ。
京阪本線の三条駅から京阪バスに乗って約15分、北花山バス停で下車する。すぐに大きく「歯」とだけ書いてある看板が目に入った。

しばた歯科医院 柴田琢磨 院長

しばた歯科医院 柴田琢磨 院長

プロフィール

  • 昭和44年3月27日、京都市山科区生まれ
  • 函館ラ・サール高校、大阪歯科大学出身
  • 平成12年10月 しばた歯科医院開業
  • 平成14年4月 医療法人琢磨会しばた歯科医院(法人成)
  • <アクセス補足>
  • 京都市営地下鉄東西線 御陵駅より徒歩約15分

しばた歯科医院「高校時代、黒いものを白と言えない性格だという自己認識がありました。それで、会社員には向いていない、自分の力で思うようにやっていける仕事がしたいと思うようになったのです。それで歯科医を目指したという感じでしょうか。大学を卒業後、京都市西京区で大学の同級生のお父様が開業されている歯科医院に就職しました。在学中から早く開業したいという思いが強かったので、開業医として成功されているところで勉強させて頂きたかったのです。大学病院や大きな病院に勤めると偏った知識を得てしまうかもしれないという懸念がありましたし、私としてはほとんどの診療科目がある、規模の大きな開業医で仕事を平均的に学べる環境に惹かれるものがありました。その歯科医院は3回の改築を経験していて、改築のたびにユニットや機材の配置の仕方など洗練された形に変化していったと聞いています。この洗練された形が自分の開業にあたり、大変参考になりましたね。また、その医院は隣が学校で校庭の緑が眼に鮮やかで何とも癒される景色でした。ここは商店街の一角ですから緑は望めませんが、窓を大きくしてオープンで入りやすい空間になるように工夫しています。歯科医は怖いというイメージは建物で変えられる部分も大きいと思っています。」

勤務医を7年ほど経験され、生まれ育った京都市山科区で開業された。しばた歯科医院は「年中無休」を掲げていることで増患している面が大きいが、それは勤務医の時に日曜診療に対する患者の大きなニーズを感じていたからだそうだ。

しばた歯科医院「開業当初から日曜診療を行い、ユニットは4台でした。開業してひと月で1日の外来患者数が30人、ふた月で40人を超えるようになり、半年後に代診の先生に来ていただくようになりました。その後、常勤で3人という体制になったので、年中無休が可能になりました。日曜・祝日のほか、年末年始も診察しています。現在は2階部分にも4台のユニットを入れています。日曜日は当初予約診療にしていたのですが、飛び込みでいらっしゃる患者さんが多くて、予約をしてくださった患者さんを予約時間通りに診察することができなくなったのです。それで日曜日に関しては予約制を止めて、ご来院順に診察しています。多いときには90人を超える患者さんが来られます。日曜日の診療に対するニーズは高いといえますね。矯正歯科医には月に2回来てもらっています。また、現在、2階に特診室を作って、ユニットを1台備えました。私のコンセプトに心から理解を示してくださる患者さんは特別な存在としてその特別室で診察しますし、また今後はインプラント治療もその部屋で行う予定にしています。」

現在の歯科経営においては、自費診療の割合を高めることが「勝ち組」との認識が広まりつつあるが、柴田院長は異を唱える。

「私どもの方から自費診療をプッシュすることはまずないですね。保険でいいなら保険で、と思っています。自費診療の選択が本当に患者さんの利益になると思えば別ですが、保険、自費にかかわらず最善の選択肢を勧めるだけです。医療費3割負担開始で、患者さんが少なくなったと耳にすることもありますが、私どもでは逆に増患しています。そういう小さいことの積み重ねが理由かなあと思っています。」

この取材のため柴田院長が診察を終えられるのを待合室で待たせていただいたのだが、私どもを患者さんだと勘違いされた助手の方が「お待たせして申し訳ありません。どうぞお入りください。」と深々とお辞儀をされた。昨今、医療業界は「接遇」に関してもレベルアップをはかっているが、しばた歯科医院での行き届いたスタッフ教育を感じさせた出来事だった。

しばた歯科医院「銀行の女性社員のようなピチッとした受け答えも好感が持てますが、ここはいわゆるビジネス街ではありません。下町に住む方には、もっとフレンドリーな応対の方が喜ばれるでしょう。どこで、そういう線を引くのかというのは難しいですが、基本は患者さんの気分を害さないことだと思っています。」

「私どもでは、ひとりの患者さんを初診からずっと診察する担当制を取っています。看板こそは<しばた歯科医院>ですが、患者さんと個人的な信頼関係を築いていける方を求めています。偉そうにする先生は採用したくないですね。点数が上がる、上がらないということを求めてノルマを課す歯科医院もあるそうですが、私どもではそういうことはありません。丁寧に説明することも患者さんは望んでいます。コミュニケーション能力は必要ですが、コミュニケーションが苦手な方もご自分で苦手だと認識されているかどうかで違うと思うのです。技術が備わっていても、患者さんから好かれなかったらどうしようもないでしょう?技術の上達よりも、勉強会や講習会で教えてもらえないことが一番重要なのです。そして異分野との融合こそが独創性を生み出す源と考え、異業種との交流を深め、長所を取り入れています。発展途上の当医院に是非来院されることをお勧め致します。もちろん、将来開業医としての技術の修得及び経営面のアドバイスもできると思っております。」