歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

きらら歯科 渡部 和則 院長

きらら歯科 外観

東京都あきる野市は東京都心から50キロ圏内にあり、1995年に秋川市と西多摩郡五日市町が合併して誕生した自治体である。JR五日市線が通り、1日に数本は青梅線を介して、中央線へと乗り入れている。東京サマーランドや五日市青少年旅行村などへの来訪者も多い。
きらら歯科は2008年にJR秋川駅から徒歩5分の場所に開業した歯科医院である。渡部和則院長はコンポットレジンを使用した治療を得意とするが、予防歯科にも力を入れている。現在、1日平均280人の外来患者数があり、常勤歯科医師13人、非常勤歯科医師3人、常勤歯科衛生士13人、非常勤歯科衛生士1人、常勤歯科技工士3人、常勤歯科助手7人、非常勤歯科助手45人という体制で診療にあたっている。
今月はきらら歯科の渡部和則院長にお話を伺った。

医療法人社団 きらら歯科 院長 渡部 和則 先生

医療法人社団 きらら歯科渡部 和則 院長

プロフィール

  • 1977年 静岡県 生まれ
  • 2001年 東北大学 卒業
  • 2001年 (医)徳真会 勤務
  • 2003年 高尾駅前歯科室 勤務
  • 2008年 きらら歯科 開設
  • 【学会 他】
  • 日本補綴歯科学会所属
  • 日本歯内療法学会所属
  • 日本歯周病学会所属
  • 日本口腔インプラント学会所属
  • 日本先進インプラント医療学会所属
  • インプラント再建歯学研究会(IIRD)所属
  • Astratech Implant コース修了
  • 京セラインプラントコース修了
  • 日本一般臨床医矯正研究会所属
  • 炭酸ガスレーザー臨床セミナー修了
  • 公立阿伎留医療センター連携医
  • 東京西徳洲会病院連携医
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開業に至るまで

歯科医師を目指されたきっかけはどのようなものだったのですか。

生まれたのは静岡県で、その後新潟県で過ごしました。高校生のときに仙台市に旅行したことがあります。「杜の都」の名前の通り、適度に都会でありながら自然とも調和した街並みに惹かれ、この街に住みたいと思いましたね。進路選択の時期になり、仙台にあり、帝国大学時代からの歴史を持つ東北大学を志望したのです。地元を離れて、一人暮らしをしたいという気持ちもありましたね。はじめは理学部を目指していたのですが、ちょうどバブルが崩壊し、就職氷河期となっていましたので、資格を取れる学部にしようと歯学部にしたのです。子どもの頃から細かい作業が好きだったこともあり、歯科医師に向いているかなとも思いました。

学生時代に思い出に残っていることはありますか。

大学の同級生は性格も良く、かつ優秀な人が多かったです。特に同じ班のメンバーには色々と助けてもらい、感謝しています。学部でも多くの出会いがあり、今も先生方とのお付き合いがありますね。私どもに勤務している及川憲顕先生、市場敬基先生は後輩ですし、私どもに勤務後に多賀城駅前歯科を開業した松本重樹先生は1期上の先輩でした。
大学1、2年生のときは明善寮という大学の寮に入っていました。明善寮は「日本4大自治寮」の一つで、東大駒場寮、京大吉田寮、北大恵迪寮と並び、旧制高校からの伝統があり、学生の手によって決定や運営がなされていました。寮では先輩、後輩の上下関係が徹底しており、礼儀や上の方々との対応などを学ぶことができました。寮には様々な学部の学生がいたので、歯科以外の知識、考え方、世界観を知ることができたのは良かったですね。寮の先輩方や友人は一生の財産です。
また、学生時代は家庭教師、塾講師、コンビニエンスストア、パン工場などのアルバイトをしていました。浅くはありますが、色々な業界の中に入ってみることができたのは貴重な経験でした。

卒業後、勤務先を選ばれた理由をお聞かせください。

私が重視したのは様々な治療技術を早期に修得できるかどうかという点です。具体的には以下の3点です。それは「大学病院で1日数人の患者さんを診察するより、多くの患者さんが来院し、多くの症例をこなすことができること」、「最新の治療技術を取り入れていて、歯科医師として技術の向上ができること」、「できるかぎり患者さんの立場に立った医療を行っていること」ですね。
そして、検討の結果、医療法人徳真会に就職しました。見学時にお会いした松村博史理事長が熱く夢を語られたことに感動し、即決しました。

徳真会で学ばれたのはどういったことですか。

充実した設備、ホテルのような清潔な受付、診療所の経営体制、治療技術から患者さんへの対応までのマニュアルの整備、教育環境の充実、理事長の経営理念など、多くの面で先進的な医療法人でした。私が勤務した診療所でも1日100人以上の患者さんが来院され、豊富な症例を学ぶことができました。直属の上司は厳しい方でしたが、歯科治療技術全般をご指導いただき、今の診療の礎となっています。当時としては珍しかったのが全ての診療台に備え付けられたデジタルレントゲンシステム、液晶モニター、エルビウムヤグレーザー、炭酸ガスレーザーなどの最新装置です。大学を出たばかりの私には驚きの連続でしたね。
研修システムも整っていたので、数々の歯科治療技術の研修会に出席できました。大谷式垂直加圧オブチュレーション、石川先生の歯周病講座、村上先生や小出先生の義歯講座などです。理事長の人間的魅力に加え、徳真会グループの先進性から数多くの学びを得ました。

転職されたきっかけはどんなことでしたか。

徳真会に入職して2年目に仙台の診療所の院長をさせていただく予定だったのですが、私としては東京で学会の研修などを受け、診療技術を高めていきたいと考えたのがきっかけです。転職先の高尾駅前歯科室の濱和彦院長は大学の10期上の先輩でした。

高尾駅前歯科室はいかがでしたか。

院長先生も温厚で、雰囲気もよく、長く勤務していたいと思えるほど、充実した毎日でした。錦糸町デンタルクリニックの西尾恵太院長は大学の同級生なのですが、徳真会でも高尾駅前歯科室でも同僚で切磋琢磨してきました。現八幡山ステーション歯科の碓井大院長も同僚で、良い意味でライバルでした。今でもたまに会ったりしています。そして、オーラルデザイナー新宿デンタルクリニックの新藤靖二郎理事長も大学の同級生で、東京で旧交を温めることができました。

開業しようと決断されたいきさつはどんなことだったのでしょう。

この場所で開業していた友人が病気になり、継承を打診されたのがきっかけです。その友人とは高尾駅前歯科室で同僚でした。

ご友人はこの開業地をどのように選ばれたのでしょうか。

八王子市出身でしたので、出身地から近い場所ということで選んだのだと思います。

開業地の第一印象はいかがでしたか。

秋川駅から徒歩5分で、駅に近いことや駐車場が確保できているのは好印象でしたが、患者さんの数が少なかったのが気になりました。午前中の予約が2~3人という日も珍しくなく1日平均10人ぐらいだったのです。このままではやっていけないかもしれないという恐怖感がありましたね。

開業にあたってはどんな苦労がありましたか。

継承することを決めてから開業するまで半年ほどありましたが、その間は週に1回の非常勤勤務をして、院内の雰囲気を掴むことを心がけていました。スタッフも引き継いだのですが、スタッフの定着に苦労しましたね。しかし、開業して3年後にはそれも落ち着きました。これは副院長の浅川先生と青木先生とクリニックマネージャーの栗城仁美の存在が大きいです。

開業にあたってのお気持ちなどをお聞かせください。

居抜き開業ですから、立地を変えることはできません。診療圏調査なども行っていないので、自分の力だけでやっていかなければという強い思いがありました。一方で、私ならできるとなぜか信じていました(笑)。少し無謀だったかもしれませんが、「自信」という文字の通り、開業するうえでは自分を信じることが大切なのではないでしょうか。
開業当初は週6日で、診療時間は朝10時から夜9時までとしました。1日9時間ですから週54時間勤務となります。そのほかの業務もあるので、週80時間は仕事をしていましたね。しかし、患者さんは少なく、1日10人から15人、1時間に1、2人ぐらいでした。

2015年にユニット11台まで増設されたのですね。

ここまで来院してくださるとは予想していませんでしたが、2010年に4台、2013年に7台に増設しました。11台に増やすにあたっては隣のビルの1階を借り、第二診療室としました。増患の理由は歯科医師の自己満足ではなく、患者さんの求めていることを重視したからでしょうか。美容院の予約の際に「ご希望の担当者なら2週間後です」と言われると、担当者は誰でもいいから早く髪を切ってほしいと思うように、歯科も痛いときに早く診てもらいたいのです。そこで、私どもでは急患を断らないことをコンセプトにしています。痛い方は当日に診ること、治療自体も痛くないようにすること、そして、受付スタッフが笑顔で対応することを全スタッフで徹底しています。受付は大事ですね。歯科医師がどんなに良い治療をしても、受付スタッフの感じが悪かったら、患者さんに選ばれなくなります。

設計、レイアウトの工夫などをお聞かせください。

第二診療室は以前は喫茶店でしたので、改装にあたってはかなり予算がかかりました。第一診療室同様、バリアフリーにしたうえ、キッズルームも設けています。また、半個室を作り、ドイツのシロナ製の高級ユニットを設置しました。難しい症例はこちらで診療しています。セレックシステムやCTも導入しましたので、診療の質が向上しましたね。現在は口腔外科、歯周病、矯正歯科の認定医が揃っていますので、高い治療技術があり、ほとんどの症例を私どもで完結できるようになりました。

経営理念

経営理念をお聞かせください。

「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、地域医療への貢献を目指す」ことです。従業員が満足して働けるのなら、患者さんに親切、丁寧な対応になります。歯科医院は患者さんにとってはできれば行きたくない場所ですから、そんな歯科医院が楽しく通院できる場所になれば、結果的に重症になる前に治療を行えるのです。それは地域への医療貢献に繋がります。
物心両面の「物」は高水準の給与であり、「心」は働きやすい環境、成長できる環境です。成長できる環境であっても、低賃金では本当に従業員のことを考えているとは言えません。多くの患者さんにご来院いただき、従業員を成長させ、高水準な給与を提供するのが経営者の努めだと考えています。

診療方針

診療方針をお聞かせください。

急患の患者さんを絶対に断らないこと、痛くない治療を行うこと、説明を十分に行うことなどが挙げられます。治療を全て終えた患者さんには無記名のアンケートをお願いしています。担当の歯科医師をはじめ、歯科衛生士や歯科助手の対応などを5段階評価で伺っていますが、「大変良い」、「良い」が9割以上を占めています。
また、滅菌にも力を入れています。ミーレ製の自動洗浄機が2台、クラスBのオートクレーブが2台、一般的なオートクレーブが2台あります。それぞれ2台あるのは1台が故障した場合のバックアップのためです。手袋・マスクはもちろんデュラシールに使用する筆なども使い捨てています。

患者さんの層はいかがですか。

若い方が多いですね。子どもさん、中高生、その親御さんが中心で、高齢者は少ないです。夜10時までの診療ですので、夜間は仕事帰りのサラリーマンも増えます。男女比は4:6といったところでしょうか。

自費と保険の割合について、お聞かせください。

9割近くが保険です。私はこれでいいと思っています。ただし、保険診療であっても、3Mのリライエックスアルティメットレジンセメントやリライエックスユニセム2といったセメントや、ウェーブワニというNi-Tiファイル等自費診療に用いるレベルの歯科材料を使っています。

増患対策

どのような増患対策を行っていらっしゃいますか。

ホームページのほかは看板と電柱広告です。看板は秋川駅、イオンモール日の出、近隣の交差点の3枚で、電柱広告も近隣に5本程度です。以前は路線バスの車内放送にも出稿していましたが、今は中止しています。

スタッフ教育

スタッフ教育について、お聞かせください。

私どもには16人の歯科医師が在籍し、そのうち9人が常時、出勤していますから、分からないことがあれば、その場ですぐに聞くことができます。先輩歯科医師は皆、優しいですよ。歯科医師が少ない歯科医院では上司が忙しいと聞きたくても聞けなかったり、聞くと怒られたりするそうですが、私どもにはそれがないですね。歯科医師それぞれの経歴が多彩ですから、独りよがりにならない治療法の修得が可能です。また患者様アンケート、根充後のレントゲン、形成模型、カルテの指導等により確実に成長できます。
歯科医院が認可した研修には費用補助をするなど、院外研修支援も行っています。同時に10人前後の歯科医師が参加することが多いので、最前列の席を用意くださるといった便宜を図っていただくこともあります。

歯科衛生士、歯科助手への教育はいかがですか。

主任歯科衛生士の河村を中心に研修会を企画して、月に1、2回、行っています。最近はTionホワイトニングのセミナーとフッ素の研修会を開催しました。近くの公共ホールを借りるのですが、公共のものだと1時間300円ぐらいで借りられるので有り難いです(笑)。歯科衛生士も14人いますので、日頃の業務でも疑問点をすぐに解消することができる環境です。忙しくなったから新しいスタッフを雇用したのに、忙しいゆえに教育できないのであれば本末転倒です。私どもでは9割の歯科衛生士が常勤ですから、手が空いたときにしっかり時間をとって教育するなど、万全のサポート体制を作っています。

今後の展開

今後の展開について、お聞かせください。

分院の展開よりも今の歯科医院の拡張、スタッフの教育や充実に力を注ぎたいと考えています。現在は予約が一杯で、週に1回の来院も難しい状況です。そこでユニットを5台増設し、16台体制へ移行します。歯科医師16人、歯科衛生士14人、歯科技工士3人、歯科助手を含めると80人のスタッフがいますが、素直で勉強熱心な人ばかりですので、研修会などを通じて、レベルアップを図っています。歯科医師が増えれば、予約を取りやすくなり、患者さんの利便性が高くなります。患者さんの満足と従業員の成長を優先し、余裕が出れば分院展開を行うつもりです。

開業に向けてのアドバイス

開業に向けてのアドバイスをお願いします。

ご自身がどのような歯科医院を作りたいのかをまず決めましょう。多くの患者さんが来院する歯科医院を目指すのであれば、多くの患者さんが来院している歯科医院での勤務経験が絶対に必要です。一方で、自費診療を中心にした歯科医院を作りたいのであれば、自費診療中心の歯科医院に勤務するべきでしょう。経営においては数字の把握は避けて通れません。簿記の資格取得はしておいた方がいいですね。私も勤務医時代に取得しました。

プライベート

プライベートの時間はどんなことをして過ごしていらっしゃいますか。

贅沢や派手な遊びは全くしていないです、お酒も飲みません。iPadのkindleでの読書が趣味ですね。歯科に関する本や経営そして自己啓発など、仕事に直結する本を選んでいます。仕事の日には家事を全て妻に任せていますので、休みの日には家事を手伝うこともあります。そうすることで、妻の仕事の大変さと毎日の生活への感謝の気持ちを忘れないでいられますね。

スタッフから一言

栗城仁美 事務長兼クリニックマネージャー

院長より:歯科医師以外の面接、採用から医院全体のマネージャー業務を行っております。これだけの医院を1人でまとめることはできないので、栗城と一緒に管理をしてもらっています。

きらら歯科に務めて4年目になります。スタッフの面接も担当していますが、雰囲気や質問への受け答えの仕方を見ています。受付スタッフは研修中は専用の名札を付けます。その名札には電話応対、消毒、滅菌、案内などの6項目が書かれており、1項目をクリアするごとにシールを貼っていきます。入職後、2、3カ月はマンツーマンで指導するなど、教育体制は充実しています。お蔭様でスタッフの定着率は高いですね。きらら歯科はきれいなスタッフがいると評判ですが、院長先生が決めているのでなく、私が決めています(笑)。

佐藤希 受付主任

院長より:受付で勤務年数が長く、受付対応から歯科助手、スタッフ教育まで幅広く活躍しています。彼女が笑顔で雰囲気よく対応してから患者様の人数は圧倒的に増えました。

きらら歯科に務めて6年目になります。優しい歯科医師、歯科衛生士、歯科助手が揃っているので、スタッフの仲がいいことが特徴です。優しいスタッフばかりなので、毎日楽しく仕事をしています。診療時間は長いですが、患者さんのためになっていますね。年末年始や祝日には都心からも患者さんがいらっしゃいます。患者さんが笑顔で帰られると良かったなと思いますし、遣り甲斐の持てる職場です。

笹岡理華 受付副主任

院長より:笹岡も勤務年数が長く佐藤とともに大事な受付スタッフです。年齢は若いですが、仕事が早くどんな時でも笑顔で頑張ってくれています。

多くの患者さんに来ていただいている歯科医院です。休日が多く、希望した日に休むこともできます。歯科医院で働くのが初めてな人も一から教育してくれますので、不安なく働けますよ。子どもの患者さんも多いですね。待合室に置いているガチャガチャが人気です(笑)。歯科医師も皆、優しいですし、私たちも常に笑顔を心がけています。

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