歯科経営者に聴く - マーブルファミリー歯科クリニック 笹本祐馬 院長(前編)

歯科経営者に聴く(前編)

~第一線で活躍する理事長から学ぶ~

マーブルファミリー歯科クリニック 外観

 千葉県流山市は「都心から一番近い森のまち」と謳うように、つくばエクスプレスの開業により、都心まで20分のアクセスとなった住宅都市である。
マーブルファミリー歯科クリニックは東武アーバンパークライン運河駅から徒歩8分の商業施設の一角に2016年に開業した歯科医院で、カウンセリングを重視した歯科医療を行っている。

 今月と来月の2回にわたり、マーブルファミリー歯科クリニックの笹本祐馬院長にお話を伺った。

笹本 祐馬 院長

マーブルファミリー歯科クリニック 笹本 祐馬 院長

【プロフィール】

  • 1984年千葉県 生まれ
  • 2009年日本大学松戸歯学部卒業 優等賞、病院長賞受賞
  • 2009年医療法人東京勤労者医療会 東葛病院 勤務
  • 2009年社会福祉法人わかくさ会 かやの木保育園嘱託医 兼任
  • 2016年マーブルファミリー歯科クリニック 開院
  • 2019年日本大学大学院松戸歯学研究科 入学

【学会】

  • 日本口腔インプラント学会認定専修医
  • 日本外傷歯学会認定医・評議員
  • 日本歯内療法学会会員

開業に至るまで

歯科医師を目指されたきっかけはどのようなものだったのですか。

身近に医療関係者はいなかったのですが、私は歯科に限らず、医療全般に興味を持っていたのです。困っている人を助けたい、痛みを取り除きたいとの思いから、人助けができる歯科医師という職業に憧れを抱き、歯学部を受験しました。

学生時代に思い出に残っていることはありますか。

高校時代は「水中の格闘技」と呼ばれる水球をしていたのですが、大学生になったときに引き続き身体を鍛えたい、折角なら強い部活動がいいと考え、アメリカンフットボールを選びました。母校のアメフト部は医科歯科リーグでの全国制覇など、強豪チームなのです。アメフトはラグビーと似ているようで決定的に違うのは分業制が徹底されているスポーツだということです。私のポジションはレシーバーで、いわゆる花形的存在ですが、分業制のもとでいかに効率よくプレーするかを模索したことは今の仕事にも通じますね。身体のみならず、精神力も培われましたが、これも患者さんのために役に立っていると思います。

卒業後は東葛病院に勤務されたのですね。

私は大学時代は首席を通し、特待生にも選ばれていました。勉強にも手を抜かず、日本で一番優秀な歯科医師を目指したかったのです。そこで、勤務先として開業医ではなく、病院内の歯科を選びました。病院歯科だと、入院患者さんやがん患者さんなど、一般的な歯科医院では診られないような患者さんを診ることができます。東葛病院は学生時代から知っていた病院で、歯科医師は12人いますし、自分のしたい治療ができそうだということで選びました。

勤務医時代はどのようなことが勉強になりましたか。

歯科医学は健康な人を対象にした学問だと思っていましたが、高齢の患者さんの中にはうまく噛み合わせを取ることができない方もいらっしゃいます。これまで勉強して得られた視野は小さかったのだと気づきました。医科の中の歯科で勤務すると、開業医での勤務では気づけなかったことを学べますので、良かったです。途中で病院の付属施設であるかやの木保育園の嘱託医を務めたことも得がたい経験になりました。大きな病院でしたので、組織のあり方も勉強になりました。

開業を決意された動機について、お聞かせください。

卒業した頃は開業するつもりはなかったのですが、勤務医を続けていくにつれて、一つの環境にずっといるよりも成長できる環境にいたい、材料や薬、治療方針を自分で決めていきたいと考えるようになりました。もちろん、勤務先でも私がしたい治療をさせていただいていましたし、先輩に相談することで間違いもなくなるのですが、スピード感には乏しくなります。そこで開業に踏み切りました。勤務先でも多くの患者さんに頼っていただいていましたので、頼っていただける以上は大勢の患者さんを診ましょうという気持ちでしたね。私は歯科医師免許は国からの借り物だと思っています。したがって、国への恩返しのためには多くの患者さんを診て、貢献しないといけません。愛される歯科医院を作ろうと決意しました。

立地をどのようにして決められたのですか。

地元である流山市や隣の柏市あたりで開業したいと思い、探していたところ、この施設を紹介されました。最初に見学した物件で、一目惚れでしたので、ほかの物件は見学にも行っていません。商業施設の一角で、スーパー、100円ショップ、ドラッグストアなどの店舗があり、広大な駐車場があります。周囲に競合もありますが、周囲の先生方とは得意なことが被りませんでしたので、競合に関してはあまり気にしませんでした。

開業にあたってはどんな苦労がありましたか。

資金計画や従業員の給与設定、労働基準法などは大学で習うわけではないので、苦労しました。お金のかけ方にも戸惑いました。サラリーマンの場合は給料の中から必要なものを買いますが、経営者は先にお金を出して、それを回収していきます。広告にしても反応が分からないものに投資しなくてはいけません。そうした経営者の感覚になかなか慣れませんでした。

開業にあたってのコンセプトなどをお聞かせください。

私は勤務医時代も母校に通い、インプラントを中心とした高度歯科医療を勉強してきましたし、副院長も大学病院の講師を務めていましたので、大学病院レベルの歯科医療を生まれ育った地域に提供していきたいということですね。

設計、レイアウトの工夫などをお聞かせください。

外はポップでカラフルに、中は高級感のあるものをというのがこだわりです。外の色使いとしてはオレンジか黄色で迷ったのですが、色彩心理学で進出色と分類されているオレンジに決めました。そして、全年齢層の人たちの顔を並べていくことにしました。人の目は人の顔に惹き込まれるものだからです。一方で、中に入ると床が石目調で、緊張感が出ます。木目調の床にしている歯科医院は多いですが、私どもでは石目調にして、高級感を演出して、メリハリをつけています。設計についてはカウンセリングルームを作りました。初診時になぜ私どもに来院されたのか、以前の歯科医院になぜ通えなくなったのかなどをお聞きしたり、治療計画をお伝えするための部屋です。以前の歯科医院で嫌だったことを伺うと、「うちではそのようなことがないよう、気をつけますね」と話せます。チェアは開業当初は3台、今は5台です。個室もありますが、全てを個室にすると、お子さんが保護者の方と分かれて不安になってしまうので、そうしたコミュニケーションを重視するためにあえて開放的にしているユニットもあります。

気になる後編はこちら