歯科経営者に聴く - 高井戸歯科医院 北條泰院長

歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

医療法人社団 泰進会 高井戸歯科医院 北條 泰 院長

高井戸歯科医院

今月ご紹介する高井戸歯科医院は京王井の頭線高井戸駅から徒歩2分の場所に位置する。高井戸駅は乗降者数が井の頭線沿線で5番目に多く、駅に面して環状八号線が通っているので、バス路線も充実し、JR、東京メトロの荻窪駅や京王線の芦花公園駅、千歳烏山駅からのアクセスにも恵まれている。駅の周辺には閑静な住宅街が広がっている。
高井戸歯科医院の北條泰院長はインプラントを得意とし、歯科医院に併設させる形でインプラントセンターを開設している。最近は山梨県甲府市や福岡県大牟田市のイオンモール内や東京北区のマルエツの隣接地に分院を展開するなど、積極的な経営を行っている。
今月は高井戸歯科医院の北條泰院長にお話を伺った。

医療法人社団 泰進会 高井戸歯科医院 北條 泰 院長

医療法人社団 泰進会 高井戸歯科医院 北條 泰 院長

プロフィール

  • 1976年 東京都生まれ
  • 2002年 日本歯科大学 卒業
  • 2002年 東京都内の大学病院口腔外科 勤務
  • 2004年 東京都内の開業医 勤務
  • 2005年 高井戸歯科医院 開設
  • 2009年 高井戸インプラントセンター 併設
  • 2011年 甲府ファーストデンタルクリニック 開設
  • 2011年 大牟田ファーストデンタルクリニック 開設
  • 2012年 赤羽台ファースト歯科 開設

【学会 他】

  • ドイツインプラント学会認定医、指導医
  • ITIインプラント認定医
  • 南カリフォルニア大学 歯学部 客員研究員
  • インディアナ大学 歯学部 ホワイトニングフェロー
  • ICOIインプラント学会 認定医
  • ICOI国際インプラント学会 指導医、専門医
  • International Team for Implantology Member
  • バイオインテグレーション学会 評議員
  • 国際インプラント学会会員
  • 日本口腔インプラント学会会員
  • 日本口腔外科学会会員
  • 日本歯科審美学会会員
  • 日本顎咬合学会会員
  • AFD会会員
  • 厚生労働省認定 歯科医師臨床研修医指導医
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開業に至るまで

■歯科医師を目指されたきっかけをお聞かせください。

両親は医療従事者ではありませんが、兄2人が医学部に進学したことがきっかけとなり、私も医療系に進みたいと思うようになりました。上の兄とは9歳、下の兄とは5歳と、少し年が離れているからか、喧嘩をしたこともないですし、兄たちは常にかっこいい存在だったように思います。私は小さい頃から細かい仕事が好きだったこともあって、歯学部を選びました。歯学部の6年間の学費は普通の大学の29年間に相当するそうですから、両親は普通の大学に行ってほしそうでしたね(笑)。しかし、最終的には「自分で選んだのだから頑張りなさい」というスタンスで応援してくれました。

■大学時代のエピソードをお聞かせください。

高井戸歯科医院高校まではラグビーをやっていました。高校時代の監督の「継続は力なり」という教えは今も大切にしています。大学では違うことにチャレンジしてみたくて、ダイビング部に所属しました。奄美大島でライセンスを取得し、沖縄や小笠原の海に出かけていました。小笠原は東京港から船で25時間ぐらいかかりますので、行き帰りだけでも大変です。今は時間がないので、学会で海外に行ったときなどに海に行く程度ですね。でも、海はとても好きなので、開業したときから待合室に大きな水槽を設置しています。淡水魚ではなく、海水魚しか入れていないところがこだわりです(笑)。

■アルバイトは経験されましたか。

大学の近くの牛丼屋でアルバイトをしていました。接客、掃除の仕方、料理の腕など、色々なスキルが向上しましたよ。飲食店ですから、消毒などもきちんと指導され、衛生観念が身についたことは歯科医師となった今でも役に立っていますね。それから、やはり笑顔の大切さ、サービス精神を学べたことが大きかったです。スタッフの採用にあたっても第一印象を重視しています。採用後もスタッフには「患者さんは歯が痛くて、気分が沈んでおられるのだから、こちらから元気に、明るくはきはきと挨拶したり、お話をすることで、少しでも元気になっていただこう」と話すなど、接遇の意義を伝えています。

■勤務先を選ばれた理由をお聞かせください。

私は兄の影響もあり、歯科ではなく、医科の大学病院に勤務したいと考えていました。身体のことを学んだ上で、麻酔を学び、歯科治療に活かしていきたかったからです。しかし、医局員が多い大学病院では手術の順番などが回ってこないと聞き、小規模な大学を選びました。また、卒後、口腔外科いわゆる体全体の勉強だけは講習会がないこともあり、口腔外科を専攻しました。

■勤務先で学ばれたことはどんなことでしょうか。

高井戸歯科医院救命救急センターでの経験ですね。交通外傷など、幅広い疾患を診ることができました。当時の准教授の先生には本当に可愛がっていただきました。「医師や歯科医師とだけ付き合っていてはいけない」という教えも今に活きています。
そして、開業後のことを考え、開業医の歯科治療や経営方法を学ぶために、東京都内の歯科医院に移りました。院長先生は大学の先輩であることからご縁のあった歯科医院なのですが、厳しく、スパルタ教育でしたね。ぼくの性格には合っていました。そちらにお世話になった1年間は国家試験よりも勉強した毎日でした。

■開業しようと決断されたいきさつについて、お聞かせください。

開業医に移ってから1年後の開業は早い方なのですが、開業のお話をいただいたことがきっかけになりました。勤務医ですと、勉強会に参加するときに休みも取りにくいし、費用面も大変ですから、勉強会に思い切り参加するためにも開業した方がいいかなと思っていましたし、お話をいただいたタイミングで開業を決意しました。

■開業地はどのように選ばれたのですか。

高井戸歯科医院知り合いの先生が開業されていた物件だったので、診療圏調査をすることもなく、決めました。駅に近く、申し分のない素敵な物件だと思いましたね。チェアを1台増やして、5台にしましたが、内装などはそのままの形で開業しました。内装は一昨年のゴールデンウィーク休みを使って、1週間で改装しました。

■開業にあたってのコンセプトをお聞かせください。

高井戸地域の皆様の口腔ケアのため、地域密着の姿勢を持つことです。そして、「キュアからケアへ」という流れを大切に、予防をメインでやっていくことを決めていました。もちろん、大学病院、開業医と学んできたインプラントにも積極的に取り組むつもりでしたし、開業にあたっては歯周病も勉強し直し、機能的な回復も目指すような治療を心がけようと思っていました。

■医療機器についてはいかがですか。

インプラントに力を入れるために、以前の休憩室を手術室に替えました。また、拡大鏡や生体モニター、無影灯などはあと付けしましたし、細かい器材なども買い揃えました。

【経営理念】

■経営理念をお聞かせください。

医療ですから、歯科従事者としての使命感を持って経営にあたることです。経費については無駄のないように心がけています。大学時代に歯科材料の使い方に関しては厳しい指導を受けましたので、今はスタッフにも「材料費はエコで」と教えています。

【診療方針】

■診療方針をお聞かせください。

高井戸歯科医院患者さんの立場に立って診療を行うことに尽きますね。一般歯科がメインですが、インプラントの手術後のケアも大事にしています。
矯正歯科、小児歯科、訪問診療も行っています。矯正は月に3回、2人の矯正専門医が担当制で行っています。
小児歯科は近隣に子どもさんが多いことから始めましたが、お蔭様で多くの子どもさんに来院していただいています。治療をがんばった子どもさんにはコインを渡し、待合室の「ガチャガチャ」の機械で遊んでもらって、中のおもちゃをプレゼントしたり、ノートにシールを貼っていって、一杯になったらプレゼントをしたりと工夫しています。
訪問診療は私どもの所有する自動車で近隣のお宅に往診する形をとっています。歯科医師と歯科衛生士がペアを組んで、月に6件ほどのお宅に伺っています。

■カウンセリングルームはありますか。

高井戸歯科医院日頃は手術室をカウンセリングルームとして使っています。分院の方には専用のカウンセリングルームがあります。カウンセリングは歯科衛生士任せにせず、なるべく時間をかけ歯科医師が行っています。

■歯科衛生士の役割について、お聞かせください。

私どもに、予防の患者さんが多いので、フル稼働の状態です。歯科衛生士は担当制で、業務は検診やメンテナンスが中心です。ただ、検診は歯科衛生士だけではできません。しかし、歯科衛生士が診た患者さんがリコールで来院されれば、歩合制で検診手当を支給しています。これで歯科衛生士のモチベーションが上がりますし、結果的には増患に繋がっているようです。検診後には歯科衛生士が手書きのハガキを出して、その日に行ったことや今後、注意すべきことをお書きしています。
高井戸歯科医院また、スウェーデン式のPMTCの講習会などにも積極的に参加してもらっています。スウェーデンはインプラントも保険でカバーできるので、国が多くのデータを集積し、管理しています。したがってインプラント周囲炎などの文献も早く出ます。私自身も海外の学会などで学ぶ機会を得て、スタッフに伝え、患者さんに還元できるように努めています。

■甲府と大牟田の分院はいかがでしょうか。

両方、イオンモールへの出店なのですが、オファーをいただき、決断しました。甲府や大牟田に出かける楽しさは捨てがたいですし、都会とは異なる「地方」での開業の魅力もあります。どちらの分院もCTを完備し、インプラントなどの高度医療も可能です。現在は4台のチェアを設置していますが、大牟田は9台まで増設できます。ただ、大牟田は三池炭鉱の跡地にできたイオンモールですが、過疎が進んでいますので、今のところはそこまでの患者さんがいらしていません。しかし、私なりの治療をしていけば大丈夫かなと楽観的に構えています。

【増患対策】

本院は歯科医院とインプラントセンターに分けたサイトを作っています。モバイルサイトも同様です。私やスタッフのブログを載せるなど、コンテンツには気を配っています。
また、高井戸駅の駅前に地図の表示板があり、そこに広告を載せているほか、高井戸駅のホームの柱にも出稿しています。
紙媒体では折り込み広告の「リビングむさしの」、『週刊朝日』の『Q&Aでわかる「いい歯医者」2011』、杉並区の広報誌である『杉並区生活便利帳』、ぱどの『ご近所ドクター』などに出稿しています。
毎年、広告費として決まった予算を組んでいるわけではなく、その都度、対応していますが、地元の患者さんが中心ですので、口コミで来院される方が多いですね。

【スタッフ教育】

院内独自のマニュアルを作って、教育を行っています。本院は私のほかは常勤歯科医師1人、非常勤歯科医師3人、矯正の非常勤歯科医師2人、歯科衛生士3人、受付4人という体制ですが、常勤メンバーを中心に月に1回はミーティングの場を設けています。1カ月間の新患、急患、初診の患者さんについての報告、外部の勉強会に参加したスタッフからの報告に加え、クレームがあった場合には改善内容を皆で考えたりしています。高井戸歯科医院勉強会の参加報告は資料を作り、皆に配布して説明する形で進めていますが、雰囲気は和やかですよ。輪になって座って、お弁当を食べながら行っています。
また、私どもはインプラントセンターを併設し、インプラントを積極的に行っています。インプラントは手術後のメンテナンスが必要ですから、メンテナンスができる歯科衛生士を育てていかなくてはいけません。歯科衛生士はどうしても機械的な掃除をしてしまいがちになるので、生物学的な知識を教えています。知り合いの患者さんに対して、まず私が臨床的にやってみせ、バイオフィルムの除去の徹底を指導します。これからはインプラント周囲炎が増えてきますので、歯科医院の真価が問われるようになるでしょう。私どもではインプラント周囲炎を考慮した生物学的側面からインプラントを埋入していきたいと考えています。

【今後の展開】

本院と2つの分院の3軒をさらに充実させたいと思っています。インプラントのケアは口腔全体のケアに繋がります。そこで歯科衛生士専門の予防ルームを設置し、歯周病やインプラント周囲炎のケアを行いたいです。また、院内ラボという形で技工所がほしいですね。甲府と大牟田の分院に関しては歯科衛生士によるブラッシング指導も含め、予防中心の診療を始めようと計画しているところです。

【開業に向けてのアドバイス】

開業してしまうと、スタッフ教育が大変で、なかなか自分のスキルアップに使える時間がありませんので、勤務医時代にしっかりスキルアップしておいた方がいいですね。開業自体も本に書いてある通りにはいきません。歯科医師だからといって天狗になることなく、他業種の方たちと知り合う機会を作ることで、自分を客観的に見る姿勢を持っておくことも大事ではないでしょうか。

【プライベート】

他業種の方と飲みに行ったりします。それからスポーツ観戦ですね。ラグビーや野球も好きですが、最近はサッカーを観に行くことが多いです。

【タイムスケジュール】

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