歯科経営者に聴く - 金尾歯科医院 金尾好章理事長

歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

医療法人社団 船州会 船木毅 理事長

かかりつけの医者を選ぶ意識は、しだいに浸透しつつあるが、一生涯の付き合いができる歯科医と患者が、どれ位いるだろうか?
船木歯科診療所は、横浜オフィス街の中心地で、40年間診療を続けている。産業貿易センタービルの3階というロケーションは、休み時間などを利用して、勤務先から通院するには好都合だ。
その一方、退職後も、遠方から電車で来院し続ける人たちがいる。これは、場所柄では説明がつかない。かかりつけとしての信頼関係が確立しているからだとしか考えられないだろう。

医療法人社団 船洲会理事長 歯学博士 船木毅 先生

医療法人社団 船州会 船木毅 理事長

プロフィール

  • 医療法人社団 船州会 理事長
  • 日本歯科大学 保存学講座 非常勤講師
  • 日本歯科保存学会 保存治療認定医
  • 歯学博士
  • 神奈川県 診療報酬支払基金審査委員
  • 元 神奈川県 歯科医師会理事
  • 元 神奈川県 歯科技工士試験委員

1.実習時代からかかりつけに

. 開業は、最初から産業貿易センターですか?

医療法人社団 船洲会A. 初めの10年ほどは、おとなりのシルクセンタービルの地下でした。お日様の光が入る診療室にしたいと思っていたので、このビルができるときに申し込んで、移ってきたのです。

Q. 現在は28ユニットですね。ここまで大きくするには、かなりのご苦労があったのでは

A. 苦労ですか? ありません(笑)。右肩上がりの時代でしたからね。

Q. しかし、イケイケどんどんでやっていたところは、次々に行き詰まっています。こちらは拝見したところ、バブルがはじけた様子もなく(笑)。

A. よそ見をせず、歯科医の本業に集中してきたのが良かったのでしょうね。私は株式投資などは嫌いですし、良いスタッフに恵まれたおかげで、お金の勘定もせずに今日に至りました。

Q. バブル気分になりようがありませんね。

A. それに、患者さんとの、人の縁にも恵まれていました。学生実習のときに初めて診療させていただいた患者さんと、今にいたるまで、40年以上もお付き合いをいただいています。学生実習ですからライセンスはまだ取得しておらず歯科医者としての治療経験は、まだ無かったわけですからね。患者さんからすれば不安だったはずです。しかし、実績がないから治療させないと言われたら、いつまでたっても経験をつめないし、育たない。私は、他の先生のように、すばらしい技術を持っているわけではありません。その私が可愛がっていただけたのは、とにかく一生懸命にやった、それだけだと思います。
だから、患者さんに育てていただいたのだという気持ちは、忘れたくありません。

2.患者さんの社会生活に合わせた治療を

Q. それで、研修の受け入れなども、積極的にやっていらっしゃる。

>A. 手厳しくやりすぎたせいか、最近は研修医のほうが恐れをなして来なくなりました(笑)。研修にはいる前から、質問攻めにするんですよ。
この人の歯はこういう状態だ、さあどう治療する? 明日から長期出張だとしたらどうする? 行き先が海外だったらどうする? って調子で。

Q. 患者さんの社会生活まで視野に入れた設問ですね。

A. 我々歯科開業医の診療は多くの場合、命にかかわるものではありませんから、忙しいと後回しにされてしまう。来院していただくためにも、患者さんの社会生活のリズムを乱さないことが大切なのです。

たとえば、政治家の方、接客業の方などは、前歯を抜いた状態だと仕事になりませんよね。お忙しい合間にいらっしゃっているので、時間もあまり取れない。それでも、仕事にさしつかえのない状態にして、その日の治療を終えるようにしています。

Q. 患者さんの社会生活まで視野に入れた設問ですね

A. 我々歯科開業医の診療は多くの場合、命にかかわるものではありませんから、忙しいと後回しにされてしまう。来院していただくためにも、患者さんの社会生活のリズムを乱さないことが大切なのです。

たとえば、政治家の方、接客業の方などは、前歯を抜いた状態だと仕事になりませんよね。お忙しい合間にいらっしゃっているので、時間もあまり取れない。それでも、仕事にさしつかえのない状態にして、その日の治療を終えるようにしています。

Q. 治療するだけではなく、患者さんの社会生活を支えるという考え方は、たとえば難病を扱うかかりつけ医には、なくてはならないものですね。成人の歯も、一度抜いたら生えて来ないわけで、取り返しがつかないという意味では難病かもしれません。

A. 私も、若いころはためらいもなく抜いていましたが、この歳になると、何とか残す方法はないかと考えますね。
やはり自前の歯が一番ですから。抜くにも入れるにも、良く話し合ってからと思うようになりましたね。

3.もっと気楽に訪ねられる歯科医に

Q. 自前の歯を守るには予防が大切ですが、そのために歯医者を利用しようと考える方は、まだ少数派でしょう。

医療法人社団 船洲会 A. 一度診察室に入ると、治療から請求書までベルトコンベアーに乗せたように自動的に進むのでは、気楽に相談もできませんから。そのためもあって、相談室を設けているのです。どんどん利用していただきたいですね。

Q. 確かに、最近入れ歯の調子が今一つ、という位では、歯医者に行く決心がつきません。座ってしまったら、勘定は時価の寿司屋と同じで板さんにしかわからないという昔ながらのイメージも、根強く残っています。

A. 年齢とともに、歯や歯茎の状態も変わりますから、定期検診と早期治療が最善です。
それには、安心して治療を始められるように、見積もりはきちんと出すこと、保険でできることは、保険の範囲内でやること。この二つをきちんとやるべきでしょう。

Q. それでは儲からないという意見もあると思いますが。

A. それは当院の方針だから仕方がない(笑)。せめて、その方針の良さを、もっと患者さんにアピールしてくれと、事務長に言われますけれどね。

Q. 最近、インターネットで船木歯科医院の評判を読む機会があったのですが、見積もりがきちんとしているというのは、多くの患者さんが誉めていました。

A. 私もお鮨は好きですが、やはり、自分の懐に合ったものを、安心して食べたほうがおいしく感じます。患者さんも、同じなのでしょうね。