歯科経営者に聴く 〜第一線で活躍する院長から学ぶ〜
天井久代 先生

天井久代 先生

天井久代 先生

漂白研究会常任理事、日本歯科人間ドック学会常任理事を務める、医療法人天志会(ときわ歯科クリニック・アップル歯科)天井久代理事長。といっても、ただの女医さんではありません。義歯のスペシャリストとして訪問歯科診療に尽力する一方、女性歯科医療従事者の意識向上に奔走されています。しかもプロのエッセイスト、油絵家、写真家であり、ガーデニングでも広く名前を知られています。
遊びに学会にと世界を飛び回るスーパーウーマンに、今回はお話を伺いました。

1.女性歯科医療者の意識向上

FDIにて
FDIにて

「歯学部卒業生に占める女性の割合は年々上昇していて、今は四割近くになっています。しかし、女性歯科医師が増えれば相対的に開業が減る、などと言われています。それ以上に問題なのは、女性自身がしっかりしていないことです。高価な『花嫁道具"資格"』ではないのですから、自分が身に付けた歯科医師という職能に誇りを持ち、仕事に目覚めて欲しいものです」

「女性が男性と肩を並べる必要はないと思っています。女性には女性にしかできないことがありますから。開業している女性歯科医師が少ないからといって、徒らに『女性もみな開業しなさい』と言うつもりはありません。現実問題としては、結婚と開業の両立は難しいので開業しない方を勧めるくらいです。そして常勤でも非常勤でも、自分の生活スタイルにあった働き方をすればよいと思います。ただ『女性だからできない』という考え方はして欲しくありません。
歯科医師という能力を生かす場は、診療所だけではないと思います。むしろ結婚して子供ができたら、保育園や幼稚園で歯科啓蒙の運動をし、地域社会の中でデンタルIQを高めていくことの方が大切かもしれません」

「男性と女性では診療の仕方に違いがありますし、男性の先生が女性ドクターを育てるのは苦手のように思います。その点、女性の方が女性に厳しいですし、自立した女性の下にいたほうがしっかりするものです。うちのスタッフはみな向上心がありますよ。歯科助手の子が『衛生士になる』と学校に通いだしたりしますので『二年経ったら戻ってきなさい』と送り出しています。
例外はありますが、一般に男性は女性的に(やさしく)治療し、女性は男っぽく(たくましく)治療するパターンが良いようです」

2.生い立ち、そして波乱万丈

「同級生と十歳の歳の差ですです。そのため、十年の遅れを辛く感じて泣いたこともありました。
そんな時、父の友人の歯科医師が、こんなことを言ってくれたのです。『三十歳と四十歳の歳の差は大きいと思うかもしれないが、七十歳と八十歳になればほとんど変わりませんよ。歳の差はどんどん縮まるものですが、君の入学するまでの十年の経験は宝であって、この宝はどんどん大きくなるのです』
社会に出てこの言葉の意味がよくわかるようになりました。歯科医師になる前の十年にやったこと、つまり経験というものは、決して無駄なことではなかったのです」

3.心地よいリズムで働く

先生のお庭で
先生のお庭で

「区切りがついたら、日本を離れて、外国の語学学校にキチンと入り直そうと思っていたのです。正直、あんまり日本が好きなわけじゃないですし、前世は日本人じゃなかったと思うのです……。
(今、持っている二つの診療所は居抜きで始めたので)突然ゼロから仕事を始めたいと思い、場所も義歯の権威・河辺清治先生の門下生だった時に通っていた銀座に絞り込みました。憧れの地ですし、どうせ散るなら板橋より銀座で散りたいと思ったのです」

「分院をたくさん持つのが成功だとは思いません。『成功』というのは人それぞれによって異なるものです。好きなことをやって、おいしいものを食べて、というわたしのライフスタイルからしたら、キャパとしては二件が丁度良いのです。手は二本しかないですしね(笑)。
勤務医の時は何万円という金額で苦労しました。開業すると、十万円単位でものを考えました。二件目を持ってからはそれが百万円単位になりました。これ以上大きい単位はわたしには必要ないのです」

4.若者に向けてく

先生のお庭で
先生のお庭で

「大学の先生は大学にしかいないでしょう。でも学生の95パーセントは一般の歯科で勤務したり、開業したりするのですから、実際に第一線に立っている人間が教育に携わる必要があるのです」

「『自立』というのは言葉で教えられるものではありません。口で言っても仕方ないのです。そこで自分自身の体験を話すと、若い人は共感してきてくれます。
そして、率直に『頑張ります』という感想をくれますね。『あたしもこうなりたい』と言ってくれると、やりがいがあります。この授業を通じて、仕事に目覚めてくれる人が一人でも増えてくれれば、と思います」

「早い段階で『自分の人生の成功とは何か』を見極めることです。目的を見失って世間の価値観に流されると、本当の成功は得られません。自分自身の人生観、ライフスタイルをしっかり持つことですね」

「人生をふくらませる線上に仕事があり、趣味があり、人の出会いがあります。わたしの基本姿勢は、楽しく人生を送り、仕事をすることですね」

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