訪問診療特集 e-dentist/イーデンティスト

嚥下内視鏡検査 嚥下内視鏡検査
スタッフからのコメント

今回は、患者様のご自宅で本多先生の嚥下内視鏡検査を見学させて頂きました。
お口の中の事や飲み込み状態などは普通なら本人以外分らないところですが、この検査ではモニターに実際の状態が映し出されるため、患者様が安全に呑み込めているのか、むせる理由は何かを目で見て理解することが出来ました。
この検査によって食べ物の形状や、食べるときの姿勢で嚥下を良くすることが出来るのだと知りました。
今回見学をさせて頂きました山口歯科診療所と福森歯科クリニック(分院)の訪問診療チームで本多先生は嚥下内視鏡検査を行われています。

[e-dentistスタッフ]

進化する訪問歯科のスタイル 食べるという視点から歯科を広げる

進化する訪問歯科のスタイル
食べるという視点から歯科を広げる

嚥下の状態を検査し、リハビリテーションや口腔ケアなどの治療を行う「摂食嚥下リハビリテーション」において、重要な役割を担うのが嚥下内視鏡検査です。
嚥下内視鏡検査を実施すれば、食べ物がどのように咀嚼され、嚥下されているかを直接目で見て確認し、的確な治療計画を立てることができます。

嚥下内視鏡の機器 訪問歯科においては、ポータブルの嚥下内視鏡を用いて、在宅など患者さんが生活する場所で嚥下検査を行っています。

摂食嚥下リハビリテーションでは口腔だけでなく咽頭や食道の入り口まで診ますし、認知症や栄養についての知識も求められます。
食べるという視点から歯科が広がっていくのを感じます。

本多ドクター

本多 康聡 先生

【摂食嚥下リハビリテーションの流れ】

摂食嚥下リハビリテーションの流れ

の図のように、嚥下スクリーニング → 嚥下内視鏡検査 → 摂食機能療法というのが、摂食嚥下リハビリテーションの基本的な流れです。

嚥下スクリーニングで基本的な嚥下機能を評価し、誤嚥が疑われるなど重篤な場合は嚥下内視鏡検査で精査します。

診断と評価に基づき、治療計画を立てます。
治療は、上半身の運動や口腔マッサージ、専門的口腔ケアなどの摂食機能療法が中心となります。
これらを3か月程度行い、機能回復を再評価します。

【嚥下内視鏡検査のメリット】

  1. 嚥下内視鏡検査はファイバーを鼻から喉に入れます。喉の中を直接診ることができるので、嚥下機能の診断が容易です。
    また、在宅や施設で、普段の食事を食べていただきながら行うので、日常生活に即した評価がしやすいメリットもあります。
    嚥下がうまくできていない場合は、食べ物の固さや水分のとろみを調整し、その場で最適な食形態を判断できます。
  2. 患者さんに適した食事姿勢を決めることができます。
    嚥下機能の低下した方は、少しリクライニングした姿勢を取ると、食べやすくなる場合があります。
    患者さんが実際に食べている場所で、リクライニングの角度を調節できるのもメリットです。
  3. 嚥下内視鏡の検査では、映像を医療者だけでなく介護を担当する方に見てもらうことができるのも大きなメリットです。
    安全な食事や介助の方法について、医学的根拠を示すことができますので、説得力があります。

【歯科業界で嚥下内視鏡検査が話題になっている理由】

訪問歯科診療の車両 訪問歯科診療の車両

嚥下の画像検査は病院で行われる嚥下造影検査(VF)が一番ポピュラーな検査です。
しかし、VFは病院に設置されている機械ですから、病院でしか行えないのです。
現在は病院に行けない高齢者が増えていますが、訪問診療で嚥下評価をしてくれる医師はあまりいません。

その点、歯科医師による訪問歯科診療では患者さんをご自宅で診ることが可能です。
在宅でできる嚥下の画像検査が嚥下内視鏡なのです。

【セミナーで習得したが、実際には行ったことがないという歯科医師が多い理由】

今の大きな問題ですね。
嚥下内視鏡が使えても、それに基づく診断やリハビリテーションの実践まで学べる環境が整っていないからでしょうか。
大学や大学院では実習も可能ですが、短期のセミナーでは実践までは教えられないようです。

【嚥下内視鏡検査のリスク】

嚥下内視鏡検査のリスク

鼻の中を通しますから、0.2%程度の方に鼻出血があるといわれています。また、患者さんが不用意に暴れた場合に粘膜を傷つけることがあります。
これは本当に特殊なケースですね。そういった危険のある方には、この検査を行わないこともあります。

VFはレントゲンを使うので被爆のリスクがありますが、嚥下内視鏡検査には被爆はありません。造影剤も使いません。

鼻に入れる時の失敗は歯科医師の技術的な問題です。胃カメラと同じですよ。
全く苦痛を感じさせない医師もいれば、そうでない医師もいるように、習熟度によります。
ある程度、習得してしまえば、ほとんどリスクはありません。

【嚥下内視鏡検査の効果】

診断の精度がかなり上がります。嚥下内視鏡検査を行わず、飲み込みの音を外から聞くだけだと、喉の中で何が起こっているのか分からない場合がありますが、嚥下内視鏡検査だと分かることが増えるのです。
正しい診断をした上でリハビリを行うと、効果が向上します。ですから、診断はとても大切です。

【嚥下内視鏡検査が必要な患者さんとは】

嚥下内視鏡検査が必要な患者さんとは

誤嚥性肺炎を繰り返している患者さんです。また、体調を崩して入院し、入院中に医師から経口摂取を止められた患者さん、経鼻栄養や胃瘻などで経口摂取ができない患者さんです。
そういう状態になりますと、ご本人のみならず、ご家族からも「もう一度、口から食べられるようになりませんか」と検査を依頼されます。

入院中は食べられなかった方でも、退院後に回復してくる方もいます。
退院後に、再び口から食べられるかどうかは判断が難しいため、私ども歯科医師が嚥下内視鏡検査の結果を医師に報告することで、「それなら、食べる練習をしていきましょう」という形で経口摂取の再開に繋がります。
飲み込みの音を聞いたり、喉の動きを外から見るだけでは根拠としては弱いですから、嚥下内視鏡検査の画像診断は客観的な根拠となりますね。

【医科との連携】

複数の疾患のある患者さんが多いので、嚥下内視鏡検査をする場合は主治医に嚥下内視鏡検査をしていいのかどうかの手紙を出し、許可をいただいてから行います。
患者さんの状態の共有という意味もありますが、歯科医師が嚥下に関わっているというアピールのためでもあります。
以前、医師から「経口摂取を止めろと言ったのに、何を勝手にやっているんだ」と怒られたことがあるので、そういった問題を避けたいですしね。
最近では医科の先生方にも喜ばれるようになってきました。「口から食べられるようになるなら、どうぞ検査をしてください」と言われています。

【嚥下内視鏡検査を歯科医師が行う理由】

誤嚥は喉が原因で起きていると思われがちですが、実際は口腔の状態が悪かったり、口が整っていないことが原因であることも少なくありません
そこを見過ごして、喉ばかりを診てしまうと、なかなか治らないのです。
「口を整える」と「嚥下機能を向上させる」ことは密接な関係があります。そうなると、口の専門家である歯科医師が行う理由になりますね。

【嚥下内視鏡検査の今後】

嚥下内視鏡検査の今後

在宅や施設に関してはさらに広まってほしいです。
ご本人はもちろん、在宅ならご家族、施設なら職員さんが毎食、食べさせようと頑張っていても、むせてしまって食べられない状態が続くと、ご本人も周囲も困ります。
ですから、私どもが嚥下内視鏡検査をしに行き、食べさせ方をアドバイスしています。
すると、安全に食べられるようになり、周りの方々もハッピーになります。

【口を整えるとは】

口腔ケアはただの歯磨きだと思っている人が多いようです。
歯磨きは大切ですが、それだけでは十分とは言えません。
安全に口から食べるためには、口腔の機能を高める必要があります。
歯科衛生士が行う専門的口腔ケアは口の粘膜を拭いたり、舌の運動をさせたりして、口の中の細菌を減らしながら、同時に「口の力」を上げていきます。
こうして口を整えることによって、徐々に「食べられない口」が「食べられる口」へと変化していくのです。

嚥下内視鏡検査の様子

本多ドクターの訪問診療による嚥下内視鏡検査を行う様子を動画にしました。

訪問診療で使用する機器の紹介

ハンドピース

ハンドピース

ポータブルX線装置

ポータブルX線装置

ポータブルユニット

ポータブルユニット

ポータブルレントゲン

ポータブルレントゲン