歯科衛生士人生6つのステージ

【第4回】認定歯科衛生士取得の支援体制―医院全体で資格取得をサポート!みんなで目指す「スペシャリティ」―

坪野慶明 医療法人社団 桜実会 おおど歯科クリニック 理事長

医療法人社団 皓有会 小山歯科・矯正歯科クリニック 理事長
小山 和泉(Koyama Izumi)

オフィシャルホームページ
http://www.koyama-shika.com/
  • 1960年 群馬県 生まれ
  • 1980年 慶應義塾大学 入学
  • 1981年 新潟大学 入学
  • 1987年 新潟大学 卒業
  • 1987年 黒田歯科 勤務
  • 1989年 板橋区小豆沢病院・歯科 勤務
  • 1991年 北区王子生協病院・歯科 勤務
  • 1993年 板橋区歯科室・キムラ歯科 勤務
  • 1998年 小山歯科クリニック 開設
  • 1998年 埼玉県朝霞市に小山歯科クリニック 開設
  • 2007年 医療法人社団皓有会 小山歯科・矯正歯科クリニック 開設
  • 2008年 医療法人社団皓有会 ゆりの木歯科矯正歯科クリニック分院 開設
  • 2008年 和光市口腔ケアステーションゆりの木 和光市委託にて契約
  • 2010年 新潟大学大学院 入学
  • 【学会 他】
  • 摂食嚥下リハビリテーション学会
  • 日本口腔衛生学会
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医療法人社団皓有会 小山歯科・矯正歯科クリニックは東武東上線の朝霞駅から徒歩1分ほどの場所に、1998年に開業した歯科医院である。昨年4月に新しいビルへ移転し、新規リニューアルオープンした。開業以来、地域住民のお口を通した健康管理を第一に考え、カウンセリングを通して、虫歯の治療だけでなく、予防の大切さや口元のケアなど、地域のホームドクターとして一歩進んだ歯科医療を目指している。また、訪問診療では高齢者や障害者を対象に、在宅や介護施設、病院などで診療や口腔ケアを行い、地域支援事業や介護、看護者向けの口腔ケアセミナーなどの保健衛生指導も行っている。 小山歯科・矯正歯科クリニックの歯科衛生士は全身疾患の知識を深めたうえで、歯周病や虫歯の治療、誤嚥性肺炎の予防や摂食嚥下を助けるリハビリなど、口腔機能の維持向上に関わる業務を行っている。 今月は医療法人社団皓有会 小山歯科・矯正歯科クリニックの小山和泉理事長に認定歯科衛生士について、お話を伺った。

「スペシャリティ」を持つ歯科衛生士の価値。

今年3月の段階で、日本の歯科医院の数は68731軒、当法人のある埼玉県には3505軒の歯科医院があることが分かりました。さすがにこれだけの歯科医院がありますと、駅前ではビル1棟につき1軒の歯科医院、商店街にはいくつもの歯科医院が軒を連ねることになります。患者さんにとっては選択肢が多いというメリットはあるものの、どの歯科医院に行けば良いのか迷ってしまうデメリットもあります。
どの歯科医院の院長でも、いかに多くの患者さんに自院を選んでもらえるか、創意工夫して他院との差別化を図っています。ハード面であれば、最新式のユニットや治療機械、薬剤などを導入し、より新しい治療方法を提供することで患者さんを呼び込んでいます。もちろん、リニューアルや移転新規オープン、診療時間の延長などもこれにあたります。
一方、ソフト面では、院長自ら勉強会や国内外の学会に参加して、より新しい、より効果的な治療方法や手技を学んで、他院との違いを謳っています。また、治療材料の一括購入など、経営自体の効率化を図っています。さらに受付のスタッフや歯科助手にも接客技術を向上するため、定期的に接遇のプロのセミナーを受講するよう、奨励しています。

では、歯科衛生士にはどのような差別化のファクターがあるでしょうか。それが「認定」が付いた歯科衛生士です。他院にはいない、「スペシャリティ」を持つ歯科衛生士が自院にいるということは、患者さんにアピールしやすいだけでなく、患者さんにとっても多くの歯科医院の中からどの歯科医院を選ぶかの目安になるでしょう。

「認定歯科衛生士」は、特定の専門分野において高度な業務実践の知識、技術を有すると認められた歯科衛生士です。
たとえば、日本歯科衛生士会の生涯研修制度における認定研修を修了した歯科衛生士、および日本歯科衛生士会が指定、委託する専門学会などから推薦された歯科衛生士が認定歯科衛生士審査会に合格し、認定歯科衛生士名簿に登録されると認定証が交付されます。予防歯科、審美歯科という業務が増えていることから、各学会においても認定制度が増えています。
認定を受ける方法は学会によって違いますが、基本的には学会会員となり、特定分野における3年から5年の経験を持ち、講習会などを受講して試験に合格することで認定証を取得することができます。また、技術の進歩に伴って必要となる知識も変わるため、更新を必要とすることが多くなります。

認知度の高い「認定歯科衛生士」資格には、日本歯周病学会認定歯科衛生士(日本歯周病学会)、インプラント専門歯科衛生士(日本口腔インプラント学会)、ホワイトニングコーディネーター(日本歯科審美学会)、認定矯正歯科衛生士(日本成人矯正歯科学会)などがあります。

日本歯周病学会認定歯科衛生士

日本歯周病学会が認定する資格で、昨年6月末までに865名の方が認定されています。日本では成人の約8割が歯周病に罹患している実態があり、未だに歯周病の予防と治療が広く国民に実施されているとは言い難い状況です。歯周病への対応を的確かつ効率的に実施し、長期間にわたり国民の健康管理に貢献することができる有能な歯科衛生士の需要は今後高くなると思われます。

認定申請料 1 万円 、登録料 2 万円、更新手数料 1 万円

インプラント専門歯科衛生士

日本口腔インプラント学会が認定しています。歯科衛生士の口腔インプラントに対する専門知識と技術を向上させ、国民の口腔保健の増進を目指すため、インプラント専門歯科衛生士制度を2007年に発足させ、既に400人以上が認定されています。

試験審査料 1万円、登録料 2万円

ホワイトニングコーディネーター(日本歯科審美学会)

歯科審美学、特にホワイトニングの専門的知識、臨床技能や対応および経験を有する歯科衛生士のさらなる水準の向上を図り、国民の保健福祉の増進と生活の質の向上に貢献する目的で設けられた資格です。

講習会参加費用 5千円、受講料 3千円、登録料 6千円

認定矯正歯科衛生士

日本成人矯正歯科学会では、矯正歯科臨床における歯科衛生士としての専門的知識、技術ならびに経験の備わった歯科衛生士を認定する制度があります。この資格は経験年数によって1級と2級があります。

申請料 1万円、登録手数料 2万円

※日本成人矯正歯科学会には「歯並びコーディネーター」という資格もあります。この資格は学会の会員、非会員を問わず、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士だけでなく、意欲ある助手や受付などのスタッフ、歯科医療関係者も資格を取得できるため、これまでに1700人以上の方が取得しています。

研修会費 1万5千円、登録料 6千円

当法人の場合、既に日本歯周病学会認定歯科衛生士、摂食・嚥下リハビリテーション認定を取得している歯科衛生士が働いており、ケアマネージャー取得者や経験者もいますので、取得していない歯科衛生士も常に情報交換ができ、向上し合える環境を整えています。 高齢者や障害者を対象に在宅、介護施設、病院などで診療や口腔ケア、また地域支援事業や介護・看護者向けの口腔ケアセミナーなど、保健衛生指導などを行っていますが、昨今、摂食嚥下評価と指導、口腔ケアの重要性が一般にも認識されて、衛生士が行う専門的口腔ケアはひっぱりだこです。

資格の取得には費用が必要なだけでなく、受講のための時間やほかのスタッフの協力が必要です。資格取得について医院全体でサポートする体制を構築できるよう、スタッフ間の意思統一を図ることが重要でしょう。また、資格を取得された場合には歯科医院へその知識や技術をフィードバックすることで、歯科医院全体のレベルアップを見込むことができます。それこそが他院との差別化につながるのではないでしょうか。