歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

有限会社 SMC 斎藤肇 代表

有限会社 SMC 代表 斎藤肇 先生

有限会社 SMC 斎藤肇 代表

プロフィール

  • 1960年、栃木県出身
  • 昭和57年、栃木県立衛生福祉大学校卒。
  • 卒後、宇都宮の歯科医院に数年勤務した後、シコーシャ・日本支社の代表となる。
  • この間、早稲田トレーニングセンター卒。
  • 平成9年2月SMCを設立し現在に至る。
  • SHILLA SYSTEM技工インストラクター
  • AJS咬合整体研究会インストラクター
  • 日本療術師協会会員
  • NSカイロプラクティック研究会会員
  • 1994年 11/26・27 Dennis P. Tarnow.DDS.,P.C.
  • 7/16・17 Gerard J. Chiche, D.D.S.
  • 1995年 7/1・2 John C Kois D.M.D.,M,S,D.
  • 9/16・17 Edward P. Allen
    Richard D. Roblee
  • 10/7・8・9 Morton Amsterdom D.D.S.,ScD.
  • 1996年 4/6・7 Edward P. Allen, D.D.S,Ph.D.
  • 11/2・3 William H. McHorris, D.D.S
  • 1999年 4/10・11 Msdshide Tsutsui, D.D.S
  • 1992年 3/26~29 THE BRANEMARK SYSTEM
  • 1993年 10/4・5 Willi Geller
  • 11/23・24 Willi Geller
  • 9/27・28 Willi Geller
  • 11/7・8 Willi Geller
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1.新しい咬合理論

まず初めに、最近の歯科技工の状況についてうかがいたいのですが。

有限会社 SMC 代表 斎藤肇 先生A. 近年の流れは、歯牙だけの審美から、歯肉と調和した審美へどっと行っていますね。オベイトポンティックという技術や、オールセラミックの技術も普及してきました。厚生省がファイバーコアを認可したのですが、ジルコニアについても時間の問題でしょう。天然の歯の色に近いかというと、疑問もあるのですけれど、ノンメタルで、生体に優しいいう点は間違いないでしょう。ですが、今後数年について考えると、咬合の重要性が見なおされてくると思います。

Q. 咬合の重要性、とおっしゃいますと。

A. 模型を見るにしても、なぜこの歯が悪くなったのか、なぜこういうアーチになったのかと、そこのところを考えなければいけないと思うのです。咬合が原因で悪くなった歯は、その原因から治していかないと、矯正しても元に戻ってしまったり、インプラントが壊れてしまったりするのです。原因を見逃すと、何度も治療をやりなおしたり、治療が病気を作るようなことになりかねません。実際、それが原因で医療不信に陥る人も少なくないのです。

Q. 先生が咬合の勉強を始められたきっかけは。

A. フルマウスのケースを行っている時にバイトを見ていて不思議に思ったのですね。同じ患者から取ったはずなのに、取るたびごと、治療の段階ごとにバイト違っているのはなぜだろう、と。取り方がおかしいのか、それとも他に理由があるのか。これは、フルデンチャーのスペシャリストの医師のところへ行って実際のところを見ないとわからないのでは、思ったのです。咬合というのは、以前はスタティックなものとして考えられていました。しかし、さまざまな要因で変化するものだということが、認めざるを得ないところまではっきりとデータで提示されてきたのです。

そうなると、どこが本当の咬合か、判らなくなりそうです。

A. 片方の歯が悪いと、反対側の歯で噛む癖がつきます。その時の咬合を本来の姿だと勘違いして作整したら、悪い状態を固定することになるでしょう。一本の歯だけが高くつき出ているのか、それとも他の歯が全部低すぎるのか、といった判断もしなければいけません。単に並びを揃えるだけだと、咬合がおかしくなりますから。そのための、システムがあるのです。これを押さえておけば、ずれていると言われない、きちんとしたものが取れます。

Q. 先生御自身が経験された、印象深い症例などはありますか。

A. コンピュータ関連の仕事をなさっていた方で、肩こりのひどかった人の例があります。咬合が原因だった顔の輪郭のゆがみも取れました。顔面左右のアンバランスなどは、総べてと言いませんが、咬合に由来する部分があります。ご本人が治療前の写真を見て「これが本当に私の写真?」と驚いていました。

Q. ある意味、本当の審美ですね。

A. どこから見るか、ということです。審美は、歯だけではなくトータルで考えなければならないのです。

2.包括治療における技工士

Q. 先生のように包括医療を考えていらっしゃる技工士は、まだ珍しいというのが実情ではないでしょうか。

A. 注文通りに補綴物を作れば技工士の仕事は終わり、と考えている方も多いかもしれませんね。歯科臨床サイドの知識も身につけなければなりません。私の場合、模型をはさんで、技工サイドからドクターに提案することもあるわけです。この患者さんのここをきちんと治すには、こういう方法がありますよ、と。プランニングの段階から参加する形が理想なのです。もちろんそのためには、技工の教科書だけでは不十分です。

Q. 医療技術は進歩し、保険制度も何度か見なおされているのに、技工料は二十年前から下がり気味である、という現実があります。これからの時代に求められる技工士になるには。

A. 将来が不安だという相談は、私のところにも来ます。先日、ある会社の社長とお話をした時に、「トヨタのクラウンは、20年前は、約70万円。現在は、400万円以上するけれど、トヨタの社員は、その間に良い車を作るために、毎日研究、開発をして、それだけの価値観を作り出している。そのような努力もせずに料金が下がったとなげいているか、あたりまえである」と言われていました。歯科医師が求める技工士も、二極に分かれているのではないでしょうか。一方は、安いこと。もう片方は、日々研究をして、とにかく腕の良い技工士です。当然ながら、後者のほうが仕事を選べて、なおかつ仕事も取れるでしょう。

Q. 上手いと評判の歯科医師にお話しをうかがうと、やはり技工士選びにもこだわっていらっしゃる方が多いようです

A. 患者さんも、情報を集めて良い医師を選ぶ時代ですからね。噛み合わせが大事、などということは、皆さんも雑誌などで見てよくご存知なわけです。技工士が本当に良いものを作れば、ドクターにも患者さんにも選んでもらえるはずです。

3.歯科医師と技工士の連携

有限会社 SMC 代表 斎藤肇 先生Q. 包括医療となると、医師との連絡も重要になると思うのですが。

A. 技工士の側で、なにか気がついたこと、おかしいと思ったことは、医師にフィードバックしなければいけませんね。繰り返しになりますが、技工士にも、医師のフィールドに一歩踏み込んだ勉強が必要だと私は思っています。もちろん、技工士としての勉強や技術の研鑚を、きちんとやった上でのことですけれども。逆に、医師の皆さんにも、技工士の仕事をもっと理解してもらいたいとも思っています。

Q. 患者さんをユニットに寝かせた姿勢のままでバイトをとっている歯科医師も、まだいらっしゃるようです。

A. それだと下顎が後退しますので、正しいバイトはとれませんね。咬合位がずれると、頭痛や肩こりの原因にもなりますし。先ほども言いましたが、治療が病気の原因を作ることになりかねません。。

Q. 先生の側から見て、優れた歯科医師とは。

A. 普通の治療ができることはもちろんですが、技工士や衛生士など、共同作業をする相手を尊重できる人ですね。一流の先生は、決して「自分が一番」などといった風には振舞いません。良い先生であるほど、技工士にも積極的に相談して下さいます。私のところに、わざわざ模型を持ってこられる方もいるほどです。患者さんのことを考えた治療をされる先生になるほど、技工士の意見にも耳を傾けてくれるという感じがします。

Q. しかし、保険の範囲内ですと医師が診療にあてられる時間も十五分程度になってしまいますし、技工士側から提案があっても、取り入れるのが難しいのではないでしょうか。

A. 自由診療に対して、お金がかかるからだめだろうと、最初から説明もしない場合が多いのではないかと思います。ですが、もし歯科医自身が治療を受ける立場になったら、お財布の問題はあるでしょうけれども、「全部保険の範囲内で入れましょう」と言われてうなずく人は、まずいないと思うのです。ある病院で、費用と効果についてきちんと説明できる専門のカウンセラーを置いたら、それまでは少なかった自費の治療が十倍に増えた、という話も聞きます。相応のお金を出してでも、もっと良い治療を受けたいという患者さんは、意外にたくさんいらっしゃるんですよ。自費の治療を押し付けるのは論外ですが、医師の側が諦めているというのもまずいでしょう。患者さんは治療を信用しないとお財布を開きません。良い治療法があるのに教えなかったとなると、インフォームド・コンセントの観点からも、問題になりますね。

4.これから

Q. 今後の抱負をお聞かせ頂けますか。

有限会社 SMC A. 技工士全体の位置づけが向上するように願っています。例えばヨーロッパですと、医師と技工士はフィフティ・フィフティの関係で、患者さんからいただくチャージも半々です。アメリカにも、技工士から医師へ提案したり、価格を提示したりするのは当たり前、という環境がある。日本ですと、まだまだ医師に従うという形で、いろいろなしわ寄せを受けているという話もよく聞きます。

Q. 技術や研究の面ではいかがですか。研究会などには、これまでも積極的にかかわっていらっしゃいますが。

A. 紙の上の勉強ではなく、技工士が自分の課題を持ち寄って、アドバイスを受けられるような勉強会を考えています。現場に密着したワークショップです。どんな形で、どれだけのことができるかは、まだわかりませんけれど。

Q. 最後に、若手の皆さんへひとこと。

先ほども申しましたが、現状は二極分化してしまっています。良いものを作る腕があれば、医師からも患者さんからも求められるはずなのです。技工士としての技術をしっかりと磨いた上で、一歩踏み込んだ勉強をすれば、それを生かす道は必ずあるはずです。