歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

西大津歯科医院 森岡千尋 院長

今回ご紹介するのは、平成6年ご卒業という非常にお若い先生である。京都駅からJR湖西線で2駅の西大津駅前のビル内で、歯科医院を経営されている。まずは、歯科医を目指されたきっかけから伺ってみた。

西大津歯科医院 森岡千尋 院長

西大津歯科医院  森岡千尋 院長

西大津歯科医院「生まれたのは東京都内ですが、小学校入学の頃からずっと鹿児島市で育ちました。大学も鹿児島大学です。大学にはとりあえず入っておこう、その後は<仮面浪人>しながらどちらかの医学部に移りたいなあなど当時は考えていたわけです。しかし、その後、歯学部での勉強が非常に面白くなってきました。私の場合、家庭の事情で自分で生活費を稼ぐ必要があったのですが、本や材料費を買うのも大変でした。ただ、大学ではなかなか専門書が手に入らなかったですね。情報量が少ないというのはつらいことでした。そして5年生から6年生にかけて行われた臨床実習の見学のために、京都市の医療法人に伺ったのですが、そこで得た刺激が大きかったですね。歯科医師になることに迷いがなくなりました。卒後すぐにそちらにお世話になりました。」

その医療法人では優れた先輩歯科医師のもとで研鑽を積まれた。一般診療はもちろんこと、当時先駆けであった訪問診療にも積極的に取り組み、京都市内のほとんどの特別養護老人保健施設を回られたという。また、入れ歯の作成も学び、小児歯科、障害者歯科についても知識を深められる中で「スーパーマルチドクター」への夢が膨らんでいった。 平成8年、西大津で歯科医院を経営されていた方が訳あって医院を手放されることになり、勤務していた医療法人からの派遣というかたちで院長を任されることになった。

「自分自身の考え方を息づかせ、実行する場ができたと感じました。患者さんの要望に対して必要に応じて最新の高度医療を提供し、患者さんのQOLに最良のサポートをしたいという思いは今も経営理念となっています。」

西大津歯科医院開業後、患者数は右肩上がりに増え、医院が手狭になったこともあって、昨年現在の場所に移転した。現在平均外来患者数は50人弱で、森岡院長、奥様、常勤医師1人、非常勤医師1人で診察している。歯科医師会に加入していないので、診療時間も自由に設定できるが、森岡院長は「患者さんのニーズが設定するものだ」としている。このあたりは、京都や大阪のベッドタウンとして広がったエリアのため「仕事帰りに寄りたい」という患者さんのニーズで夜は9時まで受け付けている。土曜・日曜も患者さんは引きもきらない。近くの市民病院や日赤病院、救急センターが扱うような患者さんへの対応もあるため、手術室も設置し、外科的な機材も導入している。海外赴任の前に治療に来た患者さんが、再治療のためにフランスから一時帰国して、森岡院長自らが作成した入れ歯を入れてまたフランスへ戻ったこともあったという。もちろん技工士も常勤で2人が勤務する。技工士を統括する組織とのツテがあり、優秀なスタッフを確保できているのが強みだ。こちらを退職したあともしばしば症例相談や見学に来るという。森岡院長はこのような「人間的なつながり」を非常に大切に思っている。このほか衛生士や助手などスタッフは20人ほどである。労務管理は主に奥様が担当している。

「開業してからの自己評価としては、まあまあかなといったところでしょうか。全般をこなせる先生が近隣にあまりいらっしゃらないようなので、全身的に診られる治療ができる状況作りができてきたところです。全身的というと神の領域のようで非常におこがましいのですが・・ひとりでこなそうとする姿勢ですね。大学は分化が進み、いわゆる<他科>が見えない状況に陥っています。しかし専門化があまりにも進むと逆に専門性がなさすぎるということにもなりかねない。矯正やインプラントも標榜には掲げていても、実際は非常勤の医師に頼っている医院も多いですが、私としては主眼や理想をレベルの高い時点に設定して高次元でこなしていく包括歯科診療をもっと勉強していきたいですね。」

森岡院長が臨床経験を通じて「永遠のテーマ」と呼んでいるのは咬合である。「咬合で始まり、咬合で終わる」と言われるこの咬合を軸として肉付けするために避けては通れないのが整形外科や生態学である。生物学的に、生物が水中から陸上へと上がってきた軌跡は脊椎の存在抜きには語れない。この「体を支えているもの」と疾患の関連を事象として捉えることが重要であるという。森岡院長が「勉強する癖がついてるんですよ。」とおっしゃるように、今も月に高さ30センチほどに積み上げられた書籍や文献を読む。

西大津歯科医院「これまでいわゆる<おいしい>部分は他の先生には教えないという考えをお持ちの先生が多かったのですが、最近は先生方も<出し惜しみ>をされなくなりましたね。インターネットなどの普及で勉強できる環境が整ってきたと思います。DVDでライブオペや手技が学べますしね。この世界も日進月歩ですね。10年前とはインプラントも全然違いますし、補綴の形すら変わってきました。勉強は全て患者さんに還元していくものだと思っています。」

厚生労働省の政策に対しての感想も伺ってみた。

「やはり、考え方が時代についていっていない感があります。保険の点数が臨床の実情にそぐわないことが多いですね。また、保険の点数の考え方が地域によって異なることもおかしいです。自費診療だけでもやっていけるとは思いますが、患者さんのニーズも大切にしたいですから、保険医としてのスタンスは大事にしています。」

西大津歯科医院では現在、常勤歯科医師を募集中である。

「患者さんだって、勉強していない医師に診てもらいたくはないでしょう。勉強するのは当たり前ですよ。歯科医師に求められるのは1)知識と技術、2)体力。3)人間的魅力ですね。やはりパワフルで、元気をくれるようなドクターを希望します。スーパーマルチドクターを目指して、お互いの存在が相乗効果となって、一緒に成長していけたらと思っています。」