歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

医療法人 育歩会 坂井歯科医院 坂井 秀明 理事長

加茂歯科クリニック 外観

大阪府寝屋川市は大阪市域から15キロ、京都市域から35キロに位置し、京阪間のベッドタウンとして発展した街である。京阪電鉄本線香里園駅の周辺は大型の小売店が出店し、タワーマンションが建設されるなど、再開発が進んでいる。
坂井歯科医院は香里園駅から徒歩1分の場所に1982年に開業した歯科医院である。保険診療のみならず、インプラントも数多く手がける一方で、後進の育成にも力を入れている。
今月は坂井歯科医院の坂井秀明理事長にお話を伺った。

むこうはら歯科医院 向原 正 院長

医療法人 育歩会 坂井歯科医院 坂井 秀明 理事長

プロフィール

  • 1956年 福岡県 生まれ
  • 1980年 福岡歯科大学 卒業
  • 1980年 つつみ歯科医院(大阪城東区)勤務
  • 1981年 太田歯科医院(東大阪市)勤務
  • 1982年 坂井歯科医院 開設
  • 2009年 しぎの歯科 開設
  • 2011年 かほりまち歯科 開設
  • 【学会 他】
  • 日本歯科先端技術研究所全国理事
  • 米国財団法人野口医学研究所
  • 全国歯科インプラント連盟理事
  • 全国歯科インプラント連盟認定医
  • 日本口腔インプラント学会会員
  • 日本歯周病学会会員
  • 日本歯科東洋医学会会員
  • 日本障害者歯科学会会員
  • 姿勢咬合医セミナー講師
  • 日本歯科医師会会員
  • DMA関西支部
  • インプラントサロン大阪所長
  • 日本歯科経営協会代表
  • D-1グランプリ実行委員長
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開業に至るまで

歯科医師を目指されたきっかけはどのようなものだったのですか。

父親は久留米市で歯科医院を開業していました。私は4代目になりますが、私は小さい頃からロボット作りが大好きで、工学系の仕事にずっと就きたいと思って いました。でも、私には妹しかいませんから、当然ですが、父親は私に代々続いてきた歯科医院を継いでほしいと願っていたのです。父の歯科医院は当時の久留 米ではかなり大きな規模でしたし、「一旦は継いでくれ、その後は何をやってもいい」と言われましたので、その程度の気持ちで歯科大学に進みました。大学4 年生の頃までは特に歯科医師になりたいという願望もなく、相変わらずロボット作りのことばかりを考えていました。

大学時代のエピソードをお聞かせください。

大学4年生までは新車を乗り回して、遊び歩いていましたよ(笑)。当時は歯科医院でアルバイトをすることが可能でしたので、アルバイトにも精を出している 毎日でした。しかし、4年生のときに父親の歯科医院が倒産したのです。事業を広げようとしたことが原因でした。それまでのんびり過ごしていた私にとっては 大きな出来事でしたね。テレビドラマのように、取立屋が追いかけてくるのです。本当にどん底でした。そのときに「物は消えるんだ。消えないものは自分自身 の中にあるものだけなんだ」と気づいたのです。自分自身の中にあるものとは知識や人間関係、友人たちですね。これが全ての基本になっているのかもしれませ ん。

勤務先を選ばれた理由はどういうことだったのですか。

知り合いの紹介です。つつみ歯科医院で学んだことが私に擦り込まれ、今でもベースになっています。つつみ歯科医院の考え方は「どうしたら患者さんが喜ぶの か」が全てでした。インレーや詰め物の型を取れば次の日に入れたり、被せ物なら3日で入れるなど、歯科技工士も徹夜でしたね。自費診療も多かったです。私 どもでも自費診療が多いのですが、自費診療に対する考え方が他院とは違うのかもしれません。患者さんにとって何が一番いいのかを考えたら、自ずと自費診療 になるのです。つつみ歯科医院の自費診療は高額でしたが、自費診療を選択される患者さんが少なくありませんでした。これはケースマネージャーと呼ばれる歯 科衛生士が患者さんとの人間関係を作るのがうまかったからです。歯科衛生士が治療の説明から費用の話までをしっかりしています。この歯科医院での経験を活 かし、私どもでは事務長がケースマネージャーの役割を担っています。

開業しようと決断されたいきさつをお聞かせください。

当時はお金がありませんでしたので、早く独立することを考えていました。ですから、勤務医時代は2年半しかありません。勤務医時代の後半はジョセフ・マー フィーが書いた成功の法則についての本にはまり、部屋のあちこちに同じ本を置いて、ちょっとした時間にも読んでいました。その本にあったのは想像したこと を紙に書くやり方です。駅のそばで、こういう歯科医院で、設備はこういうものを揃えて、赤い絨毯が敷いてあって、スタッフは4人で、来院患者数は60人 で、患者さんが60人いらしたら、美人の受付スタッフがOKのサインを出すというところまで、具体的に想像するのです。人にも同じことを話します。そうい うイメージを毎日していると、既に叶ったような感覚になりました。
そこへ材料屋さんが「先生がいつも言っているような物件がありましたよ」と来てくれたのです。お金もなかったので、居抜き物件を破格値で手に入れられて幸 運でした。イメージしていた路面の物件ではありませんでしたが、設備はイメージ通りで、見た瞬間に「ここだ」と思いました。

開業にあたってのコンセプトはどのようなものでしたか。

医療法人の名前は父親が経営していた「育歩会」を使いました。「一歩一歩育てていく」という意味です。急激に伸びるのではなく、一歩一歩着実に歩んでいく という想いだったのでしょうね。私は自分の中でもう一度これをやり遂げたいという気持ちがありました。しかし、イメージしただけで全てを手に入れたわけで はありません。分院を出すときなどは、物件の前の喫茶店にずっと座り、どれだけの通行人がいるとか、どこに看板を出すのかが効果的なのかなど、綿密な調査 も行っています。

経営理念

経営理念をお聞かせください。

「坂井歯科医院に出会えて良かった」と患者さんに思ってもらえることを実現することに尽きますね。

診療方針

診療方針をお聞かせください。

患者さんとの関係が20年以上続くお付き合いができるような人間関係を繋げることがまず挙げられます。私どもの基本的なモットーは「抜かない、痛くない、 小さな治療、ケアで維持する」です。インプラントの考え方はほかの歯を守るためだということです。インプラント以外の治療法ですと、ほかの歯に負担を掛け ますので、それを守るためにインプラントを行っています。インプラントの症例数は多いですね。
また、8時30分から9時30分のオープン時間まではミーティングや症例検討会を行っています。

増患対策

増患対策はどのようになさっていますか。

ホームページのほかは特に行っていません。診察をしている歯科医師一人一人が患者さんとしっかりコミュニケーションをとって信頼を得ていますから、それが紹介に繋がっています。紹介での来院動機が一番多いですね。

訪問診療の増患対策はどのようになさっているのですか。

地域のケアマネージャーの方々と連携を行いたいですね。ただ、私どものメインはやはり歯科医院内の診療であり、訪問診療を積極的に展開するつもりはありません。高齢や病気で通えなくなった患者さんを中心に訪問させていただければと思っています。

スタッフ教育

スタッフ教育について、お聞かせください。

スタッフが主体となって、全スタッフが「歯科甲子園D1グランプリ」に3年連続で参加しています。今年は準決勝まで進みましたよ。私は全く口出ししていな いのですが、スタッフが協力し合ってやっていますね。これが大切だと思っています。スタッフ同士が仲良くないと、患者さんにも移ってしまいますね。
歯科医師教育に関しては歯科医師の力量によって目標を立てています。1年目から3年目までは保険診療にしっかり取り組んでもらいます。本院の坂井歯科医院 では患者さんを多く回せますので、できない人には1時間枠をとりますし、必要ならばフォローもします。少しできるようになれば30分枠にしますし、段階を 追ってステップアップできるシステムをとっています。3年目から5年目では全顎治療、審美、補綴、自費デンチャーを積極的に経験してもらいます。また、こ の時期には外部のインプラントコースも受講してもらいますし、歯科医院からの補助も出しています。6年目以降はマネージメントやマーケティングなども学 び、インプラントにも取り組んでいます。
歯科衛生士に関しては、予防に特化した歯科衛生士を育てています。患者さんときちんと向き合って、長い付き合いができる歯科衛生士を育てています。本院に いた歯科衛生士が分院に移ったら、1000人の患者さんが分院に移られたこともありました。歯科医師ではなく、歯科衛生士についていたのですね。私どもに はそういう歯科衛生士になれる環境が整っています。

今後の展開

今後の展開について、お聞かせください。

毎年、要介護者が10%ずつ増えている時代です。私どもでは訪問診療に出遅れたので、今後は訪問診療に力を注ぎたいです。また、内部を組織化して、 「100年続く歯科医院」を作っていくこと、私以外のスタッフでどうやって運営していくかということがここ10年の課題でしょうね。城東区で展開していた 「しぎの歯科」は現在の分院長に暖簾分けを致しました。しぎの歯科同様に、開業支援バックアップをこれからも進めていきます。私どもで育ってくださった歯 科医師には「暖簾分け」のような形での支援を考えています。

開業に向けてのアドバイス

開業に向けてのアドバイスをお願いします。

現在、坂井歯科医院は開業32年目なので1日120~130名の患者様が来られています。また、香里園のかほりまち歯科は開業初日から患者様のアポイント が全部埋まり1日目から黒字でした。しかし、最初からこのようにうまくいくわけではありません。分院のしぎの歯科の開業初日の来院数は8人、2日目は5人 で、初月の売上は160万円でした。1000万円単位の赤字が3年間は出ていました。開業する場所によってもバラつきはありますし、しぎの歯科の場所なら 誰が始めても最初はこれくらいだったかもしれませんね。来院数20人を40人にするにはスタッフの対応などの問題になりますが、しぎの歯科のような状態を 黒字に転化するのは時間や接遇ではなく、資本投下なのです。資金はもちろんですが、本院から優秀なスタッフを送り込んで、広告を出さなくてはいけません。 資金的にもこれに耐える力が必要です。
そして、立地も大事です。人の流れがあるところを見つけることがポイントです。実際にその場所にいて、どれだけの通行人がいるのかを見てください。また、近隣の医院がつぶれていないようなら、潜在患者さんがいるかもしれません。
広告に関しては、ホームページが効果的な場所なのか、看板が効果的な場所なのかを考えてください。業者の勧めではなく、自分の足で歩いて、どこに出せばいいのかを探しましょう。

プライベート

プライベートの時間はどんなことをして過ごしていらっしゃいますか。

昔は22時ぐらいまで歯科医院にいて、帰ったら疲れて、即寝ていました。今は18時ぐらいに終了しています。最近、筋力アップのために、スポーツクラブに 行っています。あとは子どもの頃からの趣味であるロボット作りですね。でも基本的には仕事大好き人間ですので、歯科医院にずっといる日も少なくありませ ん。

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