歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

山本歯科医院 院長 山本 真樹 先生

加茂歯科クリニック 外観

神奈川県横浜市緑区鴨居は以前から宅地開発が活発に行われており、JR横浜線の鴨居駅周辺には大型マンションが林立している。2007年にはららぽーと横浜がオープンし、今後も発展が期待されている街である。
山本歯科医院は1995年に開業し、2014年に近隣の場所に新築移転を行った。現在地はJR鴨居駅から徒歩5分の立地である。新築移転に際しては2階を歯科衛生士による予防専門のフロアにするなど、「患者さんに一生、寄り添う歯科医院」をコンセプトにしている。
今月は山本歯科医院の山本真樹(なおき)院長にお話を伺った。

むこうはら歯科医院 向原 正 院長

山本歯科医院  院長 山本 真樹 先生

プロフィール

  • 1965年 東京都 生まれ
  • 1991年 鶴見大学 卒業
  • 1991年 神奈川県内の歯科医院 勤務
  • 1994年 神奈川県内の歯科医院 勤務
  • 1995年 山本歯科医院 開設
  • 2014年 山本歯科医院 新築移転
  • 【学会 他】
  • 日本有病者歯科医療学会
  • 日本老年歯科医学会
  • 日本歯科医療管理学会
  • 医療の質・安全学会
  • 日本救急医学会 ISLS認定インストラクター
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開業に至るまで

歯科医師を目指されたきっかけはどのようなものだったのですか。

両親がビルを所有しており、その店子として歯科医院が入居していたのです。そこで、両親から「歯科医師はいい仕事だ」と聞くようになりました。両親からはもともと「独立できる仕事を選べ」と言われていましたし、早い時期に独立ができる歯科医師に憧れを持っていました。

学生時代に思い出に残っていることはありますか。

水泳部とバレーボール部に掛け持ちで入部していましたので、忙しかったですね。中学のときに水泳をやっていたので、水泳部に入ろうとは思っていたのです が、バレーボール部に入ったのは私の身長が176センチと少し高めだったので、入学式の日に勧誘を受けたのがきっかけです。通称デンタルと呼ばれる全日本 歯科学生総合体育大会にも両方に出場していました。デンタルでは全国各所に行けましたし、楽しい思い出となっています。
また、高校の頃は電気に興味を持っていて、その延長で大学ではキーボードなどの楽器も演奏していました。

卒業後、勤務先を選ばれた理由をお聞かせください。

最初の歯科医院はバレーボール部の先輩、次の歯科医院は水泳部の先輩が勤務していたところなのです。見学に行ったときに、どちらの歯科医院も真面目な勤務医ばかりで、こつこつと一つ一つの治療に打ち込んでいる姿を見て、ここで働きたいと思いましたね。

勤務先で学ばれたのはどんなことですか。

最初の歯科医院では1年ほど、小児歯科を経験させていただきました。小児歯科の難しさは子どもの顎の発育や発達を加味しながら、何をすべきかを考えること にあります。単純に虫歯を治療して終わりではありませんから、遣り甲斐がありました。今も小児の患者さんを多く診ていますし、勤務医時代に学んだことを活 かせています。
勤務先では勉強は自分のお金ですべきことだ、欲しい材料や機材は自分で買うべきだといったことも学びました。また、「普通はこうす るものだ」という「普通」は逃げでしかないし、「様子を見る」というのも決断を先送りするための逃げでしかないので、深く考慮したうえで、最後に一歩下 がって非常識でないか確認しながら「半歩先を行く」ことの大切さにも気づかされましたね。

開業しようと決断されたいきさつはどんなことだったのでしょう。

2軒目の歯科医院で分院を出そうということになったのですが、いい物件が出なかったのです。それで困っていたときに、大学の先輩から歯科材料の会社の方を ご紹介いただきました。その方が「それなら開業されませんか」と物件を紹介してくださったのです。人との出会いは本当に大きいですね。

開業地はどのように選ばれたのですか。

神奈川県内で探していましたが、私としては住宅地の中の町医者でありたいと思っていました。地元に根ざした歯科医師が理想 だったのですね。そのため、都心部や駅のそばで開業したいというこだわりはありませんでした。最初の開業地は今の場所から歩いて10分ほどの場所で、 2014年にこの場所に移転してきました。

開業地の第一印象はいかがでしたか。

JR鴨居駅からはかなり距離がありましたが、私としては住宅地を希望していましたので、駅からの距離は気になりませんでした。第一印象は「田舎だなあ」というもので、周囲の雰囲気も私の好みでしたね。

開業にあたってはどんな苦労がありましたか。

スタッフ集めです。特に歯科衛生士が集まらず、最初は2人の歯科助手のみで開業しました。知り合いからのご紹介があり、開 業後5年ほどで歯科衛生士が入職してくれるようになりましたが、今度はスタッフ間の人間関係が大変になりました。入職したスタッフが半年で20人も辞めた り、入ってきた日の昼休みに「辞めさせてください」と言われたこともありましたね(笑)。改めて理由を聞いてみると、非常に厳しい歯科助手がいたのです。

その状況をどのように乗り越えられたのですか。

原因が分かったので、スタッフ全員を入れ替えることにしました。入れ替えの間、代診の歯科医師には苦労をかけましたし、私 も材料などがどこにあるのか分からなかったりして戸惑いもありましたが、いい組織を作っていくことができました。今の歯科衛生士と歯科助手のリーダーはそ のときに入職してきた人たちで、私どもの主軸となってくれています。

開業にあたってのコンセプトとはどのようなものだったのですか。

地域のニーズに応えながら、「街の歯科医師」であることに徹しようと思っていました。

移転されたのはなぜですか。

チェア2台で開業し、5台まで増設しましたが、手詰まりになってきたのです。治療が終わったあとの患者さんを放置できませ んから、キャパシティを広げたかったのですね。一方で、排水関係のトラブルもありましたので、近隣で移転を考えるようになりました。ただ、物件が見つかる まで2年ほどかかりました。

移転先の第一印象はいかがでしたか。

地元ですから、知っている場所でしたし、第一印象は特にないですね。待ち続けて出てきた物件なので、嬉しかったです。駅の近くを希望したことはないのです が、結果として鴨居駅から徒歩5分の場所になりました。この場所はもともと医科のクリニックがあったのですが、廃業後20年が経ち、ずっと放置されていた のです。更地にすることから始めました。

設計、レイアウトの工夫などをお聞かせください。

2階建てという条件を活かし、2階は個室にして、メンテナンス用にしています。チェアは1階、2階を合わせて7台です。最初は階を分けることに心配もありましたが、患者さんにはフロアごとに目的が違うことをご理解いただけますので、良かったですね。

経営理念

経営理念をお聞かせください。

来院される患者さんのみならず、地域の方々に寄り添い、その人の一生に関わっていくことです。患者さんの治療だけに終わらず、健康な方の健康維持や増進、美容などでもお役に立ちたいと願っています。

診療方針

診療方針をお聞かせください。

基礎的な治療に時間をかけています。そのうえで、難治の根管治療、歯周病治療などに取り組んでいます。CT、マイクロスコープ、口腔内カメラを導入していますので、高度治療を行うこともできます。
特 に力を入れているのは歯科医師と歯科衛生士の連携です。患者さんを歯科衛生士に返すと、歯科衛生士の管理下になります。その後、歯科衛生士が異常を見つ け、治療を依頼してくることもありますね。移転後は1階が歯科治療、2階がクリーニングと、それぞれの職場が分かれていますので、なおさら連携を重要視しています。

患者さんの層はいかがですか。

満遍なく、全ての年齢層の患者さんが来院されています。しかし、近くの竹山団地が2016年には築45年になりますので、高齢の患者さんが増えていくと予想しています。

自費と保険の割合について、お聞かせください。

自費が3割、保険が7割です。私としては保険診療を否定しませんし、患者さんに「保険で」と言われたら、保険で行います。ただ、CTや顕微鏡を使いますと、相当の病状が分かりますし、保険の制約を受けない自費診療がもう少し増えてもいいと思っています。

増患対策

どのような増患対策を行っていらっしゃいますか。

増患という意味は「患者さんを増やす」ということなのでしょうが、私には違和感があります。歯科医院は患者さんをなくそうとする努力をするべき場所だから です。したがって、増患という概念から離れない限り、歯科医院の安定はありません。患者さんの一生に寄り添うつもりで責任ある治療方針を立てたのであれ ば、保存や補綴が終わったあとに患者さんを放置することなど、ありえません。
私どもは新築移転でユニットを増設しましたが、経営的な側面から増や したのではなく、責任を全うするためだったのです。ここ5年は新規の患者さんをお受けしていませんでしたし、お電話をいただいても3週間ぐらい、お待ちい ただくことになるので、ご理解いただける方にいらしていただいています。

スタッフ教育

スタッフ教育について、お聞かせください。

月に1回、経営コンサルタントに来ていただき、改善のための提案をお願いしているほか、会計事務所との経営会議には院内の全てのスタッフが出席します。医療安全の講義や救急インストラクターの講義も全員出席です。
若手の歯科医師への教育は技術的なことを細かく指導しているほか、患者さんへの対応や一般的な常識なども教えています。また、月に1日は休診日にして、外部の勉強会に出席してもらっています。
歯科衛生士は入職1年目は私どもの内部での勉強を中心に取り組んでもらっていますが、入職2年目以降は外部の研修会への参加を積極的に促しています。

今後の展開

今後の展開について、お聞かせください。

新築移転したばかりですし、分院の展開は考えていません。今、行っていることの中で足りないことを思いつかないのです (笑)。今後は患者さんの疾患を治すのは当然のこととして、健康な方の健康維持や増進、美容といった内容も私どもでワンストップで提供できるような歯科医 院にしていきたいですね。

開業に向けてのアドバイス

開業に向けてのアドバイスをお願いします。

私どもは若手歯科医師の勉強に援助を惜しまないでいますし、そういった歯科医院は珍しくありません。しかし、矛盾するようですが、知識や技術というものは 自分がお金を払うことでものになるのではないでしょうか。外部での研修や勉強会は気持ちもリフレッシュされますし、新しい知識や技術も得られます。それら を日頃の診療の中でどう活かしていくのかを常に考えることが必要でしょう。簡単な治療であっても、患者さんに一生、寄り添うことを念頭に置いて、一人一人 の患者さんに真剣に対応してください。患者さんを人として大事にして、患者さんの一生に責任を持つためには患者さんの年齢やステージも考慮しなくてはいけ ません。そうすれば、「この患者さんにこういう治療をしたい」という希望が出てきますから、その分野の研修や勉強会に出席すればいいのです。そのうちに、 その分野のエキスパートになれるかもしれませんよ。

プライベート

プライベートの時間はどんなことをして過ごしていらっしゃいますか。

最近の趣味は音楽で、ウクレレやキーボードを演奏しています。ほかの楽しみは5歳の娘との時間ですね。木曜日は休診日なので、私が幼稚園に送っていくので すが、娘は木曜日を心待ちにしているようで、「木曜日の歌」を作詞作曲しているのですよ。そのうち、こんな関係はなくなっていくでしょうから、覚悟のうえ での楽しみといったところでしょうか(笑)。

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