歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する理事長から学ぶ~

松年歯科クリニック 院長 高田 龍彦

松年歯科クリニック 外観

 愛知県名古屋市中川区は前田利家生誕の地であり、尾張四観音の一つである荒子観音寺をはじめ、多彩な史跡がある。荒子観音寺には千体以上の円空仏や国の文化財に指定されている多宝塔があり、観光地となっている。松年歯科クリニックは中川区昭和橋通の国道1号線沿いにある。名古屋臨海高速鉄道あおなみ線の中島駅からも徒歩3分の好立地で、インプラントや矯正などの高度歯科医療に力を入れている。

 今月は松年歯科クリニックの高田龍彦院長にお話を伺った。

松年歯科クリニック 高田 龍彦 院長

松年歯科クリニック 院長 高田 龍彦

プロフィール

院長 高田 龍彦
1998年 北海道医療大学歯学部 卒業
1998年 徳真会松村歯科 勤務
2000年 敬天堂歯科医院 勤務
2002年 松年歯科クリニック 開業

日本口腔インプラント学会専修医
国際口腔インプラント学会認定医
顎咬合学会認定医

  • 【学会 他】
  • 日本臨床歯周病学会
  • 日本口腔インプラント学会
  • 顎咬合学会
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開業に至るまで

歯科医師を目指されたきっかけについて教えてください。

 父が歯科医師だったので、その背中を見て育ちました。歯科医師を目指したのも自然な流れでしたね。父が患者さんに接する姿や、歯一本の治療に真剣に向き合う姿を間近で感じていたので、歯科医師はとても遣り甲斐のある仕事なのだろうと子どもながらに思っていました。また、細かい作業が好きなので、歯科医師は性格的にも天職だと思っています。

勤務先の徳真会松村歯科を選ばれた理由をお聞かせください。

 徳真会松村歯科さんは日本最大級の医療法人でしたので、そういうところで一度学びたいと思い、選びました。JALの接遇研修などを取り入れ、15年以上前はどこの歯科医院でも行っていなかった「接遇」に力を入れておられたのです。この学びが私にとってはとても重要なものとなりましたね。現在、多くの患者さんが私どもを選んでくださっている要因の一つだと実感しています。

ほかの勤務先ではどういったことを学ばれましたか

 敬天堂歯科医院さんは当時としては最先端の自費治療を行い、遠方からも患者さんが来院されていたので、自費治療の勉強がしたくて、選びました。院長、副院長ともに非常に高度な最先端治療をされており、コーヌスクローネ、アタッチメントデンチャー、インプラントなどを積極的に行っておられました。私の臨床家としての基礎を築いてくれた歯科医院です。

開業地はどのようにして探されたのですか。

 ここにあった歯科医院が移転することをたまたま知り、居抜き物件をリノベーションして、開業しました。その後、外壁を塗装したり、看板を新しくしていったのです。歯科医院自体は新しく、きれいにしたのですが、歯科医院名だけは地名にしました。「初心を忘れないように」という思いを込めて、地域の方々に愛着のあるこの名前を使っていくことにしました。

経営理念・診療方針

経営理念をお聞かせください。

 「丁寧な治療を心がける」、この一言に尽きます。また、当院が一丸となって取り組んでいるのは「ありがとう」の言葉があふれる歯科医院を創ることです。「相手への感謝の気持ちを忘れない」、これは人間関係を築いていくうえでの基本だと思っています。この気持ちがあれば、治療も経営もうまくいくと思います。

患者さんの層やどういった治療が多いのかを教えていただけますか。

 40代から60代の女性の患者さんが多く来院されています。治療内容は多岐に渡りますが、主にインプラント治療や自費の入れ歯治療、審美的な治療を求めていらっしゃる方が多いです。40代から60代の女性は「歯をきれいにしたい」、「きちんと噛めるようになりたい」という強い思いを持っていらっしゃるので、精密な治療が求められます。
 父が入れ歯治療に長けていたこともあり、私も自然と入れ歯治療の知識や技術を身につけることができました。患者さんの高い要求に応えるという点で、これまでの経験や勉強が活かされていると思います。入れ歯治療を学ぶうちに、その流れでインプラント治療や審美的な治療に興味を持ち、勉強と経験を積みました。お蔭様で、遠方から治療を受けに来てくださる患者さんも増えました。

インプラント治療や自費治療についてはどのようにお考えですか。

 歯を失われた患者さんに対しては、天然歯と同じように噛めて、周りの歯も健康に保てるインプラント治療は最適です。特に、周りの歯を傷つけないという点はかなり重要です。ただ、費用がかかる治療になるので、無理に勧めることはしません。患者さんの口腔内の状況やご予算などの全てを考慮して治療方針を決定しています。インプラント治療に恐怖感や抵抗がある方、費用のご都合がつかない方には、ブリッジができる場合はブリッジ、ブリッジができない場合は精密義歯を提供しています。精密義歯は保険の入れ歯と比較すると、審美性、丈夫さが格段に高いです。また、義歯の吸着の良い上顎には精密義歯、下顎にはインプラントといったような治療をご提案させていただく場合もよくあります。

インプラント治療はどのような過程で進められるのですか。

 当院では、インプラント治療の場合、初診の時間を1時間取ります。そこで患者さんの悩みや思いをしっかり聞かせていただきます。そして、その話と検査結果をもとに、後日、治療方法を提示し、患者さんが納得いくまでカウンセリングを行います。提案した方法を患者さんにじっくり考えていただいて、患者さんがインプラントに対して不安を感じておられる場合は別の方法も提案致します。決して無理強いすることなく、患者さんの意思を尊重しています。そこで納得していただけたら、治療を開始します。
 治療方針が決定した後は安全性を高めるためにCT上でインプラントポジションのシミュレーションを重ねて手術に入ります。また、インプラント埋入時には必ずサージカルガイドを作成します。この器具を使うことによって、インプラントを埋入する角度、深さを正確に決定することができます。このようにして、間違いが起きる可能性を限りなく低くしています。費用はかかりますが、安全に施術するために有効な方法です。もちろん、環境だけ整えても質の高い施術はできないので、インプラントの勉強会に頻繁に参加し、進化する技術を常に吸収するようにしています。

松年歯科クリニックには多くの管理栄養士の方が在籍されていますが、理由や目的を教えてください。

 当院のスタッフは歯科医師、歯科衛生士、管理栄養士の3職種で構成されています。管理栄養士には食育などの集団栄養指導を行ってもらい、患者さんに歯への関心を高めてもらっています。今後は患者さんへの個別の栄養指導も行っていく予定です。そうすることによって、患者さんも、歯科医院も、管理栄養士もモチベーションが上がり、高水準の歯科医療を行える歯科医院に成長していくと期待しています。

院長が目指す歯科医療について、教えてください。

 私が目指す歯科医療は精度の高い歯科治療を提供することです。ほかの歯科医院での治療に納得されずに当院に来院される方も多くおられます。当院に期待を持って来ていただいた患者さんのためにも満足を得る技術を提供する必要があります。そのためにはやはり学び続けなくてはならないと思っています。

増患対策

増患対策について、お聞かせください。

 基本的には接遇と治療技術ですが、当院の特徴としては託児を行っていることです。待合室で一人で待つことが困難なお子さんは当院2階の託児スペースで保育士がお預かりしています。事前にお電話でご予約をいただくことが前提ですが、好評をいただいていますね。託児を導入する前に一度、お母さんのおなかの上に赤ちゃんを寝かせて治療をしたことがあるのですが、私としては満足いく治療ができなかったのです。私自身も子どもがいますので、お子さん連れの方のお気持ちはよく分かります。保育士がきちんとお子さんをみていますので、安心してゆったりした気持ちで、治療を受けていただきたいと思っています。

教育プログラム・スタッフ教育

「松年歯科クリニック」で勤務すれば、保険治療から自費治療まで学べますか。

 私は入れ歯は父親から学び、インプラントでは日本屈指の技術を持つ先生から今でも学んでいます。インプラントと義歯を組み合わせた全顎治療が当院の特徴であり、強みです。とは言っても、初めて来院いただく患者さんも多数おられますので、一般、小児、審美、予防治療なども行っていますし、勤務医の方にはこのあたりの分野から臨床経験を積んでいただき、ステップアップとともに義歯やインプラントの勉強をしていただきます。

しっかりとした教育プログラムがあることが特徴だと思いますが、具体的に教えてもらえますか。

 当院では新人ドクター教育プログラムをもとに、一つずつ確実にスキルを習得していただく流れを作っています。研修が終わったり、保険治療がさらにできるようになりたい若手歯科医師には先輩歯科医師がCR充填やインレー形成、根管治療などの保険治療を丁寧に指導します。ある程度、治療ができるようになると、患者さん一人に対して1回30分から60分の枠で、治療を行ってもらいます。経験の浅い歯科医師であれば、治療法について、これで正しいのだろうかという不安を持つこともあります。当院ではそのために症例検討会を開き、先輩歯科医師の意見をもらったり、指導を受けられる場を設けています。インプラントについては学会や勉強会への参加を通して学んでいきます。矯正に関しては専門医による院内勉強会を開催しているので、普段は聞けないことや受け持ちの患者さんの症例相談をすることができます。

勤務医の先生や歯科衛生士さんはどのような勉強会に行かれているのですか。

 勤務医は自身のスキルに見合った勉強会に参加しています。インプラント学会、顎咬合学会、ジアズに参加することが多いですね。歯科衛生士に関しては、フリーランスの歯科衛生士さんに月一回、当院に来てもらい、指導してもらっています。また、臨床歯周病学会にも参加しています。

院長先生ご自身も多くの講習会などに参加されていますが、やはり生涯勉強は必要ですね。

 日々向上するために、課題は山積みです。ただ、課題の中身はステップアップするにつれて次々に変わっています。開業当初は「どうしたら患者さんに来院していただけるか」という悩みがありましたし、患者さんに来院していただけるようになったら、今度は「どうしたらスタッフと一致団結したチームを創ることができるか」といった組織的課題に変わっていきました。今は患者さん、働いてくれているスタッフさんたちに恵まれていることもあり、最近は「治療の価値をどのように患者さんに伝えるか」ということが課題になっています。その課題を解決するためにも、まずは自分から正しい技術を学び、実践し、一人一人が説得力のあるスキルを持たなくてはならないと感じています。

歯科医院の人間関係について、教えてください。食事会や社員旅行はありますか。

 一人暮らしのスタッフが多いので、スタッフ同士でよく食事会を開いています。歯科医院全体では新人歓迎会、バーベキュー大会、忘年会、送別会などを開催しています。旅行はありませんが、その分、忘年会のビンゴ大会や飲み会の費用にあてて、豪華にしています。当院では医療人としての人格を大事にしており、そのためかスタッフの連帯感があり、仲間意識も強いと思います。

今後の展開

今後の展開について、お聞かせください。

 技術と人柄、その両方がきちんとできている歯科医院になるのが理想です。そして、患者さんから「この歯科医院は違う」と一目置かれるような歯科医院づくりをしていこうと思っています。現状に甘んじることなく、常に挑戦していきたいですね。インプラント、精密義歯、審美治療を中心に、これからも丁寧な治療を心がけ、歯科医師と患者さんが互いを思いやれる、笑顔のあふれる歯科医院にしていきたいと思います。

後輩へのアドバイス

転職を検討されている歯科医師の方に向けて一言お願いします。

 人生の大切な時間をともに過ごすスタッフには遣り甲斐のある仕事を通して、一緒に喜びを分かち合ったり、患者さんや当院のスタッフとの交流を通じて、多くのことを学び、自身の可能性を積極的に広げてもらいたいと思っています。 5年後、ご自身の人生を振り返ったときに、成長に気づけたり、大切な仲間を作れたと実感できるような素晴らしい人生のためのお手伝いができたらと願っています。私たちは「皆で感謝の気持ちを持ち、ともに働くことを喜び合いたい」という気持ちは誰にも負けません。ご自身の力を「松年歯科クリニック」で存分に発揮したいと思ってくださる方と一緒に働きたいです。

開業を考えておられる歯科医師の方に向けてのアドバイスをお願いします。

 これからの日本は人口減少といった、今まで我々が経験したことのないような出来事が起こるなど、不安の多い時代になります。しかし、どんなときでも歯科医師に求められることは「良質な歯科医療の提供」だと思います。私が考える「良質な歯科医療」とは治療技術の向上もさることながら、患者さんの話によく耳を傾けることや、スタッフが生き生きと自分らしく活躍できる場を提供することも含まれます。これからは今まで以上にそういったことがとても大事になってくるでしょう。歯の不具合で困っている患者さんはまだ多くいらっしゃり、情熱のある歯科医師を探されています。したがって、やるべきことをやっていれば、どんな時代でも必要としてくれる患者さんはいます。そんな患者さんの期待に応えられる歯科医師を目指して頑張りましょう。