歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する理事長から学ぶ~

医療法人 志結会 おざき歯科医院 理事長 尾崎 亘弘

医療法人 志結会 おざき歯科医院 外観

 大阪府貝塚市は大阪府泉南地域に位置し、貝塚御坊願泉寺の寺内町を中心に発展してきた。かつて「東洋の魔女」と呼ばれた日紡貝塚女子バレーボールチームの本拠地であったことから、貝塚市では「バレーボールのまち」を推進している。 おざき歯科医院は「昔の貝ジャス」こと、イオン貝塚店の1階に入居している歯科医院である。理事長の「生まれ育った泉州から歯周病をなくしたい」の願いのもと、郊外型の歯科医療を行っている。 今月はおざき歯科医院の尾崎亘弘理事長にお話を伺った。

医療法人 志結会 おざき歯科医院 尾崎 亘弘 理事長

医療法人 志結会 おざき歯科医院 理事長 尾崎 亘弘

プロフィール

理事長 尾崎 亘弘
1981年 大阪府生まれ
2007年 東京歯科大学 卒業
2008年 大阪大学歯学部附属病院研修歯科医 修了
2012年 大阪大学大学院 修了
2012年 大阪大学歯学部附属病院 勤務
2013年 大阪府泉南郡熊取町の歯科医院 勤務
2015年 おざき歯科医院 開設
2017年 医療法人志結会 設立 

  • 【学会 他】
  • 日本歯周病学会 認定医
  • 日本歯科保存学会 専門医
  • 日本歯内療法学会
  • 日本口腔インプラント学会
  • 日本顎咬合学会  かみ合わせ認定医
  • 日本歯科審美学会
  • 日本矯正歯科学会
  • KISW
  • 大阪大学歯学部招聘教員
  • 東京歯科大学大阪支部同窓会 理事
  • 日本歯科医師会
  • 大阪府歯科医師会
  • 貝塚市歯科医師会
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開業に至るまで

■歯科医師を目指されたきっかけを教えてください。

 父は高校の教員をしており、私の家は歯科とは全く関係がありませんでした。ただ親戚の中には医療系に進む者が多く、私も医療系に対して、ぼんやりとした興味はありました。もともと手先が器用で、色々なものを作ることが好きだったこともあり、父の勧めで精密な治療をする歯科という分野に興味を持ち、歯科医学の道に進むことになりました。今では父がこの道を進めてくれたことに本当に感謝しています。

■大学院で学ばれながら、非常勤勤務をなさったのですね。

 研修終了後に大学院に進みました。その間、週に1、2回歯科医院でアルバイトをしていたのです。アルバイト先はチェア3台のこじんまりした診療所から12台の大型診療所、ショッピングモール内の診療所や一戸建ての診療所、自分一人で治療を行う診療所もあれば、院長のアシスタントのみのところもありました。18時で終了する診療所もあれば、年中無休で22時まで診療しているクリニックもありました。色々な歯科医院のスタイルを経験できたことがとてもいい経験になりましたね。今、勤務先を考えられている方には多くの歯科医院の見学をすることをお勧めします。様々な歯科医院やそこの院長、理事長を知っておくことは将来、とても役に立ちます。

■就職先を選ばれた理由をお聞かせください。

 理由は3つあります。院長を尊敬できたこと、将来、開業したい立地条件と似ていること、「この歯科医院のために頑張れる」と思えたことです。一つ目については、その院長の哲学を知り、人生観を学びたいと思いました。知識や技術はいくらでもどうやってでも学ぶことができますが、歯科医師としての人生哲学や診療に対する姿勢は直接触れることでしか学べないからです。院長は「すぐ実行」、「自分のためではなく、人に投資する」、「WIN-WINを考える」と口癖のようにおっしゃっており、それを体現している姿が勉強になりました。

二つ目については自分のやりたい治療ができるかどうかを考えることが大切です。また、三つ目として、ただ給料がもらえればいいという程度なら不十分です。自分が開業することをシミュレーションできること、院内の取り組みやメンバーとの関わり合いができることが望ましいです。開業すると、治療だけでなく、歯科医院システムの構築やメンバーマネジメント、資金繰りなど、多くの課題が待ち受けているからです。治療だけでなく、それ以上の関わりが取れる人の方が開業の成功率が確実に上がります。

■開業までの準備として、どのようなことをなさったのですか。

 大学に入学するときから開業を明確に決めていました。そして、自分のやりたいことをリストアップし、それを実現するためには卒後10年、35歳までに開業しようと考えていました。大学5年生のときに開業までの必要項目を自分なりに挙げ、臨床項目に関してはGPを安心して行えること、専門医を取得すること、インプラント100時間コースを受けることを目標に据えました。

経営に関しては実務を積む機会が少なかったので、一般経営学やMBA、歯科医院経営、人材育成、成功哲学に関係する書籍を100冊読んでエッセンスをまとめ、実際に使えることをまとめていくことにしました。

■開業しようと決断されたときのことをお聞かせください。

 イオン貝塚店の1階で、駐車場に面したテナントで開業しようと決めたのはその立地で歯科医院が成功する明確なビジョンが見えたからです。開業まではほぼ2年間、4市1町、何十軒という物件を見学に行き、何十軒となく、医療圏調査をしました。

私は一般的な治療、高度な治療、インプラント治療、そして何より歯周外科治療をしていくことのほか、山形県酒田市の日吉歯科診療所の熊谷崇理事長が実践されている、歯科衛生士用のチェアがある歯科医院にしたかったのです。いわゆる郊外型の歯科医院が私のビジョンでした。

■開業地を探すにあたって、どういうところにこだわりを持たれていましたか。

 生まれ育った地に恩返しをしたかったので、場所は南大阪の泉州と決めていました。物件探しの条件として、視認性が高い、場所を一言で伝えることができる、駐車スペースが十分確保できる、生活道路沿い、近接道路の交通量が多い、都市計画で再開発される予定がないことを意識していましたので、イオンという多くの方が訪れることのできる場所を選択しました。

歯科医院のイメージカラーはオレンジ、ブラウン、ホワイトにしたいと決めていました。そして、自分の友人や知人が安心して通えることを目指し、自分の理想となる「ビジョナリークリニック」を創りたいと考えていました。

経営理念

■経営理念を教えてください。

「私達はプロフェッショナルチームとして患者様の心に寄り添う歯科治療を提供し一生の笑顔と健康を守ります」
このスローガンを朝礼で唱和しています。この言葉には多くの意味が含まれています。 「私達は」とは、歯科医師だけでなく、全職種メンバーが一丸となって患者さんに臨むということ。 「患者様の心に寄り添う歯科治療」とは、歯科医師の自己満足の治療ではなく、本当に患者さんのためになる医療を追求するということ。
「一生の」とは、そのときだけの治療をするのではないということ。
「笑顔と健康を守る」とは、ただ噛めるだけではく、審美性にも優れ、自分の口元に自信が持てて笑顔があふれ、健康に生きること。
これが当院の経営理念です。

■先生ご自身のスキルアップに対する姿勢を教えてください。

休みの日は「勉強」と「家族」との時間を半分ずつ分けるようにしています。現在、技術系の年間コースに1つとマネジメント系のコースに1つ行くことを自分に義務づけています。一つのスタディグループになるべく偏りすぎないようにしています。歯科医師という仕事は治療技術をどれだけ患者さんに提供できるのかが大事ですが、理事長や院長という立場としては経営に関して学ぶことも同様に大切だと考えています。

■スタッフ教育についてはどのように考えられていますか。

一人一人の成長が歯科医院の成長ですので、スタッフ教育には非常に力を入れています。ただ歯科治療ができるようになるのではなく、社会人としての成長を積めるようにと意識しています。当法人が熱意ある若者の成長の場であってほしいと心から願っていますので、このスタッフ教育が当法人の一番の強みであり、魅力だと自負しています。

■スタッフ採用の際に着目される点を教えてください。

誠実さを見ています。技術、知識、態度など、色々な観点がありますが、本当に大切な能力はそんなに多くはありません。本質的に大切なのは「誠実さ」です。この能力があれば、患者さんのため、歯科医院のため、自身の成長のために、時間と気持ちを使える人だと思うからです。そのほかは素直さ、プラス発想、勉強好き、積極性を見ていますね。したがって、採用しない人は素直でない人ですね。

■具体的なビジョンを教えてください。

常に学会レベルの医学知識を歯科医院で共有し、エビデンスのある治療を心がけていきたいです。また、スタディグループや学会で歯科医院から毎年発表していけるような知識レベルを保ちたいとも思っています。

これからは地域情報誌に発信したり、地域組織活動に積極的に参加するなど、一歯科医院に留まることなく、地域の中での活動も積極的に行う必要があると思っています。あくまでも地域と共存していく必要がありますからね。

また、歯科医院の組織化を図り、院内接遇研修を積極的に行い、外部評価を取り入れるなど、歯科医院だけではなく、一企業として社会的に認められる組織にしていきたいとも考えています。歯科医師の研修施設、日本歯周病学会認定施設、スタディグループが集える歯科医院、歯科衛生士学校の併設、歯科医療従事者になりたいと思える地域環境作りなど、やりたいことは山ほどあります。

■では、転職をされる方へのアドバイスをお願いします。

二つのことを意識してください。一つ目は何をそこで得られるのか、そして二つ目は自分がその歯科医院でどんなことに貢献できるかということです。「何を得られるのか」ということは多くの方が意識していますが、本当に大切なのは二つ目です。将来、開業を考えているのであれば、そこを自分の歯科医院だと思って、一生懸命になれるところを探したらいいです。つまり、歯科医院のため、患者さんのため、自分の成長のために、自分の力を捧げるに値すると思える歯科医院を選ぶことです。そして、そこの院長が自分のなりたい姿だと思えるかどうかということです。

一生勤務医でと考えておられる方はその歯科医院が自分にとって居心地がいいかどうか、自分のしたいことができる歯科医院か、院長が本当に自分のことを理解してくれているか、そのあたりを考えるといいでしょう。分院長のように、歯科医院に深く携われるポジションに就くことをお勧めします。

■開業に向けてのアドバイスをお願いします。

現在は開業するのは大変な時代と言われています。しかし、しっかりとした技術、知識、考えを持って開業している歯科医師は患者さんからきちんと支持されています。開業する時期を3年から5年単位で設定し、それまでに準備をしっかりすることです。技術はもちろんですが、リーダーシップ、マネジメント、マーケティングの経験を十分に積むことも大切です。具体的には、自分への紹介患者さんが出てきたとき、基礎的な知識と技術が身についたと自分自身で納得できたとき、分院長経験などで、歯科医院のために貢献できる働き方ができるようになったときなど、こういう経験ができて自信がついたら、開業の時期かもしれないですね。

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