歯科経営者に聴く(後編)

~第一線で活躍する理事長から学ぶ~

 神奈川県藤沢市は湘南地域の中心都市であり、観光地としても、多くの大学がキャンパスを構える文教都市としても魅力のある街である。
湘南食サポート歯科はその藤沢市で「食べること」の喜びと楽しさを感じてもらおうと訪問歯科診療に力を入れている歯科医院である。

 今月は先月に引き続き、湘南食サポート歯科の三幣利克理事長にお話を伺った。

医療法人社団 若葉会 湘南食サポート歯科 三幣 利克 理事長

三幣 利克 理事長

【プロフィール】

  • 1974年東京都 生まれ
  • 1999年東京歯科大学 卒業
  • 2007年コンパスデンタルクリニック赤羽 開設
  • 2009年医療法人社団コンパス理事長 就任
  • 2016年湘南食サポート歯科 入職
  • 2017年医療法人社団若葉会 理事長に就任

【学会 他】

  • 日本老年歯科医学会
  • 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
  • 日本静脈経腸栄養学会
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経営理念

経営理念をお聞かせください。

私たち湘南食サポート歯科は、人の「“いきる”に寄り添い、希望と喜びを届ける」ことを目的として存在しているクリニックです。そのためには、受療者には“その人らしく”幸せな生活を営んでいただきたいと思いますし、その支援を実現するためには、私たち一人ひとりが“自分らしく”幸せに働くことが大切なのかなと思っています。

診療方針

診療方針をお聞かせください。

プロフェッショナルとして、私たちに対するリクエストに正面から向き合うことが大切だと考えています。
在宅歯科医療の場合は患者さんご本人の「食べたい」、患者さんのご家族の「食べさせたい」、それを支援するリクエストが多いのですが、どうしてそのリクエストに至ったのか、なぜ我々への依頼に至ったのか、どうなったら良いなと思うのか、また、どうなったら嫌だなとか…など、言葉にできていない思いを探します。
そこを掘り下げ、最適解を見つけようとするのですが、人生の最終章の旅立ちを前にした在宅医療は患者さんのためのものか、ご家族のためのものか、我々はどちらに存在するべきなのか、どのような立ち居振る舞いをすべきなのか、最適解を出すのは簡単ではないと思っています。
「なぜ」が分かっていないと、たとえば我々が歯科医療サービスを行ったとしても患者さんの真の要求にお届けできていない可能性があるかもしれません。そのため、「なぜ」の合意形成を通して、信頼関係を深めることが大切だと思っています。
今のところ、私たちには「なぜ」の合意形成しやすい、明確で、かつ思いのこもったリクエストをいただくことが多いので、とてもやりがいを感じながら働くことができています。

患者さんの層はいかがですか。

在宅歯科医療を得意とする歯科医療機関ですから、高齢の方が多いのは事実ですが、患者さんの中には難病の子どもさんや闘病中の働き盛り世代の方もいます。最高齢の方は106歳ですね。
今の日本にはアクティブシニアが大勢いらっしゃるわけですが、要介護高齢者の方を多く診ていますと、高齢者はみんな要介護状態なんじゃないかって勘違いしやすくなりますね(笑)。

外来に関しては子どもさんから高齢の方まで、幅広い年齢層になっています。

自費と保険の割合について、お聞かせください。

基本的に保険診療です。もちろんご希望に応じて自費対応は可能ですが(笑)。自費は金属床義歯や審美補綴のリクエストをたまにいただくくらいでしょうか。
あと、保険請求算定回数上限を超える濃密な保健指導のリクエストに自費で対応させていただいたこともありましたかね。

増患対策

どのような増患対策を行っていらっしゃいますか。

地域連携担当者が地域の医療介護関連者と「顔の見える関係」になれていることが、結果的に増患要素の中心となっている気がしています。
もちろん食サポート歯科に所属する歯科医師の先生がた、歯科衛生士さんたち、管理栄養士さん、受付事務のスタッフさんたちも各方面から非常に評判がよく、増刊要因の大きな要素となっているのを感じています。
日々の活動の中で私たちが意識していることは、患者さんやご家族、介護の担当者の方々からのご要望をしっかり聞いたうえで受け付けを行い、私どもで受けられるものは受け、必要に応じて他の医療機関への連携を取ったりもしています。このような取り組みが実を結び、開業当初12人だった患者さんが3年で月間750人を支えるクリニックに成長できているのかなと感じています。

しかし、私たちは在宅療養支援診療所Ⅰという施設基準なのですが、総診料数における外来診療数5%を堅持し続けねばなりません。
訪問診療のリクエストがあっても外来診療数がボトルネックになってしまってキャッチしきれなくなっている状況です。ですので、地域のリクエストに向き合うために食サポスタッフを充実させていけたらいいなと思っています。

スタッフ教育

スタッフ教育について、お聞かせください。

毎日朝起きて、出勤して、診療や保健指導に向き合って、組織内外でチーム医療を実践して、終業したらそれぞれの時間を過ごす。そんな日々を過ごすことが大切なのかなと思っています。
日々の仕事を通して誰かと誰かが触れ合えば、常に公私含めた情報交換が行われますし、症例事例検討なども各々が日々自然に行っているように見えています。

現在は毎日4チームが稼働していますが、担当エリアや習熟度や得手不得手などは融通しあえるフォロー体制をどうするのかなど、比較的既成概念にとらわれない自由で密なコミュニケーションが取れているような気がしています。

歯科衛生士、歯科助手への教育はいかがですか。

多くの歯科医院では院長先生という大黒柱がいて、歯科衛生士さんや歯科助手さんは院長先生を中心とした指示系統の中で働いてきた経験が蓄積されているのかなと感じています。
個人的には仕事はやらされるよりも自らやる方が圧倒的に楽しいと感じちゃっているので、「誰かが指示する」のではなく、「誰かに相談する」という意識構築を広げていくことを心掛けていました。
当初は「何で院長が決めてくれないのですか」と言われたこともあり、少し大変でした(笑)。働くスタッフにとって職場は大切です。
個人的には目標やノルマを設定していますが、働くスタッフに対して、私が目標やノルマを設定することはしません。あくまでも目標はプライベートなものだと思っていますので(笑)。
もしもスタッフそれぞれの目標を知る機会に恵まれたなら、私自身は支援者・応援者の立場でありたいなと思っています。そのために、スタッフに対してついつい問いを投げかけてしまう癖ができちゃいました。
でも、そうしているとスタッフ個々人の趣味嗜好や得手不得手がなんとなくわかるようになり、スタッフのことがより好きになっていきます(笑)。

かつては試行錯誤しましたが、今ではスタッフを心から信じられる自分になっていることを感じています。
スタッフが私に質問してくることは少なくなり、私の方がスタッフに質問しているシチュエーションが多い気がしますね(笑)。
何よりスタッフがいい顔をして仕事をしているのが本当に嬉しいです。

今後の展開

今後の展開について、お聞かせください。

私を含めて4人の歯科医師がそれぞれのチームを作って稼働させているのですが、日曜日から土曜日まで全曜日4チームという体制が叶ったらいいなと考えています。
現状のクリニック環境だとその辺が限界だと感じていますので、今の環境下で、終日4チーム体制の経営できたのちには、クリニックを拡大するのか、分院を展開するのかを検討しなければいけないのかなと思っています。
個人的には、これをしたい、あれをしたいという希望はありませんが、食サポート歯科やスタッフの皆さんのファンを多く作っていけたらいいなと思っています。
そのためには、経済的原動力は大切なので、医院の経営が正しく回っていく状態にしたいですね。

開業に向けてのアドバイス

開業に向けてのアドバイスをお願いします。

たった一度きり与えられたこの人生を、どのように過ごしてどのように終えたいのか。自分の“いのち”をどう使いたいか。月並みですが、人生は選択の連続ですね(笑)。
小さなことから大きなこと(開業とか)まで、つまりは「やる」か「やらない」かの選択の連続。どちらを選択してもいいと思いますが、やったからこそわかることってあると思っています。
「やる」と成長できますよ(笑)。私は「迷っているぐらいなら、やってみたら(開業してみたら)。」という立場です。
何事もご縁ですので、ご縁があれば、それを活かしてやってみてもいいかもしれませんね。
開業したからこそ、積み上がっていく理解もあります。機会が失われないうちに一歩目を早くして、どう転ぶのかは次の展開次第で考えていけばいいんじゃないかなと思っています。

プライベート

プライベートの時間はどんなことをして過ごしていらっしゃいますか。

スポーツが好きで、小学生の頃は野球もしていましたし、水泳ではジュニアオリンピックで入賞したこともあります。
中学生ではバドミントン、高校生ではバレーボールに打ち込み、大学ではまた水泳を選びました。
しかし、最近スポーツは観戦ばかりです(笑)。プロ野球では北海道日本ハムファイターズが好きで、東京ドームなどでの試合を見に行ったりしています。プロスポーツチームの運営や選手の鍛えられたプレーに魅了されています。
小学生の頃は所沢市に住んでいたので、周りは皆、西武ライオンズファンだったのですが、私はライオンズと対局にいた弱小ファイターズのファンになりました(笑)。

また、旅行も趣味です。何人かの友人が沖縄で開業しているので、訪ねていってオリオンビールや泡盛を飲んだりしています。
大型連休があると、家族と海外旅行に行っています。今年のゴールデンウィークはイタリアに行ってきました。

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