歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

宇田川歯科医院 宇田川義朗 院長

JR総武線の小岩駅にある宇田川歯科医院。定期的予防管理で来院する患者も多い。東京都江戸川区出身の宇田川先生は、長崎大学歯学部に在学中、PMTCの生みの親であり、世界的に著名なアクセルソン先生の講演を聞いたことで予防歯科の道を目指そうと決めた。
平成13年4月2日、宇田川歯科医院を開業。まもなく丸4年を迎える宇田川歯科医院院長・宇田川先生にお話を伺った。

宇田川歯科医院 宇田川院長

宇田川歯科医院 宇田川院長

予防歯科との出会い

宇田川歯科医院宇田川院長は、昭和38年東京都の小岩生まれ。平成2年に長崎大学歯学部を卒業後、そのまま長崎に残って約7年間勤務した。東京に戻ると、医療法人の歯科医院に2年、予防をメインにした今村歯科医院に2年間勤務した。合計11年間の勤務医生活を経て、平成13年に予防をベースにおいた宇田川歯科医院を地元小岩に開業した。

予防歯科の道を選んだきっかけを伺ってみた。

将来どういう歯医者になろうかと迷っていた歯学部6年生のときです。予防歯科の世界的な第一人者・アクセルソン先生の講演を長崎で聞くチャンスがありました。その講演を聞いたとき「削って詰める時代は終わったんだ」と衝撃を受けました。私に与えられるライセンスは、来院される方をむし歯や歯周病にかからないようにすることと、公衆衛生活動を通じて地域住民の方の健康をサポートをすることなのだと思いました。

大学卒業から開業するまでの経緯は?

長崎の歯科医院で、もうすでに予防を実践していた常岡歯科診療所に勤務できたのが、今の私の基礎となりました。常岡先生に「主役は患者さん」という予防的考えを教えていただきました。長崎で7年間勤めたあと実家のある東京に戻った私は、削る・詰めるという通常の診療を行う歯科医院に勤務しました。当時は今ほど予防がメインではなく、予防を実践している歯科医院を探すことができなかったのです。そこで予防に力を入れている先生を探そうと、アンテナを張っていました。その努力が実り、長崎でお会いしたことのあった今村先生の所属する、予防のスタディグループに参加することができました。さらに今村歯科医院で2年間働くこともでき、オフィスでの予防歯科を学ぶことができました。

スタディグループで知り合った先生は、皆さんお手本にしたいと思える方でした。私はその先生方の診療を見学できたので幸せでした。予防中心のスタディグループに参加できた影響は大きかったですね。そのグループは、東京で予防歯科を行っていた数件の歯科医院が集まったもので、日本ヘルスケア歯科研究会が出来上がる以前の話です。

開業医として

開業当初から現在にいたるまでについてはどうだろうか。

宇田川歯科医院 ハード面は開業当初からすべて整えました。最初はユニット3台で始めて現在4台。各ユニットにコンピューターを設置しました。当時、出回り始めた一眼レフタイプのデジタルカメラで、初診時にすべての患者さんの口腔内写真を撮影して、その場でコンピューターに取り込んで説明することにしました。お口の中の状況を、モニター上で説明を受けることによって、患者さんも安心されますし、理解も深まりますよね。そしてまずは患者さんの主訴を解決します。その後落ち着いたところで、さまざまな資料を使って「こうすればお口全体が、より健康になれますよ」と、予防プログラムを提案しております。予防歯科ではある程度ハードとシステムが、そしてソフトとしての予防の考え方が成功の鍵となっていると思います。

スタッフについて伺ってみた。

スタッフは歯科医師が常勤の私、代診の先生1名、歯科衛生士3名、受付1名、そしてパートのバックアップスタッフが2名います。

バックアップスタッフがいることがスタッフ構成の特徴かもしれません。歯科衛生士は歯科衛生士の業務に専念してもらいたいので、毎朝行うユニットの清掃とか、消毒・滅菌等の作業は、専任のバックアップスタッフに担当してもらっています。午前勤務のバックアップスタッフは、朝8時半にやってきて、ユニットの清掃、消毒・滅菌等から、受付、患者さんの誘導までやっていただいています。午後のバックアップスタッフは、午後4時から8時まで消毒・滅菌業務をずっとやってもらっています。たんだんと患者さんが増えてきたとき、歯科医師は診療に、歯科衛生士はスケーリングや予防処置に専念して欲しいという考えから、バックアップスタッフ体制にしました。歯科衛生士は掃除をするより衛生士カルテ(業務記録)を書いてもらうほうが、より患者さんのためになると思います。そのライセンスを有効に使わないと、限られたマンパワーで予防的な医院を運営するのは難しいと思います。

院長先生の診療方針について伺ってみた。

宇田川歯科医院当院の目標は「来院される方が、よりハッピーな人生を送れること」ですし、主役は来院者だと思っています。主役の来院者に自分の健康を守れるようになっていただき、その来院者の健康のお手伝いをするのが歯科医院なのだ、という考え方です。私たちは来院者のサポーターなのです。

イメージ的には、健康な方がきてくれる歯科医院を目指しています。(初発予防)。もちろん欠損補綴もやりますが、こういう患者さんの場合は処置が終わったら、再発しないようにサポートしていきたいですね。(再発予防)。来院者が日常生活の中で自分の歯をケアする方法や、またどうやったらケアを続けていけるのかを考えて、その方にマッチしたむし歯予防や歯周病予防を提案したいと思っております。

また予防歯科の考え方について、私自身が熱く語ることも大事なのですが、残念ながら患者さん全員にはとても語りきれません。そこで歯科衛生士にコンセプトを理解して、語ってもらっています。歯科医師と歯科衛生士とのチーム医療であり、それが当院の特徴のひとつである、歯科衛生士の担当制につながっています。チーム医療や来院者に予防を理解して頂くコミュニケーション能力の共有と積み重ねが、予防で来院される患者さんの定着につながっていると思います。

まもなく開業丸4年を迎えるが、患者数はどうだろうか。

月400名、1日35名~45名位です。今の時代は必死にがんばっても現状維持がやっとです。勉強やほかの努力をしないと、患者数は右肩上がりにならないですね。自己研鑽や経営に対する工夫をしなければ、どんどん下がってしまいます。そこで私は開業する前から、いろいろな人とのつながりや予防ベースのことを考えてきました。 初診で来た患者さんの診療が終わり、歯はもう痛くはないけれど、むし歯や歯周病予防を考えて、定期的に来てくださる来院者数を増やしていくことが大切と思っております。初診患者さんの30%がメインテナンスに来院してくだされば、トータルの来院者数は右肩上がりになるのでしょう。しかし現状は400名と横這いです。患者さんがまた来院したいと思う歯科医院になれるように、問題点を見つけて、ひとつひとつ解決していきたいと思います。

増患対策以外に今、困っていることを伺ってみた。

プライベートの時間はどんなことをして過ごしていらっしゃいますか。

子どもがコミュニケーションの難しさでしょうか。こうすれば来院者がハッピーになれるとか、スタッフがこう動いてくれたら、来院者がもっと理解してくれると思っても、それが相手にうまく伝わらなくて・・・・・・。来院者に対する説明よりも、特にスタッフとのコミュニケーションの方が大変です。お互いの気持ちのずれが原因で、退職していったスタッフもいました。人を動かすのは本当に難しいですね。これは実践あるのみで、今も学んでいる最中です。

忙しい毎日を過ごす先生のご趣味は?

宇田川歯科医院 宇田川義朗 院長学生時代からウインドサーフィンを20年以上続けています。レースが好きなので、3月と11月にサイパンで行われるウインドサーフィンの大会に、年に1回は出場したいと思っております。今年は3月に参加する予定で、そのときは妻と2人の子ども、小学5年の長女と小学2年の長男も連れていきます。 開業してからは、本当に時間が足りないですね。まだまだ開業4年なので、診療が7時に終わっても、カルテチェックやほかの業務があるので、午後11時より前にはなかなか帰れません。また休診日の日曜日や木曜日も、講習会やスタディグループに参加しているので、家族と過ごす時間が本当にとれませんね。時間をもっと有効に使いたいと思っております。

歯科経営についてのアドバイス

私は皆様に歯科経営を語れるほど自院をうまく運営できてはおりません。毎日を必死に過ごしております。その中で何とかやっていけるのも、私の周りにすばらしい先輩、仲間の先生方がいて、予防という共通の目標を目指していけるからだと思います。つらいとき、困ったときにどれだけ助けられたかわかりません。共通の目標に向かった、何でも語れるスタディグループなどの「仲間づくり」が経営に役立つかもしれません。