歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

医療法人社団江森会 平田歯科医院 平田 利一 理事長

横浜市内に3つの歯科医院を展開する医療法人社団 江森会。理事長の平田利一先生は親子代々歯科の開業医という家に生まれ育ち、「四代目」だと言う。幼少の頃から地域に溶け込んだ診療を続けてきた両親を見てきた平田理事長が目指しているのは、しっかりした技術に裏打ちされながらも、患者さんたちと楽しく近所付き合いできるような医療だ。
横浜市のJR戸塚駅前にある本院「平田歯科医院」にて、お話を伺った。

医療法人社団江森会 平田歯科医院 理事長 平田利一 先生

医療法人社団江森会 平田歯科医院 平田 利一 理事長

開業まで

医療法人社団江森会 平田歯科医院平田理事長は、1955年神奈川県横浜市生まれ。両親は市内の鶴見で歯科開業医を営んでいた。親戚の内科医も含め、「白衣に囲まれて育った」理事長は、ごく自然に父親が非常勤講師を勤めていた神奈川歯科大学に進学。自らも歯科医への道を選んだ。
「学生時代は指導医の先生たちからよくしてもらいましたよ。海に遊びに行ったり、食事に連れて行ってもらったり。歯科の事にしても、学校外で色々な事を教わった気がします。教科書に載っていないような本音の部分で。 特にクラブ活動のような事はしていなかったけど、楽しかったですね。実習なども時間に追われる面はあったけど、自由な時間、という感じで」

「延岡に1年半ほど勤務した後、鶴見にある父の後輩の医院で4~5年働きました。その後、母親が倒れた事もあり、実家に戻り医院を手伝いました。何もかも一人で行い、最も忙しい時期でした」

診療方針

医療法人社団江森会 平田歯科医院 材料業者が持ってきてくれた話をきっかけに、横浜市戸塚区に1993年5月に平田歯科医院を開業した。開業資金は約3,000万円。内、約3分の1が自己資金。5年で借入金を返済する予定を立て、せっせと返済に励んだ所、開業から3年半で完済する事ができた。これで金融機関からも信頼され、横浜市瀬谷区に分院を出す際にもスムーズに融資が得られた。「最初の開業話も含め、人の縁が大切だと思います。人(スタッフ)が揃わなければ開業もできない訳ですし。その意味で私は人には恵まれてきたと思います」

そして最初の開業から約5年経ったとき、医療法人社団 江森会を設立、理事長に就任した。
平田理事長の経営方針を伺ってみた。

「まず何よりも患者さん自身を思いやりを持って観察する事です。処置している場所だけでなく、全身をね。痛そうだったら手を止める。ある程度の年齢の方で体調が悪そうだったら無理にその日に治療を行うのではなく、また今度にする、という柔軟な配慮も必要です。

患者さんは『自分がこんなに痛いのに術者が分かってくれていない』と思うとイライラするのです。だからこちらから『少し痛いですよ』『ちょっと苦いですよ』などと声を掛け、『患者さんの痛みを分かっている』という事を表現してあげるべきなのです。

歯科医師にも新しい患者さんに最初に会う時には自己紹介から始めるように言っています。やはり自分が患者だったらその方が嬉しいじゃないですか?普通の事ですよ。それを開口一番『ちょっと見せてください』ではダメなんですね。患者さんが自分より年上だったら言葉遣いも丁寧にすべきですしね。

歯科衛生士にも診療開始前に『患者さんの視線で(座って)ユニットをチェックする』ように求めます。高い所から見下ろすと、見逃してしまう汚れだってあるのです」

医療法人社団江森会 平田歯科医院 理事長 平田利一 先生「次にその地域に根ざした患者さんのニーズに対応する、合わせる事です。例えば、3軒目の分院『ひろデンタルクリニック』を出した横浜市中区では現役バリバリの企業や警察の職員の患者さんが多い地域です。ここで非常に大切な事は『時間厳守』です。もちろん患者さん側の直前キャンセルもあるのですが、だからと言って予め詰めて予約を入れてしまうと、忙しい患者さんを待たせる事になりかねません。だから多少余裕のある予約の取り方をします。数をこなそうとして変に欲張るよりも、その方が患者さんから信頼されるのです。その証拠に『ひろデンタルクリニック』では神奈川県警の方が職場内で当院を紹介してくれたり、コンテナ会社の社長さんが非常に懇意にしてくれ、広めてくれたりしています。

私が延岡勤務時代に見た『2回の診療で総義歯作成』というのも同じ事なのです。近い患者さんなら4回かけても良いのでしょうが、遠路はるばる来てくださる患者さんだからこそ、少ない回数で終わらせてあげたい訳です」

「そして技術に関しては、『最新の技術だけに目を向ける前に足固めをする』という事を大切にしています。せっかく高価な材料を使って治療しているのに、咬合調整を行っていない為に、痛い思いをしている患者さんも珍しくありません。それを調整も行わず放置して『その内慣れますよ』などと言うのは無責任です。当院では『今持っている技術で、できるだけの事はする』という考え方です。もちろん新しい技術を取り入れていく事は必要です。でもその前に『今できる事をしっかりやっているか?』と今一度振り返る事が大切だと思います」

今後の方向性

医療法人社団江森会 平田歯科医院「歯科の開業医が置かれている環境はますます厳しくなってきています。今までお話してきたように、ともかく『できるだけの事をする』という姿勢を大事にしていきたいと思います。自分の手に負えなければ、すぐに大学病院に対して紹介状を書く事だって立派な対応なのです。それをプライドが傷つくからと言って痛がる患者さんを放っておいて『経過観察しましょう』などというのはゴマカシに過ぎない場合だってあります。大切なのは、何が目の前にいる患者さんの為になるか、という事です。スタッフが良い雰囲気で協力し合い、その雰囲気が患者さんにも伝わっていく。そして患者さんとの関係もご近所付き合いのように温かいものにしていく。私はそんなやり方が好きなんですよね。 当院のポリシーは『予防に勝る治療なし』です。極端に言えばタービンの音がしない診療所が理想でもあるのです。もちろん現実的には無理ですけど」

求職者の方へのメッセージ

医療法人社団江森会 平田歯科医院「医院の勤務者は誰から給与をもらうのでしょうか?経営者からですか?私は『患者さんから』だと思います。患者さんに対して提供したサービスの対価なのです。この医院は患者さんの為の診療と医院経営の融合、言い換えれば『開業術』が学べる環境だと自負しています。 学ぶ姿勢を持った方には丁寧に教えます。 また外で勉強するのも良い事なのでどんどん講習会にも出てください。 『大学病院では(歯を)全て抜かなければいけない、と言われたのに先生の所で治したら3年半ももってるよ』などと言われたら嬉しくないですか?そういう事に嬉しさを感じる方であれば、一緒にやっていけるし、開業しても楽しめる方だと思います」

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