歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

医療法人社団榮内會 スマイルデンタルクリニック 内山雅夫理事長

医療法人社団 榮内會 スマイルデンタルクリニック

医療法人社団榮内會 スマイルデンタルクリニックは埼玉県所沢市にあり、最寄駅は西武新宿線の新所沢駅である。新所沢駅周辺は数多くの歯科医院が開業し、埼玉県でも有数の「激戦区」として知られている。しかし、スマイルデンタルクリニックには予防歯科をはじめ、インプラント治療などの高度治療や口臭専門治療といったユニークな治療を求めて、多くの患者さんが来院しているほか、若手歯科医師の教育の場にもなっている。2004年に現在地へ移転してきたばかりであるが、2011年末には現在地を拡張する形での新たな開業を目指す予定である。
今回は「しっかりした経営基盤のもと、生涯臨床歯科医師として地域医療に貢献したい」と語る、医療法人社団榮内會 スマイルデンタルクリニックの内山雅夫理事長にお話を伺った。

医療法人社団 榮内會 スマイルデンタルクリニック 内山 雅夫 理事長

医療法人社団榮内會 スマイルデンタルクリニック 内山雅夫理事長

プロフィール

  • 1959年 熊本県生まれ
  • 1985年 日本大学歯学部 卒業
  • 1985年 内山歯科医院 勤務
  • 1986年 内山歯科診療所 開設
  • 2002年 昭和大学医学部特別研究課程 終了 医学博士取得
  • 2004年 病院移転(所沢市松葉町)スマイルデンタルクリニック開設、SDCインプラントセンター開設
  • 2008年 医療法人社団榮内會 設立
  • 2009年 埼玉県歯科医師会 歯科保険功労者賞 授与
  • 【学会 他】
  • JIAPインプラント学会フェロー
  • 厚生労働省認定 臨床教育指導医
  • ITIインプラント認定医
  • USC 南カリフォルニア大学歯学部 客員研究員
  • 埼玉県障害者歯科相談医
  • 所沢市立北野小学校校医
  • 昭和大学医学部第1薬理学教室所属
  • 国際インプラント学会(ICOI:International Congress of Oral Implantologists)会員
  • 国際インプラント学会(AIAI:Academy of International Advanced Implantology)会員
  • 日本口腔インプラント学会 会員
  • 日本歯周病学会 会員
  • 日本顎咬合学会 会員
  • 日本先端技術研究所 会員
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【開業に至るまで】

■歯科医師を目指したきっかけをお聞かせください。

小学生の頃はパイロットに憧れていましたが、視力が悪かったので諦めざるをえなかったのですね。一方で、もの作りが好きでしたので、設計士もいいなと思っていました。ところが、4歳年上の兄が歯学部に入学し、歯科の世界が急に身近になりました。兄は私が高校生の頃に専門課程へと進みましたので、兄の部屋にあった模型や専門書を見ているうちに、私も歯学部に行こうと決心しました。

■大学時代のエピソードをお聞かせください。

歯科に興味を持って入学したので、真面目に勉強はしました。部活はテニス部に入っており、夏は真っ黒になって練習に励んでいましたし、アルバイトでテニスクラブのアシスタントインストラクターもしていました。
今、実感している教えることの難しさを学生のときから経験していたわけですね。ただ、当時は今のような気持ちではなく、楽しくやっていたように思います(笑)。それでも、学校では学べなかったテニススクールでの接客の基本はどこか根底に残っていますね。

■就職先として、内山歯科医院を選ばれた理由をお聞かせください。

内山歯科医院は兄が所沢市で開業した歯科医院です。私としては歯周病に興味があり、先輩の勧めもあって、大学に残ることを考えていました。しかし、兄の歯科医院が忙しく、やはり兄弟愛でしょうか(笑)、兄の手伝いをするのは当然だと思ったので迷いはなかったです。そうは言っても、初めは足手まといだったと思いますよ。

■身内であるお兄様と働いたことで、どういうことが印象に残っていますか。

色々なことを経験させてもらいましたし、兄の勧めで阿部晴彦先生や岡本浩先生に師事し、総義歯や歯周病のコースで学ぶ機会も得られ、恵まれた勤務医時代を過ごしたと思っています。ただ、本当に兄の偉大さが分かったのは自分が開業してからでした。勤務医であれば診療のことだけを考えていればいいのですが、兄は私の診療のリカバリーや人事のこと、経営のこと、クレーム処理など、自分の診療以外の多くの業務をこなしていたことが分かったときに、本当の意味で感謝しました。

■開業しようと決断されたいきさつはどういうことだったのでしょうか。

「歯科医師は開業してこそ本領が発揮できる」と考えていましたから、卒後3年で開業と目標を決めていました。実際に、卒後2年目での開業は当時としても早い方なのですが、ご縁があって、すぐに場所も見つかり、兄も「1年後に開業しても何も変わらない」と後押ししてくれました。阿部先生や岡本先生のコースにも入り、人の倍は学んでいるという自負もありましたし、咬合理論、歯周病、外科の三本柱さえしっかり習得していれば開業は可能だと信じ込んでいましたので、経営のことは全く頭になく行動に移しました。今にして思えば、若さの一言ですね。

■最初に開業された内山歯科診療所の場所はどちらだったのでしょうか。

現在の場所と新所沢駅を挟んで反対側です。ビルのテナントとして入居したのですが、14坪しかなく、狭かったですね。ユニットを2台置いて、ぎりぎりのスペースでした。そこで8年、患者数も増え、これからは予防の時代になるという確信のもとに方向性を考えていましたが、カウンセリングのスペースも取れなかったので、徐々に移転を考えるようになりました。

■そして、2004年に現在の場所に新築移転をなさったのですね。

医療法人社団 榮内會 スマイルデンタルクリニックそうです。広めの場所を探し続けた結果、新所沢駅から徒歩3分ほどの場所で、旧クリニックからも直線距離で1.5キロぐらいしか離れていないこの場所が見つかりました。資金などの都合で着工までには時間がかかり、その間、近隣に何軒もの歯科医院ができてしまいましたが、スマイルデンタルクリニックにしか提供できないものがあると信じていましたので、気にはなりませんでした。通常、線路を越えて患者さんは通院しないと言いますが、半分以上の患者さんが新しいクリニックに来院してくださり、嬉しかったですね。この場所で予防歯科とインプラント治療を本格的にスタートさせました。

■移転にあたって、立地調査やマーケティングなどはなさいましたか。

立地調査やマーケティングなどは全くしていません。ただ、2、3年いらしていなかった患者さんには移転をお知らせするハガキを出しました。それからチラシを作り、折り込み広告を行いました。移転に関しては、患者さんの間に口コミで広がったようで有り難かったですね。新所沢駅周辺は歯科医院の激戦区なのですが、きちんとした医療を行っていれば評価されるのだと思っていましたから。

■設計のこだわりについても、お聞かせください。

医療法人社団 榮内會 スマイルデンタルクリニックもともと設計士になりたかったこともあって、全て自分で設計しました。一番奥が手術室になっていて、受付を挟んで、左右にキュアのための場所とケアのための場所を分けたのが特徴です。オーラルケアのための場所として、歯科衛生士専用のノードリルルームもあります。アメリカやヨーロッパでは歯科衛生士のステータスが高く、当院でもノードリルルームを設けることで、ケアの重要性を打ち出しています。しかし、所詮は素人の設計ですので、使いにくいですね(笑)。次回の新築ではきちんとプロにお願いすることにしています。

■ITの活用についてはいかがでしょう。

サイトを作ったのは2005年ですから遅めですね。口臭専門治療を行っている大阪のほんだ歯科の本田俊一院長に勧められて作りました。最初はSEO対策という言葉も知らなかったのですよ(笑)。しかし、「デンターネット 街の歯医者さん」の「埼玉県所沢市 歯医者口コミランキング」で5位に入り、その後、4位に選んでいただいていることもあって、インターネットからの患者さんは少なくありません。

■現在の来院患者数をお聞かせください。

1日約50人です。常勤歯科医師は私を含めた2人体制です。最初はずっと私だけでやってきましたが、限界もありますし、教育にも力を入れたくなったので、若手の歯科医師に来てもらっています。

1997年頃、「学位を取らないか」というお誘いをいただいたのです。親しい先輩も昭和大学で学位を取っていらっしゃったので、私も昭和大学に惹かれました。昭和大学は医学部、歯学部、薬学部が揃った医系総合大学なので、その恵まれた環境を活かし、医学部で薬理学を学ぶことにしました。高脂血症についての論文で医学博士を取得しました。歯科とは全く異なる分野で中身の濃い研究ができたことはプラスになりましたし、研究内容は今でも役に立っています。

【経営理念】

医療法人社団 榮内會 スマイルデンタルクリニック診療の中味の濃さが大切であり、経営にばかり走っても仕方がありませんので、私としては「生涯歯科医師」を貫きたいと思っています。しかし、経営をきちんとしていないと、患者さんのためにCTを導入したくても導入できない事態に陥ってしまいますので、患者さんのためにも、時代の流れに乗るためにもある程度の経営は必要でしょう。先日、遅ればせながら『マーフィーの法則』を読み、経営哲学について考えさせられました。歯科診療だけでなく、外に出るなどして様々な刺激を受け、吸収できるものはしていきたいですね。歯科医師が歯科医院で待っているだけで患者さんがいらしてくださる時代は終わり、患者さんが歯科医院を選ぶ時代になっています。効果的な宣伝を行い、優れた人材を教育しながら、この新しい時代をキャッチアップする努力を続けたいです。

【診療方針】

全ては患者さんのために」の精神のもと、情熱を持って、諦めないことです。そして、勉強を欠かさない姿勢を貫いています。

医療法人社団 榮内會 スマイルデンタルクリニック私はUSC南カリフォルニア大学歯学部の客員研究員でもあり、インプラントの勉強を続けています。もともと外科的なことが好きだということもあって、インプラントに興味を持ったのですが、昔のインプラントは本当に患者さんのためのインプラントであるのか、疑問に思わざるをえないようなことがありました。しかし、徐々に改良が進み、理論が確立してきましたので、20年前とは大きく異なっています。今のインプラントであれば、患者さんに自信を持って還元できますね。当院では、「今、残っている歯を今後も残していくためのインプラント」がメインです。件数は年間100本ほどで、込み入った手術の場合は休みの日にも行っています。

■訪問歯科診療もなさっていますね。

インプラントに力を入れるようになって、高齢社会の到来を実感しました。そこで現在地への移転をきっかけに地域医療にさらに密着したいと思い、訪問歯科診療を始めたのです。現在のところ、施設と数軒の居宅が対象です。

■口臭専門治療についても、お聞かせください。

鹿児島で開業している親戚の歯科医師が「予約が1年前に電話で埋まっていく歯科医院がある」と教えてくれたのが大阪で口臭専門治療を行っていらっしゃる本田俊一先生でした。そこで、ほんだ歯科に見学に伺い、研修も受けたのです。口臭は「臭いがなくても臭いがある」というような総合的なものですが、ほんだ歯科で深く学べました。その結果、2期生として早い時期に、ほんだ歯科提携クリニックの認証を受けました。

■現在、保険、自費の割合はいかがでしょうか。

3対7といったところでしょうか。将来的にはバランスの取れた割合にしたいと思っています。そのためには歯科医師を5、6人体制にする必要があります。CRが得意、エンドが好きなど、任せられるところを若手医師に積極的に任せて、適切な分業体制を構築したいと考えています

【増患対策】

近いうちにサイトをリニューアルします。ほかは特別な増患対策をしているわけではありません。しかし、患者さんはいらしてくださっていますし、「浮気」をされても戻ってこられる患者さんも少なくありません。「浮気してすみませんでした」と謝られる患者さんもいらっしゃいますよ(笑)。当院は混んでいますし、お待たせすることもありますので、「浮気」したくなる気持ちも分かります。予約日がかなり先になってしまうのは今も検討課題です。今後も吸収したいこともたくさんありますし、チャレンジもしたい。まだまだ私自身進化しつづけていきたいです。そしてその全てが患者さんに還元できるものと思っています。

【スタッフ教育】

医療法人社団 榮内會 スマイルデンタルクリニック私たちが歯学生の頃は学生時代から患者さんに触れる機会が多く、卒業直後でも既にできている部分がありました。しかし、現在の歯学教育では患者さんを診る機会がほとんどなく、国家試験対策に追われているようです。卒後研修でも見学のみに終始するケースもあり、歯科医師としてのスタートが非常に遅くなっています。そういった現状を踏まえ、私も優れた歯科医師を育てる教育を行いたいとの思いから指導医資格を取得し、厚生労働省臨床教育研修施設として申請中です。今後はシステマティックな教育施設を作り、1年間で基本治療が理解できる歯科医師を育てたいですね。
歯科衛生士は3人在籍していますが、1人は産休を取得しています。スタッフが長く働いてくれる職場を目指していたので、産休後に戻りたいと希望してくれたときは嬉しかったですね。アメリカやヨーロッパのように歯科衛生士のステータスを高める意味でも勉強は必要です。私が行ってほしいと思った勉強会に参加する場合は全額、医療法人社団 榮内會 スマイルデンタルクリニック歯科衛生士が行きたいと言ってきた勉強会に参加する場合は半額の補助をしています。半額の理由はいわゆる「身銭を切る」ことで学ぶ意義を感じてほしいと願っているからです。今度、ロサンゼルスでの勉強会に歯科衛生士を連れて行きます。海外の大学や施設を見ることで、夢を持って働いてもらえればと願っています。

【今後の展開】

医療法人社団 榮内會 スマイルデンタルクリニック現在の場所は49坪なのですが、隣地を50坪ほど買い求めました。そこで、裏に増築し既存の建物の内装を全面リニューアルします。現在の場所に移転してきたときに「もう最後だ」と思いましたが、歯車が狂いましたね(笑)。一度きりの人生ですし、チャンスを活かしていきたいです。外観はガラス張りにし、モダンなイメージの歯科医院に生まれ変わります。チェアを5台から8台に増設し、手術室も拡張します。現在は平面図が完成し、申請を行っているところです。7月頃に着工し、年の暮れには完成の予定です。
また、広域法人も取得したいと考えています。将来的には矯正歯科医師とも組み、私はインプラントに傾注し、それぞれが得意なことを活かした総合クリニックを作りたいですね。間口の広い医療機関であれば患者さんも来やすいですし、経営のための診療ではなく真の地域医療ができると信じています。
クリニック拡張に伴い、スタッフの募集を始めましたので、良い人材に集まってほしいですね。一緒に夢や目的を共有できる、チーム医療の構築もしっかり固めていきます。

【開業に向けてのアドバイス】

「全ては患者さんのために」ということに始まり、それに尽きるのではないでしょうか。自分がしてほしくない治療をしないというのはもちろんですが、器具の滅菌、材料の選択、院内の掃除といった一つ一つのことであっても、患者さんのためにどうすべきか考えてみてほしいです。

【プライベート】

趣味は旅行です。最近はフランスに行きました。もっとも、主な目的は勉強です(笑)。年間1000本ものインプラントを手がけていらっしゃるカヤト先生の歯科医院がパリにあり、そちらでインプラントの勉強をしてきました。

【タイムスケジュール】