歯科経営者に聴く ~第一線で活躍する院長から学ぶ~

医療法人社団 永孝会 ゆめシティオレンジ歯科 八丁裕次理事長

医療法人社団 永孝会 ゆめシティオレンジ歯科

山口県下関市は本州の最西端に位置し、関門海峡を挟んで、西を日本海、南を瀬戸内海に接している。県庁所在地の山口市を凌ぐ、約29万人の人口を有し、山口県一の規模を誇る、山口県を代表する都市である。
ゆめシティオレンジ歯科は下関市の中心部にあるショッピングモール内に入居する歯科医院で、年中無休、朝9時30分から夜9時までの診療を行っている。このほど、下関市内に分院も展開するなど、目覚ましい成長を遂げている歯科医院である。
今月はゆめシティオレンジ歯科の八丁裕次理事長にお話を伺った。

医療法人社団 永孝会 ゆめシティオレンジ歯科 八丁 裕次 理事長

医療法人社団 永孝会 ゆめシティオレンジ歯科 八丁裕次理事長

プロフィール

  • 1977年 山口県 生まれ
  • 2002年 松本歯科大学 卒業
  • 2002年 松本歯科大学病院 勤務
  • 2005年 医療法人社団 親和会 勤務
  • 2008年 医療法人社団 和晃会 勤務
  • 2009年 ゆめシティオレンジ歯科 開設
  • 【学会 他】
  • 日本禁煙科学会 認定医
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開業に至るまで

■歯科医師を目指されたきっかけをお願いします。

高校3年生までは実家の家業を手伝うつもりで、特に目的もなく過ごしていました。ところが、急遽、関東で仕事をしていた兄が地元に戻って家業を継ぐことが決まり、進路を考え直すことになったのです。でも、ネクタイを締めての宮勤めが嫌でしたし、両親や担任の先生が「手に職を持て」と勧めてくれたこともあり、高校3年生の夏に歯科へ進むという進路が決まりました。

■大学、大学院時代のエピソードをお聞かせください。

医療法人社団 永孝会 ゆめシティオレンジ歯科大学時代は特に目立って悪さもすることもなかったですね(笑)。成績も上の下ぐらいでした。ただ、やたらと私の部屋で友人との飲み会がありました。気がつくと知らない同級生が来ていたり、私が皆の料理の準備をしたり、段取りしたりの毎日で、もともと人見知りで内向的な性格でしたが、すっかり人見知りがなくなり、以前に比べて社交的になったかと思います。大学院時代は口腔外科の医局の仕事と並行して研究を行っていました。基本的に休みがなかったので、休みなしで働く忍耐力は鍛えられました。

■勤務先を選ばれた理由や勤務先で学んだことについて、お話しくださいますか。

大学病院を出て、初めは神奈川県の親和会の吉野理事長にお世話になりました。インターネットでの求人検索がきっかけですが、親和会を選んだ理由は長野から見学に行くことができる距離であること、流行っていること、東京に近いことです。親和会で学んだことは臨床一般のことから訪問診療まで多岐に渡りましたが、中でも「医療はサービス業である」ということを実感しました。行き帰りに2時間半かけて、移動距離が100kmというときもありましたが、それも苦痛にならないほど多くのことを経験させていただいた歯科医院でした。そして、親和会で学んだことを実践し、自分なりに発展させていこうと思っていた矢先に、埼玉の同級生から誘いを受けて、和晃会の大山理事長にもお世話になりました。痛くない麻酔やガムピーリング、3DSなど、かなりのわがままを聞いていただいて、自由度の高い診療をさせていただきました。和晃会での勤務で現在の当院の診療スタイルを確立しましたね。

■開業しようと決断されたいきさつはどういうことだったのでしょうか。

埼玉から西日本へ戻ろうと考え、インターネットで求人を探していた際に、実家がある山口県下関市に大型ショッピングモールができる計画があることを知りました。天啓も感じましたし、やや勢いもありまして、開業を決意しました。ほかに理由は色々とありますが、一番は結婚していないことでしたね。無理が利きますし、開業準備や歯科医院のことだけに専念できるからです。死ぬ気で1年頑張れば、どうにかなるだろうと思いました。

■突然の開業転向に躊躇はありませんでしたか。

驚くことに、それが少しもありませんでした。あまりにもドンドン推し進めていくので、逆に周りが心配していたくらいです。5月末に物件を見つけ、契約したのは6月半ばで、12月1日には開業しました。埼玉から山口まで、約半年間で50往復はしましたね。やるからには失敗するわけにはいかないですし、死ぬ気で取り組みました。

■ショッピングモールでの開業を希望されたとき、ほかの歯科医院とのバッティングはなかったのでしょうか。

医療法人社団 永孝会 ゆめシティオレンジ歯科関東や関西、九州などの大きな都市と異なり、こちらの方ではショッピングモール内に入っている歯科医院はほとんどありません。したがって、歯科医院で手を挙げたのは当院だけでした。「ショッピングモール内にある歯科医院」という存在は山口県内ではインパクトがあると思いましたね。

■開業にあたってのコンセプトやこだわりなどをお聞かせください。

院内は、責任者である院長がどこにいても、患者様やスタッフの流れや動きが分かるような配置にしました。また、各ユニットの空間を広めに使い、お子さん連れの方も目の届く範囲で遊びながら待つお子さんを確認することができ、親御さんとお子さんがお互いに安心して診療が受けられるように設計しました。
医療法人社団 永孝会 ゆめシティオレンジ歯科 そして、患者様が驚くようなことを仕掛けようと思っていました。今も、患者様がいらっしゃるたびに何かに驚いてくださるような歯科医院を目指しています。「その歯科医院じゃないといけない」という理由がないと、数多くの歯科医院の中で埋もれてしまうからです。 一方、分院は「星の王子様」をマスコットキャラクターに採用し、院内の壁にイラストを貼ったり、待合室には絵本やぬいぐるみを置いたり、駐車スペースの壁一面にイラストを並べて、星の王子様がお迎えしているという雰囲気で作りました。

■本院も分院も、広いキッズスペースがあるのが印象的です。

キッズルームは、お子さんはもちろんですが、お子さん連れの親御さんに来ていただきやすい歯科医院にするために取り入れたものです。
医療法人社団 永孝会 ゆめシティオレンジ歯科勤務医時代に、女性の患者様から「出産後、子どもの手が離れるまで、歯が痛くても歯科医院に行けなかった」という話を聞いたことがありました。出産後に歯がボロボロになった方の治療をしたこともありましたので、そうならないように早い段階で治療に来ていただくためには乳幼児も一緒に連れてこられる歯科医院でないといけません。そのため、当院ではベビーベッドのほか、多くのぬいぐるみなど、子どもさんが遊ぶためのおもちゃを用意しています。

【経営理念】

■経営理念をお聞かせください。

創意工夫を常に忘れず、完成したと思わないで努力し続ける」ことと「ありません、分かりません、できません」は厳禁だということですね。

■診療方針をお聞かせください。

医療法人社団 永孝会 ゆめシティオレンジ歯科「患者様を家族と思い、患者様の身になって治療を考える」、「ありとあらゆることを想定して、徹底した治療説明を行う」ことを基本方針として、創意工夫を加えながら様々な治療法を行っています。より効率的で、患者様のチェアタイムを短くさせ、治療のクオリティを向上させるものがあれば無節操に吸収するようにしています。治療法、接遇、医院運営など、様々なところでスタッフ一同の意見を反映させていく方針です。まだ歯科医院の何もかもが若いだけに、良い変化が期待できそうであれば、積極的に行っていきたいと思っています。スタッフ一丸となって、日々の治療に邁進しています。

【増患対策】

■どういう増患対策をしていらっしゃいますか。

患者様に選んでいただけるように、他院との差別化を図っています。できるだけ痛みのない治療をするために、痛くない麻酔の研究をしたり、インプラント用に使われるピエゾサージェリーを小さなカリエスの治療に用いたりしています。怖がって騒いでしまうお子さんの治療や嘔吐反射の強い方でも、怪我をさせてしまうことがなく、お互いに安心して取り組めますし、削る音が苦手な方にも音が気にならないと好評です。何よりも、患者様のためにスタッフ全員で協力して取り組んでいたら、その気持ちが自然と患者様にも伝わっているのか、有り難いことに増患し、現在、2院で1日来院患者数が100人以上となっています。

【スタッフ教育】

■スタッフ教育についてはいかがでしょう。

「患者様に迷惑をかけない」こと、「感謝の気持ちを忘れない」ということはスタッフが共通して心掛けてもらうように伝えています。歯科医師には一般診療から口腔外科に至るまで、日々の診療の中でアドバイスをしています。セミナーなどについては歯科医院から半額の補助をお出しするようにしています。要望があれば、院内での講習会やセミナーを独自に開催もします。衛生士や助手に関しても、可能な範囲をそれぞれに設けています。
歯科医師、衛生士、助手など、それぞれの職種が独立し、プロ意識を持って取り組んでもらうことでクオリティの高い診療が行えると思っています。その上で、やりたいことや学びたいことなど言ってもらえれば、積極的に取り入れてスキルアップできる環境づくりを整えていくつもりです。

助手も、保険一般への知識が高く、経営についても興味があって、やる気のある方であれば、私と一緒に歯科医院の経営を考えてもらう「クリニックマネージャー」という立場へと雇用形態を改めることも検討中です。給与はもちろん上がります。ずっと同じ待遇のままではなくやる気と努力でステップアップできる職場が理想です。

【今後の展開】

■今後の展開について、お聞かせください。

現在、分院を作って間もないため、分院を軌道に乗せることが最重要です。
この十年は後ろを振り向かずにドンドンと攻める経営で行きたいと思います。そして、45歳になったらリタイアします。ラーメンが大好きなので、ラーメン屋を開くのが夢です。

【開業に向けてのアドバイス】

■開業に向けてのアドバイスをお願いします。

医療圏調査を頼らないこと、他院とのニッチ的な差別化を最低でも3項目以上は行うこと、患者様へのサプライズを考えること、初期投資を抑えることですね。
医療圏については、患者様のニーズがあれば遠方でも来てくださいます。地方だと、ほとんどの場合は車移動ですので、10km圏内ぐらいなら足を運んでくださいます。
サプライズは、設備、治療法、接遇など、どんなことでもいいです。初期投資を抑えることに関しては、私は設計図や事業計画書、そのほかの事務手続きや建設会社との交渉など、できることは全部、自分で行いました。歯科医院のマスコットキャラクターも自分でブラッシュアップして作るなど、コストをかなり抑えることができたと思います。
歯科医院設計から治療用のピンセットに至るまで、自分で全て決定するつもりで歯科医院開業を考えてください。業者さんに頼りすぎると、折角の開業の夢や意欲がぼやけてしまいます。

【プライベート】

診療後はバーでお酒を飲んだり、家で猫と遊んでいます。お婿に行けるように頑張らないといけないとは思っています(笑)。

【タイムスケジュール】

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