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特集 船越 栄次先生

再生医療の現状と近未来の歯周治療の方向性について、お聞かせください。

再生医療の現状と近未来の歯周治療の方向性について、お聞かせください。

我々は臨床医であって、研究者ではないので、最新の研究をしているわけではありません。幹細胞を使った治療は研究者の分野ですので、臨床医としては当然、現状で最新の歯科再生医療は何か、どのような治療法なのかを学び、実際の診療に取り入れていかなければなりません。しかし、最新の治療法があると言っても、使用する材料が日本で認可されていないものに対しては直ぐに飛びつくことはできません。最近の歯科再生医療はグロスファクター(成長因子)を使ったものが増えてきていますので、今後は成長因子や幹細胞を使った新しい治療法が主になってくるだろうと思います。最近のアメリカで一番新しいものとしてはJEM21(成長因子増強気質)が挙げられます。臨床の場で骨や組織をより迅速に予測可能な形で再生できる、再生医療の最先端を行くものと言われていますが、私はもう少し吟味する必要があると考えています。なぜなら、私が使用しているエムドゲインの方がより再生能力が高く、有効だと思われるからです。歯の周りの組織を作るには3つのグロスファクターが必要です。1つはセメント質を作る細胞、2つ目は歯根膜を作る細胞、3つ目に骨を作る細胞です。

エムドゲインは90年代にスウェーデンで考えられた、成長因子が豊富な6カ月の豚の歯胚を主成分とした歯周組織再生誘導材料です。グロスファクターの中には骨を作る骨形成タンパク質(Bone Morphogenetic Protein, BMP)、皮膚を作る上皮成長因子(Epidermal growth factor:EGF)、繊維を作る塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor:bFGFまたはFGF2)がありますが、JEM21は1つのものしかできません。再生医療の分野もエムドゲインの前は機械的な再生医療で、細胞遮断膜を使って細胞が入ってこないようにする方法が主流でしたが、細胞遮断膜自体は全く再生を促す要素がないのです。このように、歯科治療は様々に進化していますね。

これからの日本における歯科治療について、見通しをお聞かせください。

これからの日本における歯科治療について、見通しをお聞かせください。

給料が高いところばかりを望んでいても、必ずしも良いことはありません。雇う方も給料が高ければ高度なことを求めますし、それに対応できるスキルがあるかという、雇う側と雇われる側との間の問題になりますよね。当院は1年目は初任給10万円で、2年目は20万円、3年目は22.5万円、その後は25,000円ずつ増えていくといったシステムです。決して高くはありませんが、それでも10年以上勤務している歯科医師も数名います。

私は入職希望者との面接で、何を求めて当院に来られるのか、勉強したいのか、給料がほしいのかなどを伺っています。給料であれば、「給料面では魅力がないので、他院をお薦めします」とはっきりとお伝えしています。ただし、当院で技術を学べば、開業後にはほかの先生方より良い技術を持っていることになるし、歯科医師としての勝負に負けないように必ず育てていきます。そのためにしっかりと教育していきますし、フォローしていきます。技術を学びたいと強い気持ちを持っている方であれば雇うけれども、気持ちがなかったら、ほかの歯科医院に行った方が良いと言いますね。その方針は今後も変わることはないでしょう。